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29 なんかやらかしちゃったみたいです


 僕たちは別に依頼を受けにきたわけじゃないから、色々張り出された掲示板を横目に見ながらそのまま奥へ。


 この冒険者ギルドは先ほどの掲示板の奥に待ち合わせや簡単な商談用の飲食スペースがあり、そこをさらに抜けると結構長いカウンターが設置してあるんだ。


 そこには用途別に4つの窓口があり、それぞれにはそこが何に対応しているかが書かれたプレートが置かれている。


 これは初めてこの冒険者ギルドを訪れた人でも迷わずに済むようにする為なんだけど、今はその中でも一番左の窓口だけにしかギルド職員がいなかった。

 そしてその前には長い行列ができていて、四人の職員がその対応に追われていたんだ。


「たいへんそうだね」


「ああ、この時間帯の依頼受け付けは戦争だからな」


 そう、この行列ができている場所は依頼を受けたい冒険者たちが壁に貼られた依頼書をはがして持っていき、担当のギルド職員がギルドカードと見比べてその人たちがこの依頼に見合ったランクであるかどうかを確認する受付だったんだ。


 騒がしい掲示板前と違って、こっちはみんなきちんと並んで順番待ちをしている。


 それぞれの手には依頼書がもう握られているから選んでいる時のような騒ぎにはならないってのは解るけど、武装した大きな体をした人たちが静かに並ぶその光景は、ちょっと珍しくて面白かった。



 さて、何時までもそんな行列ができる受付所を見ているわけにも行かないので、今日僕たちが来た本来の目的である冒険者登録をしに行くことに。


 カウンターを見ると右から新規依頼受付、冒険者登録受付、依頼達成報告受付、依頼書受理受付となっていたので、僕たちは右から二番目の受付前へと歩いて行った。


 ところが先ほども言ったように、そこには誰もいないんだよね。

 だって、このカウンターの担当職員は4人とも長い行列ができている依頼書受理受付に張り付いてるんだもん。


 まぁ、そうしないと何時まで経っても終わらなそうだから仕方ないんだけどね。


 でもこの場合はどうするんだろう? 待っていれば本来このカウンターの受付をしてる人が来るのかなぁ、なんてぼんやり考えていたら。


 チンッ!


 お父さんがカウンターに置かれているベルを鳴らした。


 そんなしぐさに僕は、本来のこのカウンター担当はすぐそこにいるんだから声をかければいいのにって思ったんだけど、どうやらお父さんは今依頼書の受理に手を取られている人を呼んだわけじゃなかったらしい。


 その証拠に、カウンター奥にある階段を、ギルドの制服を着た一人のお姉さんが降りてきたからだ。


 この場所の喧騒を考えると、さっきのベルの音が二階まで聞こえるはずがないよね? と言う事は多分このカウンターに置かれているベルは何かの魔道具で、これを鳴らすと担当の人が解るようになっていたんだろうね。


「あらカールフェルトさん。今日はどうなさったんですか?」


「おお、今日の担当はルルモアさんだったか。それはある意味ラッキーだったな。いや、今日は息子の冒険者登録をしようと思って来たんだ」


 ルルモアさんと言うお姉さんは、どうやらお父さんと知り合いらしい。

 そんなお姉さんに、僕はペコリと頭を下げる。


「ルディーンです。8さいです。きょうはとうろくにきました。よろしくおねがいします」


「あらあら、こんにちわルディーン君。私はマリアーナ・ルルモアよ。よろしくね」


 そう言うとルルモアさんはにっこりと僕に微笑んでくれた。


 マリアーナ・ルルモアさんは金色の絹糸のように細くてさらさらとした長い髪とエメラルドグリーンの切れ長の瞳を持つ、とても綺麗な人だ。


 そして種族はなんとエルフ。


 村には人間しかいなかったから僕はてっきり、他の種族を人里で見かける事はあまりないんだろうなぁなんて思い込んでいたけど、本屋のヒュランデルさんもエルフだったし、町に出ればそれ程珍しいものではないのかもしれないね。


 背はすらりと高くて180センチくらいあるんじゃないかなぁ? 顔も小さくて足も長いから、なんと言うか物語に出てくるような美しい種族であるエルフそのものって感じの人だった。


 因みにヒュランデルさんは160センチくらいで僕が知っているほかの女の人達と同じくらいの身長だったから、エルフが特別背が高い種族であると言う訳ではないのかもしれない。



「カールフェルトさん。息子さんはまだ小さいのに、もう冒険者登録を?」


「ああ。ルディーンはこう見えても、狩りの腕はうちの子たちの中でもトップレベルなんだ。シーラやこいつの兄弟たちはみんな反対したんだけど、俺としては早めに魔物と言うものを教えてやらないとダメだろうって考えてな」


 やっぱりルルモアさんも僕が小さいから冒険者にするにはまだ早いと考えたみたいで、ちょっと批難するような口調でお父さんに聞いたんだけど、お父さんの言葉を聞いて少し考えを変えたみたい。


「そうなんですか。確かに中途半端に狩りになれてからだと、魔物と対峙するのは危険かもしれませんね」


 そう言って納得したような顔をしたんだ。



「それでルディーン君は何が得意なの? ショートソードを持っているようだけど、その小さな体では獲物に近づくのも大変だろうから普段は弓を使っているのかな?」


「ちがうよ。ぼく、いつもまほうでうさぎとかとりをとってるんだ。まほうならはずすしんぱいがないから、ゆみよりかんたんにかれるんだよ」


 僕はエッヘンと自慢げに胸をそらし、ルルモアさんにそう教えてあげた。

 でもね、何故かルルモアさんからは何の反応も返ってこなかったんだ。


 ところが、僕の言葉に思いもしなかった所が反応をした。


 さっきまであんなに騒がしかった冒険者ギルドが急に静かになって、おまけに全員の目が一斉に僕に向けられたんだ。


「えっ? なに?」


 驚いたように見開かれて集中する多くの人たちの視線と、あちゃーと額を押さえながら困った顔をするお父さん。


 そんな中で僕は何が起こっているのかまったく解らず、おろおろとするばかりだったんだ。




 そんな時が止まった様な冒険者ギルドの中で、一番早く動き出したのはルルモアさんだった。


 血相を変えて、お父さんに喰って掛かるルルモアさん。


「カールフェルトさん! こういう事は先に言ってくださらないと困ります!」


「すみません。まさか、いきなり言い出すとは思ってなくて」


 綺麗な人が怒ると怖いって本当だね。


 ただでさえ鋭い、切れ長の瞳がさらに吊り上がったルルモアさんの剣幕に、お父さんはたじたじだった。 


「とにかく、ここでは対応できないので二階へ。ルディーン君も、私についてきてね」


「うん」


 カウンターの一番右側は一部が跳ね上がって奥に入れるようになっていたらしくて、そこから僕とお父さんはカウンターの中へと入り、そのまま階段を上がって二階へと通される事になったんだ。


読んで頂いてありがとうございます。


少しずつ、ブックマークが増えていくのが見るのが楽しみな今日この頃です。

もし気に入ってもらえたら、続きを書くモチベーションになるので入れてもらえるとありがたいです。

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[一言] いつまで平仮名で話すの?ただ読みにくいだけ
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