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375 ホントに魔石だよ


「うそ! これが魔石だって言うの?」


 僕はびっくりしてるお母さんたちに、これは宝石じゃなくって魔石なんだよって教えてあげたんだ。


 でもね、それを聞いたレーア姉ちゃんは信じられなかったみたい。


「確かに見た目は魔石っぽいけど……だってこれ、すごく透き通ってるし、こうやってかざすと七色に光ってるわよ?」


「ルディーンは嘘ついてないよ! だって私、見てたもん」


 何でかって言うとね、いっつもお姉ちゃんがみてる魔物から取れた無属性の魔石はちょっと濁った白っぽい色してるからなんだ。


 それなのに、この魔石は透明でその上キラキラしてるでしょ?


 だからそう言われても、これが魔石とは思えなかったみたいなんだ。


 でもね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんは、僕は嘘なんかついてないよって怒りだしちゃった。


「見てたって、何を?」


「この魔石をピカピカにしたとこだよ。ルディーンがさっきこの魔石を持って何かの魔法を使ったら、ピカァって光ってあっという間にこうなっちゃったの」


 キャリーナ姉ちゃんはね、大きく身振り手振りしながらお母さんとレーア姉ちゃんにさっき見た事を教えてあげたんだよ。


 そしたらね、それを聞いたお母さんたちは、僕の方を見てホントに? って。


「えっとね、やったのは僕だけど、使ったのは魔法じゃなくって錬金術だよ」


「錬金術?」


「うん。これはね、光の属性魔石にしたもんだから、こんな風にキラキラなんだ」


 だから僕、魔石を属性変換すると色が変わっちゃうんだよって、お母さんたちに教えてあげたんだ。


 そしたら二人ともびっくり。


「属性を変えるって、魔石にそんな事ができるの?」


「うん! お家に魔道冷蔵庫があるでしょ? あれだって氷の魔石を使ってるから、あんなにつべたくできるんだよ」


 僕のお家にはクーラーや冷蔵庫があるし、それにパンケーキを焼くホットプレートだってあるでしょ?


 そういう魔道具には僕が作った属性魔石が使ってあるんだよって教えてあげると、お母さんたちは知らなかったぁって感心したんだ。


「それじゃあこれも、光の魔石にしたって事は光るの?」


「うん、魔道具にしたら光るよ。でもこんなちっちゃいと、僕じゃ魔道具にできないけどね」


 この魔石自体はランプを作れるくらいの魔力があるけど、このペンダントトップだと魔道具にするにはちっちゃすぎるんだよね。


 でも魔道具にしなくたって光の魔石は中にある属性魔力のおかげでほんのちょびっとだけ光ってるから、宝石の代わりにするにはぴったりなんだ。


「まぁこれだけきれいなら、魔道具じゃなくても、十分だけどね」


 だからレーア姉ちゃんは、光らせられないのは残念だけどアクセサリーにするにはちょうどいいかもねってにっこり。


 でもね、ここでキャリーナ姉ちゃんがある事を教えてあげたもんだから、お母さんとレーア姉ちゃんはまたびっくりする事になるんだよね。


「それにね、魔石はこのキラキラしたのだけじゃなくって、いろんな色にもできるんだよって、さっきルディーンが言ってたよ」


「いろいろな色にも!?」


 実は魔石ってね、その属性によって色が違うんだよ。


 例えば基本属性で言うと、火は赤、水は青、土は黄色、風は緑に属性を変えると魔石の色が変わるんだ。


 だからその事を教えてあげると、お母さんとレーア姉ちゃんは大興奮。


「他には? 他には何色が作れるの?」


「この光の魔石は、ほんのりと光ってるわよね? 他の色も光るの?」


 こんな風に、僕に聞いてきたんだ。


 だからとりあえず解ってる事だけ、教えてあげる事に。


「えっとね、僕が後作れるのは闇属性の黒と氷属性の水色かなぁ。レベルが上がっていろんな魔法が使えるようになったらもっといろんな色が作れるようになるけど、今は多分こんだけ」


「なるほど。それで、光以外の魔石も光ってるの? それと透明度は?」


「他の属性魔石はキラキラはしてるけど光んないよ。後ね、作ったばっかりだと透き通ってるけど、中の魔力を使うとだんだんくすんでって、魔力がほとんどなくなると覗いてみても向こう側が全然見えなくなるくらい濁っちゃうんだ」


 やっつけた魔物とかを運ぶのに使う重さを軽くする魔道具なんかは、使ってると無属性の魔石で作ったタリスマンのとこがくすんでっちゃうでしょ?


