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35 天才? いえ、努力の人でした


「成長限界の話は解ったかな? それじゃあ今度こそ視せて貰うわね」


 そう言うとルルモアさんはじっと僕の方を見つめた。


 う~ん、僕は見ようと思ったらすぐに相手のステータスが見えるけど、これって普通じゃないのかも。

 結構長い間見てるしなぁ。


 あっでも、ステータスを視るレベルが上がったら早く解るようになるのかも。

 僕の場合はステータスだけじゃなくレベルや成長限界、それにスキルまで解るからなぁ。ルルモアさんもそこまで行けばきっと僕と同じくらい早く見る事ができるようになるんだろうね。



 ■



 なにこれ? ルディーン君って確か8歳だって言ってたわよね? それでこのステータスなの!?


 HP    : 80

 MP    :135

 筋力    : 48

 知力    :105

 敏捷    : 43

 信仰    : 95

 体力    : 50

 精神力   :125

 物理攻撃力 : 28

 攻撃魔力  : 85

 治癒魔力  :130


 目の前に並ぶとんでもない数字、それが信じられず、私は何度も鑑定をしなおした。

 しかし、何度鑑定しても出てくる数字は変わらない。


 と言う事はルディーン君のステータスは間違いなく、この通りなのだろう。


 でもこの数値が本当にルディーン君の能力を表しているというのなら、彼はすでに何かしらの魔法職のジョブについていて、なおかつ最低でも2レベル、もしかすると3レベルまで上がっているという事になる。


 普通なら8歳と言う年齢でジョブを得るなんて事はありえないはずだ。


 ジョブを得てしまった後ならパーティーを組んで強力な魔物を倒すことによって急成長するという話を聞く事もあるけど、ルディーン君は村で育った普通の子供だし、それにグランリルでは冒険者登録をしていない子供は森に入ることを禁じているはず。

 そんな村で育った彼が8歳でジョブを得るなんて、本来ならありえない事なのだ。


 そもそもそのジョブを得るのには、その前段階と言われる見習い職が10レベルに達する必要があると私は教えられている。

 その見習い職でさえ、真剣に一つの職業を目指しても普通は10歳までに得ることができれば早い方と言われるもので、その中でも魔法職である見習い魔法使いと見習い神官は特に習得が難しいと言われているのよ。


 見習い剣士などが7~8歳から練習を始めても身に付けることが出来るのに対して、魔法職は普通3~4歳から修行を始め、しっかりとした指導の下での毎日の訓練の積み重ねでやっと得られるという他の見習い職とは段違いの難易度を持つものなのだ。


 そしてルディーン君は攻撃魔法でウサギとかを獲っていると言っていたから間違いなくその魔法職であり、私は彼の年齢からてっきり見習い魔法使いを少し高めに習得しているのだろうと考えていたんだけど、でもこの能力値や攻撃魔力の値は、何かしらの魔法系ジョブは習得していないと説明できないわ。


 そもそも職とジョブが分かれているのは、その二つが似て異なるものだと言われているからなのよね。


 と言うのも、一般職と言うのはあくまで技術でありその技術を磨く事によって筋力や魔力が鍛えられて能力が上がるのに対し、ジョブは動物が魔石を得て魔物に変異するのと同じ様に、人間またはそれに近い種が魔力を取り込んで変異する事によって能力が上がるものだと考えられているからだ。


 この説にはちゃんとした根拠があって、ジョブを得てからも一般職と同じ様に鍛錬すれば少しずつはレベルも上がって行くんだけど、魔物を狩る事によってそのレベル上昇とは比べ物にならないほどの成長を見せるのよね。


 それも自分より強いものを狩るとより早くレベルが上がる事から、狩った魔物の魔力を取り込む器官がジョブを得る事によって体のどこか、または魂の中に生まれるのではないかって言われてるわ。


 後一般職だって得ればそれ以降、その職のレベル上昇に従って確かに能力値は上がるんだけど、でもジョブの場合は得た瞬間にその能力値は飛躍的に上がり、またレベルが一つ上がるたびに一般職のレベルアップとは比較的にならないほど強くなる。


 実際同じジョブ同士ならレベルが5違えばどんな技術を持っていてもまず勝つ事はできなくなるし、10レベルも離れてしまえば強力なマジックアイテムで武装しても勝てなくなると言われるほどジョブと言うものは特殊なものなのだ。


 だからこそ、ジョブを得るというのは人間の魔物化の様な物だとも言われているのよね。



 さて、話を戻そう。


 ここで問題なのは何故ルディーン君は8歳と言う幼い年齢でジョブを得る事ができたのか? 私なりに仮説を立てるとすると、彼が加護持ちと呼ばれるジョブを得やすいタイプなのかも知れないと考えられるのよねぇ。


 加護持ちと言うのは別に本当に神様の加護を得ていると言うわけじゃなく、成長限界が普通の人より高くてレベルを習得しやすかったり上がりやすい人の事を私たち鑑定士はそう呼んでいるの。


 普通の人は20レベル前半が成長限界で少し才能がある人は20台中盤、そして能力が高いと周りから言われるような人が20台後半の限界値なんだけど、たまに、それこそ300人に一人くらいの割合で成長限界が30を超える人が現れる。それが私たちの言うところの、加護持ちと呼ばれる人たちだ。


 世の中には30台中盤と言う信じられないほど高い成長限界を持って生まれて来て、後に英雄と呼ばれた人たちもいたらしいから、もしかしたらルディーン君もそんな英雄予備軍かもしれないわね。


 それならこの歳でジョブを得て、更にレベルアップを果していたとしてもおかしくはないだろう。


 しかしこれはあくまで私の仮説であり予想でしかない。


 だからこそ、ルディーン君に聞かなければならない。彼がどうしてこれ程の力を得ることができたのか、その理由を知るために。



 ■



 ルルモアさんが、なんか決意を秘めたような真剣な顔をして僕を見つめてる。


 なんだろう? 何か変な所でも見つけたのかなぁ?


