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394 魔力が入ってるとそのまんまポーションが作れるんだって


「ルディーン君たちが持ち帰ってと言うと、この間村でお土産にもらったあのベニオウの実だな。それが誠にポーションとなるのか?」


「うむ。まだ確証は得られておらぬが、その可能性は高いとわしもギルマスも思っておるのじゃよ」


 ロルフさんはね、ベニオウの実を使えばきっとお肌つるつるポーションを作れるよって言うんだ。


 だったらさ、ベニオウの実はあれと同じようなものなのかなぁ?


 そう思った僕は、ロルフさんに聞いてみる事にしたんだ。


「ねぇ、ロルフさん」


「何じゃ、ルディーン君」


「じゃあさ、ベニオウの実とセリアナの実はおんなじなの?」


 僕が作ったお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションは、セリアナの実って言うのの果肉から採れる油を使って作るんだよね。


 ベニオウの実の皮からも同じようにお肌のポーションが作れるって事は、それはどっちもおんなじなんだろうなぁって思った僕はそう聞いてみたんだけど……。


「それは中に含まれる薬効がという事かな? ふむ、同じものか同じものではないかと問われると、ここはやはり同じではないと答えるべきかな」


「え~、違うもんなの? じゃあ何で、ベニオウの実からお肌つるつるポーションが作れるのさ」


 ベニオウの実でもお肌つるつるポーションが作れるって事は、おんなじのが入ってるって事だよね?


 なのにロルフさんは違うって言うんだもん。


 だから僕、何でって聞いたんだよ?


 でもね、そしたらその答えはロルフさんじゃなく、横に居たバーリマンさんが教えてくれたんだ。


「あのね、ルディーン君。君はセリアナの実の油から肌用のポーションを作る事ができるでしょ?」


「うん! だから僕、ベニオウの実の皮もおんなじだって思ったんだよ」


「ええ、そうね。もしベニオウの実も皮だけで同じように肌用ポーションを作り出せるとしたら、セリアナの実と同じという事になるでしょう」


「って事は、作れないの?」


 あれ? でもさっき、ロルフさんは作れるって言ったよね?


 それにバーリマンさんもおんなじ意見だって言ってたと思うんだけど……。


 言ってる事が全然違うもんだから、僕はよく解んなくって頭をこてんって倒したんだよ?


 そしたらそれを見たバーリマンさんは、にこにこ笑いながらその理由を教えてくれたんだ。


「ええ、ベニオウの皮単体から肌用ポーションを作り出す事はできそうにないわ。だって必要な薬効が揃っていないのですもの。でもね、その素材の一つとしては使えそうなのよ」


「素材の一部?」


「そう。君は肌用のポーションはセリアナの実単体から作ったけど、髪の毛用のポーションはそれに卵とはちみつを加えてるでしょ? それと同じで、ポーションの多くは複数の薬草の薬効を組み合わせて作っているの」


 そう言えば、前にロルフさんも上級のポーションとかはいろんな薬草を使って作るって教えてくれたっけ。


 って事は、ロルフさんの言ってたお肌つるつるポーションを作れるってのは、他の薬草と合わせて作るって事なんだね。


 それが解った僕は、何でなのかが解ってすっきりしたんだよ。


 でもさ、僕とバーリマンさんのお話を隣で聞いてたお爺さん司祭様はちょっと違ったみたいなんだ。


「ギルドマスターよ。先ほどの話からするとベニオウの実の皮をポーションの素材として使うとの事だが、それはちとおかしいのではないかな?」


「おかしいと申しますと?」


「うむ。前にここに来た時、そなた達は肌用ポーションに必要なすべての薬効に魔力を注ぐことができぬから、このポーションはルディーン君にしか作れぬと言っておったではないか。ではそのベニオウの皮を使ったとしても、薬効に魔力が注げないのは同じであろう?」


 あっ、そっか! ロルフさんたちは前に、鑑定解析が使えないから全部の薬効を指定する事ができないって言ってたっけ。


 って事はお爺さん司祭様の言う通り、ベニオウの実の皮を他の薬草と一緒に使ったって作れないのはおんなじはずなんだよね。


「ええ、確かにベニオウの実が私たちがいつも使っている薬草と同じならばそうでしょうね」


「ではギルドマスターは、ベニオウと他の薬草とは決定的に違う点があると言うのだな?」


「はい。これはルディーン君が私たちに教えてくれたことなのですけれど、ベニオウの実の皮には多くの魔力が含まれているのです」


 普通の薬草は、ポーションにする時に魔力を注がないとダメでしょ?