 あれとおんなじで属性魔石も魔力が無くなってくと、どんどんくすんでっちゃうんだよね。


 でね、もし最後まで魔力を使いきっちゃったら、そのまんま粉々になって砂になっちゃうんだ。


 だから普通はそんな風にならないように魔道リキッド使ったり、物を軽くする魔道具みたいに周りから魔力を吸収する素材をくっつけて魔力がなくなっちゃわないようにしてるんだよ。


「そっか。それでその魔力って、ペンダントにしただけでも減っていくものなの?」


「ううん。多分大丈夫だと思うよ。そりゃあ、すっごく長い間置いといたら解んないけど」


 中に魔法陣を刻んで何かしらの効果が出るようにしてたら減ってくだろうけど、ただ置いとくだけだったら中の魔力が抜けてっちゃう事は無いんじゃないかなぁ?


 だから、ただ土台にくっつけてあるだけのペンダントじゃ、魔力が抜けてっちゃって色がくすむなんて事は無いと思う。


「なるほど、アクセサリーにしても劣化を気にする必要はないって事ね」


 僕のお話を聞いて、なら安心ねって笑うお母さん。


「でも、それなら少しくらい大きな魔石を使っても、もったいないって事は無さそうねぇ」


「大きな魔石って、何を作るつもりなの? お母さん」


「別に、まだ何かを作ってもらおうなんて考えてるわけじゃないのよ? ただ、今まではブラウンボアの魔石が獲れても、この村じゃ使い道が無くって売りに行くしかなかったじゃないの。でもアクセサリーにできるのなら、他にも選択肢ができるんじゃないかと思ってね」


 でもね、お母さんがそんな事を言い出したもんだから、僕はびっくりしたんだ。


 だってさ、ブラウンボアの魔石って確か、金貨200枚くらいで売れるはずなんだもん。


 それにさ、大きさだっておっきな飴玉くらいあるんだよ?


 そんなのを首からぶら下げてたら、村の人、みんなびっくりしちゃわないかなぁ?


「お母さん、流石にそれは無いと思うわよ」


「そうだよ! おっきすぎるよ」


 どうやらお姉ちゃんたちも、僕とおんなじ事を思ったみたい。


 だからブラウンボアの魔石はダメって、二人してお母さんに言ったんだよ?


 でもね、そしたらお母さんは、


「あら、そうね。じゃあ、ブラックボアくらいならいいかしら?」


 だって。


 う~ん、ブラックボアかぁ。


 あれだったらビー玉くらいだから、首からぶら下げててもおかしくないかも?


 キャリーナ姉ちゃんがイーノックカウの雑貨屋さんで見てたネックレスも、羽と一緒についてた石はそんくらいの大きさだったもんね。


 だから僕、それを思い出しながら、あれくらいなら大丈夫かなぁ? って思ったんだよ?


 でもね、レーア姉ちゃんはそうは思わなかったみたい。


「おかあさん、解って言ってるよね? ブラックボアの魔石でも、金貨50枚くらいで売れるのよ?」


「あら、いいじゃない。宝石の代わりと思えば、それでもかなり安いわよ?」


 ブラックボアの魔石だって安くないんだよってレーア姉ちゃんは言ったんだけど、お母さんからすると簡単に狩れる魔物だって思ってるからなのか、それを聞いても別にいいじゃないのって笑ってるんだよね。


 でもさ、レーア姉ちゃんの次の一言で、お母さんはやっぱりやめといた方がいいねってなったんだよ。


「あと、そんなの着けて村の中歩いたら、おばさんたちが群がってくるわよ」


「……確かに、やめといた方がいいわね」


 今ここにある小豆くらいの魔石だったら、おんなじくらいのおっきさのアクセサリーを持ってる人もいるよね?


