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37 冒険者登録、できたぁ!


「ところでルルモアさん、ルディーンの結果はどうだったんだ?」


「Fランク冒険者の資格? もちろん合格よ。と言うより、むしろ此方から登録をお願いしたいくらいかな? 帝国全体を見渡しても魔法を使える冒険者は数えるほどしか居ない上に、こんな辺境の都市であるイーノックカウに到っては一人も居ない状態だから、魔族とまでは言わないけどもし属性に特化した魔物が現れでもしたらと思うと対抗手段が何も無い今の状況は不安でしかないもの。ルディーン君の加盟は大歓迎だわ」


 どうやら僕の冒険者登録は何の問題も無く認められるみたいで一安心。


 ただルルモアさんが言った言葉にお父さんは何か引っかかったのか、お父さんは苦笑いを浮かべた。


「おいおい、ルディーンはここに住むわけじゃないぞ」


「解ってるわ。でも、比較的近くの村に魔法を使える冒険者が居るのと、このイーノックカウまで来るのに十数日もかかる程離れた場所に居るのとではまるで違うでしょ?」


 僕はグランリルの村を出る気はないけど、村からでもこのイーノックカウまでなら荷物を満載した馬車を使って休みを入れながらでも6時間ちょっとで来る事が出来るし、早馬を飛ばせば3時間もあればたどり着けると思う。


 それなら何か問題が起こった時に対処できないほど時間が掛かるわけじゃないから、今の状況よりは安心できるって言うのも解るよね。


「それに冒険者ではないけど色々な職についている魔法使いは居るし、彼らだって攻撃は無理でも2~3日なら足止めくらいはできるでしょ? そう考えると、やっぱり近くの村に戦える魔法使いが居るってのは安心感が違うのよね」


「確かに攻撃魔法は覚えても戦いしか使えないけど、障壁の魔法は工事中の事故が起きた時にも使えるから、結構覚えてるらしいからなぁ」


 障壁って事はプロテクト・シールドの事かな? あれは魔法使いなら1レベルから使える魔法だから確かに誰でも覚えられるけど、物理攻撃防御専用だよ? でも属性系って事は魔法だからマジック・プロテクションを使わないといけないんだけどなぁ。


 これも1レベルで覚えられる魔法だけど、工事中の事故では使う事はないから使える人ってそんなに多くないんじゃないかな?


「まぁ、私がこの街に来てから一度もそんな魔物が出た事がないからそれ程心配する必要はないと思うけど、この頃近くの森の魔力溜まりが変化してきてるらしいからちょっと心配なのよね」


「へんか?」


 魔力溜りが変化してるってどういう事だろう? そう思った僕は、そう言いながらお父さんの顔を見たんだ。


「ルディーンはいろいろ知ってるのに、魔力溜まりの事は何も知らないんだなぁ」


 するとお父さんはそう言いながら、魔力溜まりについて詳しく教えてくれたんだ。


 それによると、魔力溜まりから出ている魔力って大きく別けて巨大化、骨強化、状態異常、属性の4つの性質が混ざり合っているんだって。


 普通はその4つの内のどれか1つから2つの性質が強く出ていて、それによって動物から変質する時にどんな魔物に変わるのか決まってるんだってさ。


「グランリルの森の場合は骨が一番強くて、続いて巨大化だな。ルディーンが知っている魔物で言うと一角ウサギは骨の影響が一番大きく出ていて、ブラウンボアは巨大化がメインで少しだけ属性の魔力の影響を受けてるんだ。因みにこのイーノックカウ近くの森で一番強い性質は巨大化だったかな? ただそれが変化を始めているって事は、近い内に今まで見かけなかった魔物が出てくる可能性があるって事だ」


「そっか、だからぞくせいのまものがでてくるかもってしんぱいしてるんだね」


「そういう事。だからルディーン君、君には私の他にもう1人、会って欲しい人が居るのよ」


 えっ? 属性系の魔物が出るようになるかもしれないから僕に会いたい人が居るってそれ、どういう事?


 突然の展開に僕の頭の上にはいっぱいのハテナマークが、くるくるとダンスしてたんだ。


「魔力溜まりの変化が理由で会ってほしい? ルルモアさん、ルディーンを誰に合わせようって言うんですか?」


「あら、ここまで言っても解らないんですか? カールフェルトさん。あなたが登録した時も会った、あの人ですよ」


「俺が? ……ああ、そういう事か。ならルディーンは?」


「ええ、彼はもうジョブ持ちのようですからね。承認してもらわないと」


 ????


