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318 幹がつるつるだと登れないんだよ

 ご心配おかけしました。とりあえず連載再開です。


 幻獣がいたとこまでの道はお父さんが知ってるし、この中で一番強いのもお父さんだからって事で、僕たちはその後ろをぞろぞろとついて行ったんだ。


 でもね、


「そろそろ幻獣がいた場所の近くだが……ルディーン、見つけたって言うベニオウがなってる場所は、ここからどう行くんだ?」


「えっとねぇ、確かこっちだよ」


 ベニオウの実があるとこは僕にしか解んないでしょ?


 だからここからは、僕が先頭になって進むことになったんだ。


 それでね、そのままみんなで森の中をてくてく歩いていくと、遠くの方に白くてまっすぐ伸びた木が見えてきたんだ。


「あっ! お父さん、あれがそうだよ」


「へぇ、あれがベニオウの実がなってるって言う木か」


 ベニオウの木はね、周りに生えてる木とは見た目がかなり違ったもんだから、僕があれだよって教えてあげたらお父さんはすぐに解ったみたい。


 それにお母さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんたちもすぐに見つけたもんだから、みんなして喜びながらベニオウの木のとこまで行ったんだ。


 でもそんな笑顔だったみんなも、その木の近くまで行ってみたら困った顔になっちゃったんだよね。


 何でかって言うと、その木が5メートルくらいまでまっすぐの幹が伸びてて、その先におっきな実をいっぱいつけた枝がすっごく広がってたからなんだ。


「ルディーンが言っていた通り、下から見ると確かにかなりの実がなってるようだけど……でもこれ、どうやって採ればいいんだ?」


「確かに、これじゃあ木に登って採るなんて簡単には言えないわね」


 例えばさ、とっても高いとこに実がなってたって普通の木だったら下の方にも枝が生えてるから、それを伝って行けばそこまで登る事ができるよね?


 それにもしそんな枝が生えてなかったとしても、木に登りなれてる人は幹の表面がごつごつしてたらそこに足を引っかけて登る事だってできるんだ。


 でもね、このベニオウの木はお母さんが言う通り、とても登る事ができそうにないんだよね。


 何でかって言うと、このベニオウの木はまっすぐ伸びてる幹の表面がすっごくつるつるしてて、手とか足を引っかけるとこが全然無いんだもん。


 それでも、もしこれが細い幹だったら何とかなったかもしれなかったんだよ? だって足に挟んでするするって登ればいいからね。


 けどこの木は太さも結構あったもんだから、どう考えても何か道具が無いととても登れそうになかったんだ。


「これは想定していなかったなぁ」


「そうね。わたしだってちょっとくらい高い所に実がなっているとしても、ハンスが誰かを肩車すれば採れるんじゃないかと思っていたもの」


 この状況にはお父さんもお母さんも困っちゃった。


 だってさ、例えば僕たち兄弟の中で一番背の高いディック兄ちゃんをお父さんが肩車したって、一番下の方になってるベニオウの実にだって手が届きそうにないんだもん。


「ベニオウの実の値段が高かったのは、採れる数が少ないからだけじゃなかったんだな」


 お父さんはね、森の入口の方にあった木もこれとおんなじように、とっても高いとこに実がなってるんじゃないかな? って言うんだよ。


 きっとね、入口の方に生えてるベニオウの木から実を採ってる人たちは、この木に登るためのはしごとかを持って森に入ってるんじゃないかってお父さんは考えたみたい。


 だからそんな準備にかかる手間とかも入れてるから、ベニオウの実はあんなに高かったんだってさ。



「ねぇお母さん。ベニオウの実、採れないの?」


「う~ん。せっかく目の前にあるのだから、何とかしたいんだけどねぇ」


 お父さんたちが、こんな風に困った顔しながらどうしようって話してたでしょ?


 だからそれを横で聞いてたキャリーナ姉ちゃんが、不安そうな顔してお母さんに採れないの? って聞いてきたんだよね。


 そんなお姉ちゃんにお母さんは何とかしたいとは言うんだけど、いい考えは浮かばないみたい。


「せめてあの枝があと2メートルくらい下から伸びていたら、何とかなったんだけどなぁ」


「そうだよね。もしそうなら、お父さんに手伝ってもらって、何とか飛び移れるのに」


 ディック兄ちゃんとテオドル兄ちゃんも何とかあそこまで登れないかな? って一生懸命考えてくれてるみたいだけど、でもどんなに頑張っても手が届かないんじゃどうしようもないみたい。


 だから二人してずっと上の方にある太い木を見上げながら、悔しそうにこう言ったんだ。



 お父さんやお母さんだけじゃなく、お兄ちゃんたちも採れそうにないなぁなんて言い出したもんだから、みんなやっぱりあきらめないとダメなのかなぁって雰囲気に。


「ねぇ、ルディーン。魔法で何とかできないの?」


「ダメだよ。マジックミサイルとかで撃ったら、ベニオウの実がパーンってなっちゃうもん」


 でもね、どうしてもあきらめきれないキャリーナ姉ちゃんは、僕に魔法で採れない? って聞いてきたんだよね。


 けどベニオウの実はとっても柔らかいでしょ?