 でもね、強い魔力溜まりがあるとこの近くには、たまにそのまんまでもポーションにできるくらい魔力が入ってる薬草が生える事があるんだって。


 そしてこのベニオウの実も皮んとこにいっぱい魔力が入ってるから、もしかするとおんなじようにそのまんまポーションにできるかもしれないんだよってバーリマンさんは言うんだ。


「なるほど。ではその皮を使う事で、注ぐことができない分の薬効を補うと言うのだな」


「はい。そしてそれが成功すれば肌用ポーションを作りだす事ができると、私たちは考えているのです」


 そっか。


 ロルフさんたちがいっぱいある薬効全部に魔力を注げなくっても、注げない分の代わりに魔力がはじめっから入ってるのを使ってお肌つるつるポーションが作れるんだったらそれでいいもんね。


 そう思った僕はうんうんって頷いてたんだけど……。


「あれ?」


「どうしたの? ルディーン君」


「ねぇ、バーリマンさん。ベニオウの実の皮があれば、お肌つるつるポーションが作れるんだよね? だったらなんで作んないの?」


 作れるって解ってるなら作っちゃえばいいでしょ?


 なのにバーリマンさんたちは、何でか知らないけど作れるはずだって言うだけで作ってないんだもん。


 だから僕、何でかなぁ? って思ったんだよね。


 でもその理由は、思ったより簡単だったんだ。


「それがね、もう残ってないのよ。ベニオウの実が」


「そっか、あんなにおいしいんだもん。あったらすぐに全部食べちゃうよね」


 ロルフさんやバーリマンさんにあげたベニオウの実、そんなにいっぱいあった訳じゃないもん。


 それに普通に売ってるのよりずっとおいしいんだから、そんなのがいつまでも残ってるはずないよね。


「ええ。だからもしかするとベニオウの皮がポーションに使えるかも? って気づいた時にはもう遅かったわ」


「僕たちが持ってきたのって、他のと違って皮も食べちゃうもんね」


 これが森の外っ側で採れる奴だったら皮をむくから残ってたかもしれないけど、森の奥のは皮も一緒に食べた方がおいしいから全部一緒に食べちゃうでしょ?


 バーリマンさん、後からそれに気がついてがっかりしたんだってさ。


 だから僕、もうちょっと早く気がつけばよかったのにねってバーリマンさんとお話してたんだけど、


「ぬ? 今の話からすると、皮がポーションになると気が付いたのは、もう食べてしまった後だと言うのか?」


 そしたらお爺さん司祭様がこんな風に聞いてきたんだ。


 でもさ、バーリマンさんはさっきそう言ったよね?


 だからそうだよって答えたんだけど、そしたらお爺さん司祭様がそれはおかしいよって。


「もうすでに皮が無いのならば、どうしてそれがポーションの素材になると解ったのだ? 普通のベニオウの実の皮でも入っている薬効は同じかもしれぬが、その必要なものすべてに魔力が注がれておるかどうかは解らぬのだろう?」


 そう言えばもう皮が残ってないんだったら、僕たちが持ってきたベニオウの実の皮が使えるかどうかなんて解んないよね?


 なのに何でロルフさんもバーリマンさんも、あの皮を使えば作れるはずだって言うんだろう?


 そう思った僕は、頭をこてんって倒しながらお爺さん司祭様と一緒にバーリマンさんの顔を見たんだよね。


「ええ。もしそこで話が終わっていたら、わざわざ使いを出してまで司祭様やルディーン君に来て頂くような事にはならなかったと思いますわ」


「では他に何か、肌用のポーションを作れるという確信を持つことができる要素があったと言うのだな?」


「はい。先ほど話した気付きの段階では、あくまでベニオウの実がもしかすると何かのポーションになったかもしれないと言うだけですもの」


「確かにな。して、その確信を持てた理由と言うのは?」


 お爺さん司祭様がそう聞くとバーリマンさんは、


「それはルディーン君から貰ったもう一つのものを調べた結果、その可能性が高いと解ったからですわ」


 そう言いながら、僕の方を見てにっこり笑ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 今回出てきた魔力を含んだ薬草ですが、実を言うとルディーン君たちの住んでいるグランリルの村の近くにある森の中に生えているものの中にも何種類かあったりします。


 ただグランリルの人たちって魔法が使えないから(ルディーン君たちを除く)、それを使っても他の薬草に比べてよく効くなぁ位にしか思ってないんですよね。


 実際、この情報は錬金術師や神殿以外ではあまり知られておらず、魔力を使わずに薬を作る薬師でさえほとんどの人が知らない話だったりします。


 まぁ知っていたとしても錬金術の解析が使えないと目の前の薬草に魔力は含まれているかどうか解らないので、知っていても意味は無いんですけどね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 素材の話が複雑なのは異世界らしくていいですね。 ゲームだと素材A素材Bまぜました~くらいでおわってしまいますからね。 食べた後で気が付いてしまうのも仕方ないですね! あんなにおいしい始めて…
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