 一体何を言ってるんだろう? どうやらお父さんも僕がこれから誰に合うのか解っているみたいで、2人で頷きあいながら納得してるんだけど、僕には何が何やらさっぱり解らないんだ。


 だから、


「も~! いったいなんなの! ぼく、だれにあうの! 2人でわかっても、ぼく、わかんないよ! そんないじわるするなら、ぼく、とうろくしなくていいから、もうかえる!」


 もうみんなどうでもよくなって、癇癪を起してそう叫んだらルルモアさんが大慌てで僕のそばに飛んできたんだ。そしてそんな僕に、彼女は今から会う人のことを教えてくれた。


「わぁ! ごめん、ルディーン君。あなたに会ってほしいのはこのギルドで一番偉い人、ギルドマスターよ」


 なんと! 僕がこれから会う事になるのはとっても偉い人だった。


 でもなんで? なんで僕がそんな人に会わないといけないの? そう思ってお父さんの方を見ると、


「ルディーン。どうやらお前はFランクを飛び越えて、Eランクから始める事が出来るみたいだぞ」


 って、笑いながらそう言ったんだ。


 お父さんが言うには、冒険者ギルドでランクを上げるにはある程度の実績を積まないといけないらしいんだけど、それだと元傭兵とか没落貴族に仕えていた元騎士様のように初めからかなりの実力がある人でも一番下の戦闘可能ランクであるFから始めなくちゃいけなくなるよね。


 でもそんな人たちを低ランクのクエストしか受けられないようにするのは勿体無いって事で、ギルドマスターが認めた場合はランクは一つ上のEから、そして本来Dに上がる為に必要な実績もある程度溜まった状態で始める事ができるらしいんだ。


 で、どうやら僕はその特例に当てはまったみたいで、だからその承認をしてもらうために偉い人に会わないといけないんだってさ。


「実はなルディーン。何を隠そう、お父さんも最初からEランクだったんだぞ、凄いだろ」


「おとうさんも? すごぉ~い!」


 なんとお父さんも最初の登録の時からEランクだったんだって。


 でも本当に凄いなぁ。だって僕と違って魔法が使えるわけじゃないのに普通に剣と弓の腕だけで、それもグランリルの村の常識からすると10歳でEランクになれる実力があったって事だもん。本当に凄いよ。


「解ってくれたかな? それじゃあ私はギルドマスターに面会の要請をしてくるから、少しの間ここで待っててね」


「うん! いってらっしゃい」


 僕は手を振ってルルモアさんを送り出したんだ。



 そして10分後。


「許可が下りたわ。2人とも、私についてきて」


 帰って来たルルモアさんに連れられて僕たちは冒険者ギルド3階にあるギルドマスターの部屋へ。そこで白髪ロンゲのちょっと顔の怖い、髭もじゃのお爺さんに引き合わされた。


 そのお爺さんは僕たちが部屋に入ると立ち上がって、ガッハッハッハと豪快に笑いながら歓迎してくれたんだけど、僕は何よりお爺さんのその大きさに驚かされたんだ。


 だって縦にも横にも、とっても大きかったんだもん。


 この人はお爺さんなのにまるで筋肉の塊みたいな体をしてて、なんでこんな部屋の中で机の前に座って書類仕事してるんだろ? 狩りに出た方が冒険者ギルドの役に立ちそうなのにって思うほど強そうな人だったんだ。


「ねぇおとうさん、このおじいさん、おおきいねぇ」


「馬鹿、ギルドマスターになんて事を!」


「はははっ、いやいや大きいのは本当だから気にせんでもいい。ところでルルモア、この子がルディーン君かな?」


「はい。先ほどご説明した通り魔法系のジョブを習得しているようですので、特例の許可を頂きたく、お連れしました」


 ルルモアさんから説明を受けたお爺さん……じゃなかったギルドマスターは、僕の顔を覗き込む。


 このお爺さん、体だけじゃなくて顔もとっても大きいんだよね、それにとっても怖い顔をしてるから僕、とっても緊張したんだけど。


「なるほど、中々いい雰囲気を持ってるじゃないか。それにナリは小さいが体のバランスもいい。中々鍛えられているようで結構結構。それに魔法まで使えると言うのなら反対する理由も無かろう」


 そう言うとお爺さんは自分の机に戻って目の前の書類になにやらすらすらと文字を書いた後、引き出しから大きなスタンプを取り出してインクをつけた。


 そして。


 ぺったん!


 目の前の紙にそのスタンプを押すと、それを手に取ってルルモアさんに突き出す。


「承認印は押したぞ。後はこの書類を1階の事務に渡して登録したらルディーン君は冒険者の仲間入りだ」


 そしてお爺さんはとっても怖い顔を、満面の笑顔に変えて僕にそう言ったんだ。


「やったぁ! ありがとう、おじいさん」


「ギルドマスターだ、ルディーン」


「あっ、そうだった。ありがとう! ギルドマスター」


「うむ、これから大いに頑張ってくれよ」


 こうして僕は無事、冒険者の一員になれたんだ。



 ■



「ところでカールフェルトさん、Dラン……」


「さぁルディーン、午後からも用事があるし、さっさと昼飯を食べに行くぞ!」


「うん!」


 ハンスは昇進試験を受ける気などまるで無く、ルルモアが試験の事を切り出そうとしたにもかかわらず、それを無視してルディーンと共に冒険者ギルドを後にした。


「はぁ……ギルドマスターからなんとか説得できないかってさっきも言われたけど、取り付く島も無いのよねぇ」


 いつもの事だと初めからあきらめていたルルモアは、そんな2人の後ろ姿を苦笑いしながら見送るのだった。


読んで頂いてありがとうございます。


30話を超えて、皆さんがこの作品をどう考えているのか気になっている今日この頃です。

できたら感想を頂きたいのですが、それが無理なら評価だけでも入れていただけるとありがたいです。

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