 もし魔法を撃ったりしたら、当たっても落ちてこないでバラバラになっちゃうだけだもん。


 だから無理だよって言ったんだけど、


「そうだよ。ルディーンの魔法があるじゃない!」


 そしたらレーア姉ちゃんまで、僕の魔法があればベニオウの実を採れるって言いだしたんだ。


 だから僕、びっくりしてレーア姉ちゃんに聞いてみたんだ。


「なんで? 魔法を当てたらパーンってなっちゃうんだよ?」


「別に魔法を当てて採ろうって訳じゃないわよ。ねぇ、ルディーンは材料さえあればいろんな物が作れるんでしょ? だって馬車を作ってる時にそう言っていたもの」


「クリエイト魔法の事? うん、作れるよ」


「だったらさ、その魔法で木に登る道具を作ればいいじゃないの」


 ここは森の中なんだから、周りには木がいっぱい生えてるよね?


 だからレーア姉ちゃんは、その木を使ってベニオウの木に登るためのはしごを作れないかなぁ? って言いだしたんだ。


 でもなぁ。


「う~ん、無理なんじゃないかなぁ」


「え~、何で? 材料があれば作れるんじゃないの?」


「うん、作れるよ。でも、生えてる木を使ってはしごを作るのは多分無理だと思うよ」


 確かに木材があればはしごくらい簡単に作れるんだよね。


 でもさ、クリエイト魔法は材料を使って物を作る魔法だから、一度木を切り倒さないと材料としては多分使えないと思うんだよね。

 

「ここには斧もノコギリもないもん。だから木を切れないでしょ?」


「そっか。いい考えだと思ったんだけどなぁ」


 木を切らないと材料にできないし、その木を切る道具だって持ってきてないから無理だよって教えてあげたら、それを聞いたレーア姉ちゃんはしょぼんとしちゃった。


 でもね、そしたら今度は横で僕たちの話を聞いてたお父さんが、ニカって笑いながらレーア姉ちゃんの頭をなでてこう言ったんだよ。


「いや、あきらめる必要はないぞ。レーアが考えた方法は多分正解だ」


「え~、お父さん。もしかしてなんか木を切る道具、持ってるの?」


 レーア姉ちゃんが言ってることができるって事は、木を切る事ができるって事だよね?


 だったらきっとなんかこういう時に使えるいい道具を持ってるんだねって思った僕は、そう聞いてみたんだけど、でもお父さんはそんな道具、持ってきてないよって言うんだよね。


「じゃあ木は切らないの? だったらどうやってはしごを作るのさ? 僕、落ちてる枯れ枝とかじゃ作れないよ」


 だけどさ、木を切らなかったらどう考えてもはしごなんて作れないでしょ?


 だから僕、何を使って梯子を作るのか、お父さんに聞いてみたんだ。


「いやいや、高い所に登るだけならはしごである必要はないだろ? だって、うちの庭にある水がめに上がる階段。石でできてたじゃないか」


 そしたらお父さんは、かまどの石は庭の土から作ったんだから、あれも同じように作れるんじゃないのか? って笑いながらそう言ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 いつもなら早くて1時間半、長くても3時間ほどで1話書きあげるのですが、今回はしばらく書いていなかったからなのか、それとも足が痛いからなのかは解りませんが集中力が続かずこの話を書くのに6時間くらいかかってしまいました。


 う~ん、2週間ちょっとだけどブランクって怖いなぁw


 まぁ、少しづつ調子を取り戻していこうと思います。


 さて、活動報告に悪化したと書いた足のけがですが、昨日病院に行って診てもらったところ最悪の時期は脱したらしく、もう緊急手術をするような事態になる段階は抜けたそうです。


 無理をしてまた内出血をするようなら今度こそ緊急手術だと言われていたから心配していたのですが、これで一安心。


 このケガに関しては読者様からも感想や活動報告のコメントでたくさんの励ましのお言葉を頂き、ありがとうございました。


 これからは少しずつ普通の生活に戻していって、この連載も多分しばらくは週1~2回更新になりますが、なるべく早く元の更新ペースに戻せたらいいなぁと思っている今日この頃です。


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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなで考える果物のとり方。 階段作るという発想はなかった。 木に登るところから梯子や鉤爪に偏ってしまいましたw [一言] 緊急手術など危険な言葉も聞こえていますが 完治までご自愛ください…
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