374 キャリーナ姉ちゃんはね、キラキラしてるのがいいんだって
キャリーナ姉ちゃんのアクセサリーだったら僕がいっつも持ってる鋼の玉で作ればよかったんだよね。
でもお母さんやレーア姉ちゃんのだと、流石にそんな訳にはいかないよね?
って事で、別の金属を使う事にしたんだけど……。
「使った事ないのは、最初にちょっと練習しないとダメだよね?」
鉄と違って他の金属はクリエイト魔法で加工した事、無いでしょ?
だから僕、アクセサリーを作る前にちょっと練習をしないとダメだよねって思ったんだ。
でもさ、今僕が使える金属はそんなに多くないんだよね。
とりあえず持ってるのは銅と銀の二つ、あとうちにある金属って言うと金くらいかな?
この3つはお金に使われてるから、鍛冶屋さんじゃない僕んちにもあるんだ。
後はお姉ちゃんたちが持ってる鎖を使ってもいいなら真鍮もあるんだけど、それにくっつけるのを作ってるのに、その鎖が無くなっちゃったら意味がなくなっちゃうんだよね。
「あ~あ、こんなに早く作るんだったら、イーノックカウで買ってくればよかったなぁ」
僕ね、お姉ちゃんたちが雑貨屋さんでいろんなのを買ってたから、お家に帰った後もすぐに作んなくていいよね? って思ってたんだ。
だから今度ロルフさんたちのとこに行った時でいっかって思って、真鍮の塊を買ってこなかったんだよね。
あ~あ、もし買って来てたら、わざわざお金を使って作んなくてもよかったのになぁ。
ないものを言ってても仕方ないって事で、とりあえず今僕が持ってる銅貨と銀貨を使ってクリエイト魔法の練習。
もしかしたらお母さんは金で作ったのを欲しいって言うかもしんないけど、金はすっごく高いでしょ?
でもレーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんのにそんなの使えるわけないから、まずはそれを使ってみんなの分を作って、それを見たお母さんがやっぱり金がいいなぁって言ったら金貨をもらって練習した方がいいよねって僕、思うんだ。
「あれ? もしかしたらこれ、鋼を使うより簡単にできるかも?」
試しに銀貨と銅貨をクリエイト魔法で細い棒や丸い玉に変えてみたんだけど、鋼より柔らかいからなのか結構簡単に思った通りの形にできたんだよね。
だから僕、試しに銅貨の方を使って、ちっちゃな平ぺったいお馬さんの横顔を作ってみたんだよ?
そしたら、思ったよりいいのができてびっくり。
「そっか、銅はこういうのを作るのに向いてる金属だったのか」
そう言えばイーノックカウの雑貨屋さんでも、銅でできたペンダントトップってのがいっぱい売ってたっけ。
今の僕じゃ流石にもっと細かい細工とかは無理だけど、これだったらキャリーナ姉ちゃんが欲しがるくらいのものだったら何とか作れそうだね。
銅は多分これ以上練習をしなくっても大丈夫って事で、今度は銀を使ってクリエイト魔法の練習。
とは言っても、こっちはさっきみたいにお馬さんの横顔を作るような細かい細工をする訳じゃないんだよね。
何でかって言うとこっちは銀そのもので細工を作るんじゃなく、これを材料にしてあるものをくっつける土台を作るために使うつもりだからなんだ。
「イーノックカウでお母さんがこんなのいいなぁって言ってたのって、確か水晶やガラスが3つの尖ったのでくっつけてあったよね?」
そりゃあさ、いっぱい練習すれば、もしかしたら売ってたやつみたいに複雑な形も作れるかもしれないよ?
でも銀は金ほどじゃないけど高いでしょ?
だから今はこれで、とりあえずきれいな石を乗っける土台部分だけを作ってみる事にしたんだ。
「う~ん、この尖ったの、もっと細い方がいいかなぁ? でも、そしたら石をくっつけた時に落っこちそうだし」
そしたらね、一応成功したんだけど尖ったとこがなんとなく太い気がするんだよね。
あっ! それにこれだとまっすぐだから、折り曲げでも石がくっつかないかも?
確かあの石をくっつけてたのって、確か尖ってるとこが内側にちょっと曲がって爪みたいになってなかったっけ?
うん、そうだよ! そうじゃないと、石をくっつけられないもん!
そうやって思い出してくと、ちょっとずつだけどどうやって作んなきゃいけないのか解ってきたんだ。
「多分、これでいいと思うんだけど……、うん! いっぺん、くっつけてみよっと」
そうやって何度かやってるうちに、なんとなくこんな感じかなぁってのが出来上がったんだよね。
でも実際にくっつけてみないと、ほんとに大丈夫かは解んないでしょ?
