308 特別な料理スキルがあるんだって
再開したポイズンフロッグ狩りなんだけど、思ってたのよりずっと簡単に進んでったんだよね。
なんでかって言うと、僕の探索魔法がちょこっと高性能になったから。
「お父さん、こことここにいるみたいだけど、どっちを先にする?」
「そうだなぁ。こちらの方が近いが確かこの先は崖になってるはずだから、迂回する事を考えると向こうを先にした方がいいだろう」
レベルが上がって調べられるとこが広くなったでしょ?
そのおかげでポイズンフロッグのいるところが、何個かいっぺんに解るようになったんだ。
でね、その場所をお父さんに地図を見ながら教える事で、どの順番で狩って行ったらいいのかが解るようになったんだ。
だから、ほんとだったら全部やっつけるのにもっとかかるはずだったのに、冒険者ギルドで教えてもらったやっつけに行かないとダメだったとこを、それから三日間で全部回る事ができたんだ。
「ご苦労だったな。いや、本当に助かった」
ポイズンフロッグを全部やっつけたって事で、僕たちはまたギルドマスターのお爺さんのお部屋に連れてかれたんだよね。
でね、そこで残りのポイズンフロッグが入ってるマジックバッグをルルモアさんに返したら、ギルドマスターのお爺さんがお父さんにご苦労様ってニコニコしながら言ってくれたんだ。
「いやいや、困った時はお互い様だろう?」
「そう言ってもらえるとありがたい。それに幻獣まで倒してくれたからのぉ。もしカールフェルトさんたちがこの街に来てなかったらと思うと、ぞっとするよ」
僕たちは幻獣を探索魔法で見つけたから、見つからずにそのまま街まで帰ってこれたでしょ?
でもポイズンフロッグをやっつけるために他の冒険者を雇ってたら、きっと森ん中でいきなり出くわしてひどい目に合ってたはずだよってギルドマスターのお爺さんは言うんだ。
「最悪、高レベルパーティーが壊滅なんて事にもなりかねなかったからな。そう言う意味でも、本当に助かった」
「まぁ確かに、ルディーンの魔法のおかげで色々と楽ができたのは間違いないな」
僕に向かってそう言って笑うギルドマスターのお爺さんとお父さん。
でね、横で聞いてたお母さんも、探索魔法だけじゃなくってスリープって魔法もあったからこんなに早くやっつけられたのよねってほめてくれたんだ。
「ところで、カールフェルトさん。いつ頃までこの街に滞在する予定ですか? できればあと2~3日は残って頂けるとありがたいのですが」
お父さんとギルドマスターのお爺さんとのお話が落ち着いたところで、ルルモアさんがいつ帰るの? って聞いてきたんだよね。
「2~3日ですか?」
「はい。こちらが思っている以上の数のポイズンフロッグを退治して頂いたし、何より今までこの街に出た事のない幻獣まで退治なされたので、その討伐報酬と魔核の相場を調べるのに少々時間がかかってしまうようなのです」
だから何で? ってお父さんが聞いたら、買取部門のニールンドさんから報酬がいくらくらいになるかすぐに解んないから、もうちょっと待ってってお願いされたんだって。
「その間の滞在費用も当然こちらで支払いますから、お願いできないでしょうか?」
「まぁ、ここまで伸びてしまったのだから、2~3日くらいなら大丈夫ですよ。シーラもいいだろ?」
「ええ。そこまで急いで帰らなければいけない訳でもないですしね」
お父さんとお母さんに、もうちょっといてもいいよって言われたルルモアさんは、ほっと一安心。
それじゃあ後でニールンドさんにそう言っておくねって言った後に、今度は僕の方を見たんだ。
「あと、ルディーン君。できたらでいいんだけど、この街にいる間にもう一度アマンダさんに会ってもらえないかしら?」
「アマンダさん? って、お菓子屋さんの?」
「ええ。本当は話しておいてと言われただけなんだけど、時間ができたのなら直接本人から詳しい話を聞いた方がいいと思って」
なんだろう? こないだ教えてあげたスポンジケーキの事かなぁ?
僕はそう思いながら頭をこてんって倒したんだけど、そしたらそれを見たルルモアさんが笑いながら何のお話がしたいのかを教えてくれたんだ。
「実は昨日お店に行った時にルディーン君の話が出てね、その時に聞かれたのよ。ルディーン君はもしかして、錬金術も使えるんじゃないの? ってね」
こないだお店で、僕が魔道具を作れるんだよってお話をしたでしょ?
アマンダさんもその時は、へぇそうなのかってくらいしか思ってなかったらしいんだけど、後になってもしかしたら錬金術も使えるんじゃないかなぁ? って気が付いたんだってさ。
「僕、ロルフさんに教えてもらったから錬金術でお薬、作れるよ」
「ええ、その話は知ってるわ。だからできるはずよって話したんだけど、そしたらいずれ使えるようになる可能性があるから話して置いてって言われたのよ」
「なにを?」
「料理に関係する二つのスキルを、よ」
アマンダさんはね、僕がお菓子を作ってるとこを見て料理人の一般職を持ってるんじゃないかなぁ? って思ったんだって。
だからもし錬金術が使えるのなら、その両方を使える人だけが覚える事の出来るスキルをいつか使えるようになるかも? って思ったから、僕にその事を教えといてねってルルモアさんに頼んだんだってさ。
「錬金術を使った料理人のスキルか。変わったものが存在するのだなぁ」
「ええ。錬金術が使える料理人などほとんどいませんから、私もアマンダさんから聞かされるまで知りませんでした」
冒険者の中にも武器を使ったスキルを使う人はいるんだって。
だからギルドマスターのお爺さんもスキルの事は知ってたんだけど、まさかお料理にまでそんなのがあるなんて知らなかったみたい。
おまけにお話ししてるルルモアさんもそれを知らなかったよって言ったでしょ?
だから余計にそれがどんなスキルなのかが気になったみたいで、お爺さんはルルモアさんの方に体を乗り出すと、どんなのスキルなの? って聞いたんだよね。
「名前までは解りませんが、発酵と醸造ができるスキルらしいですよ」
「まぁ料理に使うものだから仕方がないが、聞いただけではよく解らぬな。して、それはどの様な事ができるのだ?」
でもね、教えてもらってもお料理をしないギルドマスターのお爺さんはよく解んなかったみたい。
だからそれを使ったら何ができるの? ってもういっぺん聞いてみたんだ。
「聞いた話によると、発酵は帝城で食べられているような柔らかいパンを作れるようになるスキルのようです」
他にもできる事があるらしいけど、これが一番伝わりやすいよってアマンダさんが言ってたんだって。
でね、どうやらギルドマスターのお爺さんはその柔らかいパンってのを知ってたみたいで、その時はあれが作れるようになるのかってニコニコしながらうんうんって頷いてたんだけど、
「なるほどのぉ。してもう一つのスキルでは何が作れるのだ?」
「果物の果汁や穀物から、お酒を作り出せるようになるスキルらしいですよ」
でもね、その後にルルモアさんがもう一個のスキルのお話をしたら、大変な騒ぎになっちゃったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
かなり前からみそや醤油があったらなぁと言っていたルディーン君。そんな彼の望みをかなえるスキルがやっと登場しました!
でも、実際はそんなものより別の物づくりが優先させられそうな雰囲気ですがw
まぁ、ルディーン君はみそや醤油の詳しい作り方なんか当然知らないので、作りたいって思ってもすぐにできるもんじゃないんですけどね。