 まぁ今の僕のレベルは変と言えば変だけど、ジョブが視られないと言う事はレベルも見られないということだろうし、ステータスは確かに高めではあるけどこんな顔をするほどなのかなぁ?


 この頃は人のステータスを殆ど視てないから他の人がどうなのかよく解らない僕は、ただ黙ってルルモアさんの鑑定を待つしかないんだよね。


 そしてルルモアさんが、やっとその口を開いたんだ。


「ルディーン君、一つ聞かせてもらってもいい?」


「うん、いいよ」


「あなたは魔法で獲物を狩っていると言っていたわね。その魔法ってどうやって覚えたの?」


 ん? なんか普通の質問だ。

 って事はこの真剣な表情は別に僕が変だからじゃなく、お仕事だからまじめな顔でやってただけなのか。


 ああよかった。


 安心した僕はルルモアさんに聞かれたことをちゃんと答えたんだ。


「むらのとしょかんにあった、まほうのほんをよんでおぼえたんだよ」


「ああそうじゃなくて、私の言い方が悪かったわね。私が聞きたかったのはルディーン君が何歳くらいから練習を始めて、今までどんな風にそれを続けて来たのか、そういう話を知りたかったの」


 ああそうか、僕間違えちゃった。


 そう言えば僕は教えてくれる魔法使いが誰もいないグランリルの村から来たんだから、本を読んで魔法を覚えるしかないなんて事は普通に考えれば解るもんね。


 失敗しちゃったのがちょっと恥ずかしくて、照れ笑いを浮かべながら僕は今までの事をルルモアさんに話したんだ。


「えっとね、ぼくがれんしゅうをはじめたのは4さいのときだよ」


「そう、やっぱり練習を始めたのはかなり早かったのね」


「うん! でね、それからはずっとおなじことをやってきたんだ」


 ルルモアさんは僕の話を頷きながら、真剣に聞いてくれている。

 だから僕は、いつもやってる事をちゃんと話さなきゃ! って思って、朝起きてから寝るまでの事を全部話すことにしたんだ。


「まずはあさおきてね、すぐにまほうがつかえなくなるまで、なんかいもライトのじゅもんのれんしゅうをして、そのあとあさのおてつだい。それで、ごはんたべたあともちょっとだけおてつだいして、またまほうがつかえるようになったら、つかえなくなるまでれんしゅうしてたんだ」


「えっ?」


「でね、おひるごはんのあとはまほうがうまくなるように、ほんをよんでおべんきょうして、ゆうがたになったらおにいちゃんやおねえちゃんあいてに、またまほうのれんしゅう」


「えっ? えっ?」


「でね、ねるまえに、もういちどまほうがつかえなくなるまでれんしゅうして、それからねてた」


「…………」


 あれ? ルルモアさん、なんか黙っちゃった。


 もしかしてこの練習をこの町に来ても続けてると思って、そんなこと宿でやったら周りに迷惑になるでしょって思っちゃったのかなぁ? ならちゃんと誤解を解いておかないと。


「あっ、ここにきてからはやってないよ。しらないひとばっかりだから、おこられちゃうかもしれないもんね」


 そう言って僕はちゃんと周りの人の事も考えてるよって教えてあげたんだけど、ルルモアさんの表情は優れない。と言うか、あからさまに怒っている気配が感じられるんだよね。


 もしかして僕、やっちゃいけない事を知らないうちにやってたのかなぁ? でも今までお父さんもお母さんも、それにお兄ちゃんやお姉ちゃんからも叱られた事ないから、怒られる様な事はやってないはずなんだけど……。


 そうは言っても、この雰囲気に負けて僕はちょとずつ不安にはなって行ったんだ。


 でもねぇ、ルルモアさんの怒りの矛先は僕じゃなかったみたい。


 ガタン!


 ルルモアさんはそんな大きな音を立てながらいきなり立ち上がると、キッっとお父さんを睨みつけてこう叱りつけたんだ。


「カールフェルトさん! あなたって人は、子供になんて苦行をやらせているんですか! まったく、信じられないわ。児童虐待です! こんなハードな生活、鉱山へ送られた犯罪奴隷でもやらされていませんよ!」


「えっ? ええぇ~っ!?」


 ……どうやら僕がやっていた魔法の練習は、常識はずれだったようです。


読んで頂いてありがとうございます。


30話を超えて、皆さんがこの作品をどう考えているのか気になっている今日この頃です。

できたら感想を頂きたいのですが、それが無理なら評価だけでも入れていただけるとありがたいです。

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