 でも流石にそこまでおっきいのとなると、グランリルの村でも持ってる人はあんまりいないと思うんだ。


 だからそんなの着けてたら、みんなどうしたの、これ? ってなるし、そしたらまた僕が新しいのを作ったって大騒ぎになっちゃうもん。


 鏡で大騒ぎしたばっかりなのに、またそんな事になったら村長さんに怒られちゃうからやめようって事になったんだ。


 ところが……。


「ルディーンにいちゃ! きらきらの、つくって! スティナ、おっきなのがいい!」


 その数日後、スティナちゃんがうちに来て、おっきなアクセサリーが欲しいって言い出したんだ。


 どうやらまた僕が作ったアクセサリーを、レーア姉ちゃんかキャリーナ姉ちゃんがスティナちゃんに見せちゃったみたいなんだよね。


「おっきなのって、スティナちゃんだとあんまり大きいと重たいよ」


「いいの! スティナ、おっきいのがいいんだもん!」


 それにね、スティナちゃんはお母さんやお姉ちゃんたちと違って、おっきなアクセサリーを持ってたら騒ぎになるなんて言っても解んないでしょ?


 だからどうしても、おっきなのが欲しいって大騒ぎ。


「スティナ、作ってもらうのはいいけど、大事なものだからお外に着けて出てっちゃダメよ。約束できる?」


「うん! やくそく!」


 これには僕もお母さんたちもどうしようもなかったもんだから、結局最後にはヒルダ姉ちゃんに頼んでお外には付けて行かないでねって約束してもらって作る事になったんだ。


「ところでルディーン。当然私のも作ってくれるのよね?」


「うん、いいよ。でも僕、ペンダントにつけるとこは作れるけど、首からぶら下げるチェーンは作れないからね」


「それなら、前に買ったのがあるから大丈夫よ」


 それにね、この騒ぎのせいでヒルダ姉ちゃんの分も作る事になっちゃんたんだ。


 まぁヒルダ姉ちゃんだけ仲間外れはかわいそうだから、それは別にいいんだけどね。


 読んで頂いてありがとうございます。


 この魔石アクセサリーですが、鏡の事で大騒ぎしたばかりなので流石に村のおばさまたちも比較的静かでした。


 でもその代わりに、お姉ちゃんズのお友達やお兄ちゃんズの女のお友達wがちょっと騒ぐことになりますが。


 ただ、おばさまたちと違ってアクセサリーを作ってまでは流石に言えないため、ルディーン君の耳に葉で入らずにすみます。


 まぁ、後々お兄ちゃんズが作ってと頼みに来る日が来るかもしれませんけどね。


 さて、前回の話で貨幣を材料にしても大丈夫ですか? と言う感想を頂いたので少しだけ。


 感想返しには詳しく説明を書いてあるのですが、実はこの世界でちゃんとした貨幣として作られているのは金貨だけで、それもちゃんと鋳造しているのはごく一部の国だけだったりします。


 それ以外の銅貨と銀貨にいたっては、それぞれの価値がある重さの玉を潰して、教会がちゃんとその価値がありますよと言う印の刻印を打っただけのものなんですよね。


 その上、鉄貨にいたってはその刻印すらなかったりします。だから潰して材料にしても、誰にもとがめられることはありません。国が発行したものではないのですから。


 それ以前に、そもそもルディーン君がイーノックカウに来るまではお金を見た事が無かった通り、一定以上の街でしか貨幣なんて使ってないんですよね。


 この世界全体ではどちらかと言うと物々交換や、銀や砂金などの素材での取引の方が盛んだと思ってもらえれば正しいと思います。 


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― 新着の感想 ―
楽しく読ませて頂いたています。しかしながら最近は主人公が周りから色々ねだられて作ることが多く、本人は楽しそうにしているけど8歳?の子供にやりすぎでは?と最近気になり出しました。スティナちゃんもその母親…
[良い点] 光る魔石のアクセサリーが欲しいけど言い出せないw 金貨200枚分のアクセを身に着けるってすごいですね! そしてアクセをおねだりするスティナちゃん、将来は魔性の女かな? [一言] 改めて、貨…
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