だから僕、実際に石をくっつけてみる事にしたんだ。
「実験だから、まだこのまんまでいいよね」
そう言って僕が取り出したのは、ジャイアントラビットから取れたちょっと大きめの小豆くらいの魔石。
そう、僕は水晶やガラスの代わりに魔石を使おうって思ってるんだ。
魔石ってさ、無属性のまんまだとちょっと濁った透明なんだけど、属性魔石にすればいろんな色のキラキラした石に変わるんだよね。
だから僕、これを水晶とかみたいな宝石の代わりに使おうって思ってるんだ。
「ちゃんとくっつくかなぁ?」
と言う訳で僕はさっき作ったばっかりの土台に、ちっちゃな魔石をのっけて爪を折り曲げてったんだよ?
そしたらね、一応くっついたんだけど、触るとちょっとぐらぐら。
って事はさ、これだとダメって事だよね?
だから僕、どうしてかなぁ? って頭をこてんって倒したんだけど、
「あっ、そっか! くっつけるとこが平ぺったいからちゃんとくっつかないんだ」
ちょっと考えたら、その理由が解ったんだよね。
だってさ、魔石は四角いわけじゃないもん。
だから土台の方をちょっとへこましてやんないと、ちゃんとくっつかないって事に気が付いたんだよね。
って訳で、今度は魔石をのっけるとこがちゃんとへこむようにクリエイト魔法で加工。
その上にもういっぺん魔石をのっけて爪を折り曲げてみると、今度はちゃんとしっかりくっついたんだ。
「やった! これで魔石をくっつけるとこは大丈夫だね」
とりあえず一番大変なとこは成功したって事で、仕上げにかかる事に。
これって銀貨をそのまんまこの形にしたもんだから、ちょっとおっきいんだよね。
って事で僕は土台から魔石を取り外すと、クリエイト魔法で銀貨をちょうどいいくらいの大きさになるように2個のちっちゃな玉にしたんだ。
そしてその玉にもういっぺんクリエイト魔法をかけると、今度こそちょうどいい大きさの土台が完成。
それにね、この時一緒にちっちゃな輪っかも作ったんだよ。
だってこれが無いと、鎖が着けられないもんね。
「後はくっつける魔石だけど、何色がいいかなぁ?」
僕、結構いろんな属性魔石が作れるから、迷っちゃうんだよね。
「あっ! そっか。お母さんたちに、何色がいい? って聞けばいいのか」
と言う訳で、僕は土台に魔石をくっつけると、それを持ってお母さんたちのとこに行ったんだ。
土台にくっついたまんまでも、無属性の魔石を属性魔石にする事はできるからね。
「わぁ、キラキラだぁ!」
僕がみんながいたお部屋に行くと、お母さんとレーア姉ちゃんはご飯を作んなきゃいけないからって、そこにはキャリーナ姉ちゃんしかいなかったんだよね。
だからお姉ちゃんにどんなのにしたらいい? って聞いたら、キラキラしたのがいいって言うんだもん。
それだったら色は付かないけど透明でキラキラしてる光属性の魔石がいいよねって、僕はその場で作り変えたんだよ。
そしたらキャリーナ姉ちゃんは大喜び。
できたばっかりのペンダントトップを持って、お目めをキラキラさせてるんだ。
「どうしたの? キャリーナ。そんなに大声を出して」
でね、その時にとっても嬉しそうにキラキラだって叫んだもんだから、それを聞いたお母さんとレーア姉ちゃんが台所から僕たちのお部屋に帰ってきたんだよね。
「ほら見て! ルディーンがキラキラの宝石みたいなのを作ってくれたんだよ。すごいでしょ?」
「えっ!?」
そんなお母さんたちに、キャリーナ姉ちゃんは持ってたペンダントトップを見せてあげたんだ。
でもね、何でか知らないけど、お母さんとレーア姉ちゃんはそれを見ても何にも言わないんだよね。
だから僕とキャリーナ姉ちゃんは、なんで? って頭をこてんって倒したんだ。
あれ? これじゃダメだったのかなぁ?
キャリーナ姉ちゃんが言う通りキラキラしてるけどこれ、もしかしてちっちゃくでも魔石だからこんなのに使っちゃダメだったのかも?
あっ! それにそう言えばこのペンダントトップ、まだ鎖につなげる二重の輪っかみたいなのをつけてなかったっけ。
「えっとね、これはまだ先っぽにつけるやつしかできてなくって、鎖にくっつけるのはまた後で……」
「ルディーン! この石、何処から持ってきたの!?」
「この透明度と輝き。水晶どころか、まるでダイヤモンドみたいじゃない!」
だから慌てて、鎖につける輪っかは後で作るんだよって教えてあげようと思ったんだけど、そしたら急に二人して僕にこんな高そうな宝石、何処から持ってきたの? って。
でね、僕とキャリーナ姉ちゃんはそれがあんまりすごかったもんだから、ちょっとの間何にも言えずに固まっちゃったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
光属性の魔石は、色がつかない代わりに内側から虹色の光をほのかに放ちます。そのおかげでシーラお母さんが言う通り、ぱっと見ダイヤモンドみたいなんですよね。
おまけにこれ、属性魔石なので土台にちょっと細工をするだけでライトの魔道具に早変わりする優れものだったりしますw
まぁペンダントトップだと小さすぎるので、プロの細工師でもなければ属性記号を書くなんて事、できないとは思いますけどね。




