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303 僕、危なくったって絶対ついてくからね


 次の日の朝になって、お父さんとお母さんが急に二人で幻獣をやっつけに行くから、僕はお兄ちゃんたちと一緒にお留守番しててって言いだしたんだ。


 なんでかって言うと、幻獣はあんまり居ないでしょ?


 だから、どんな攻撃をしてくるか解んないからなんだって。


「ルディーンの見立てではブラックボア程度って話だけど、相手は幻獣だからな。攻撃次第ではルディーンを守り切れないかもしれん」


「そうよ。だからね、昨日の晩、お父さんと話し合ってルディーンは置いて行こうって事になったの」


 でもね、僕はどうしてもついてかないとダメだって思うんだ。


「幻獣がどっかに行ってたらどうするのさ」


「それは……」


 昨日はあんまり移動してなかったけど、今日もおんなじとこにいるかなんて解んないよね?


 で、もしどっか行っちゃってたらさ、僕がいないと見つけられないかもしれないもん。


 だから僕、絶対一緒に行かないとダメなんだ。


「それにね、何してくるのか解んないならお父さんやお母さんがお怪我をするかもしれないもん。でも僕がいたら、すぐ治せるでしょ?」


「確かにその通りだけど……」


 お父さんもお母さんも、やっぱり僕には残ってほしいみたい。


 でも僕だってお父さんたちが心配だから、絶対ついてくんだ。


「困ったわね。まぁ、とにかく一度冒険者ギルドに行きましょう。そこでギルドマスターと話をして、ルディーンを一緒に行かせるべきかどうかの判断をしてもらえばいいんじゃないかしら」


 そんな僕を見て、置いてっても黙ってついて来ちゃうかも? って思ったお母さんは、一度ギルドマスターに聞いてみましょうって言いだしたんだ。


 それでもし行っちゃダメって言われたら、ちゃんとお留守番してなさいだって。


「しょうがないなぁ」


 でね、こう言ってお父さんもその話に賛成したもんだから、まずは3人で冒険者ギルドに向かう事になったんだ。



「いいんじゃないか?」


「えっ? 正気ですか、ギルドマスター。ルディーン君はまだこんなに小さな子供なんですよ」


 魔法の武器を貸してもらうからってルルモアさんと一緒にギルドマスターのお部屋に行ったんだけど、そこで僕を連れてってもいい? って聞いたらギルドマスターのお爺さんはいいよって言ってくれたんだ。


 でも、そしたらそれを聞いたルルモアさんが、ギルドマスターのお爺さんにそんな事したら危ないじゃないか! って怒ったんだよね。


「そうは言うが、ルディーン君が主張する通り、幻獣が移動していた場合は彼が一緒にいないと探すことはできぬだろう?」


「ですが、相手は幻獣ですよ? もし何かあったらどうするおつもりですか」


 お父さんたちが言ってた通り、幻獣はあんまり出た事が無いからどんな攻撃をしてくるのか冒険者ギルドでもあんまり解ってないんだって。


 だからね、もし魔法とかを使ってきたら離れてても危ないから、ルルモアさんは行っちゃダメって言うんだよね。


「魔法を使ってくるの?」


「解らないけど、そう言う個体もいるかもしれないって事よ」


「だったらさ、やっぱり僕が行かないとダメじゃないか!」


 魔法とかを使ってきたら、もしかすると普通の防具じゃ怪我しちゃうかもしれないでしょ?


 だから、やっぱり僕が行かないとダメじゃないかって言ったんだけど、


「ねぇ、ルディーン。幻獣が魔法を使ってくるなら行かないとダメってどういうことなの?」


 そしたらお母さんが、なんで? って聞いてきたんだよね。


 だから僕、魔法を使ってくるならマジックプロテクションをかけとかないと危ないよって教えてあげたんだ。


「マジックプロテクションとは何だ? ルルモアは知っておるか?」


「いえ、私もそれほど魔法に詳しいわけではないので。ねぇ、ルディーン君。それはプロテクションとは違う魔法なの?」


「うん! プロテクションは普通の攻撃から守る魔法でしょ? マジックプロテクションはね、魔法から守る魔法なんだよ」


 僕がマジックプロテクションの事を教えてあげたら、それを聞いたルルモアさんが大慌てでお部屋の外に出てっちゃったんだよね。


 でね、ちょっとしたら一冊の本を持って帰ってきたんだ。


「ギルドマスター。ルディーン君の言った通り、どうやら魔法の攻撃から身を守るマジックプロテクションと言う魔法が存在するようです」


 このイーノックカウにだって魔法使いはいるよね?


 でも魔法って呪文の発音を一生懸命練習しないと使えないから、いらない魔法はみんな覚えてないんだって。


 このイーノックカウの近くには魔法を使ってくる魔物がいないから、当然マジックプロテクションなんて覚えなくてもいいでしょ?


 だからギルドマスターのお爺さんやルルモアさんも、マジックプロテクションの事を知らなかったんだって。


「魔法を防ぐ魔法か。そんなものがあるとなると、安全に幻獣を倒すためにはやはりルディーン君は一緒に行った方がよさそうだな」


「私としては、やはり危険なのでルディーン君に行ってほしくないのですが……」


 ルルモアさんはやっぱり僕に行ってほしくないみたいだけど、それでもお父さんたちの安全を考えると僕が行くのを止めない方がいいって思ってくれたみたい。


「カールフェルトさん。幻獣と戦う時は、ルディーン君を離れた場所に離して、決して近づけないように注意してください。それが約束できないようなら許可はできませんよ」


 でもね、幻獣をやっつける時に僕が近くにいたら危ないでしょ?


 だからルルモアさんは、幻獣を見つけてもすぐに攻撃しないで、お父さん一人が前に出て戦ってねって言うんだよね。


「そんな事は言われなくても解ってますよ」


「ええ。ルディーンは私が責任を持って守りますわ」


 それを聞いたお父さんとお母さんは、ちゃんとそうするよって約束したんだ。


 でもね、一人で遠くから見てるなんてやだもん。


 だからお父さんにお願いしてみたんだ。 


「お父さん。僕、幻獣に近づかないから、遠くから魔法撃ってもいい?」


「遠くからか?」


 それを聞いたお父さんは、腕を組んでう~んって考えたんだけど、


「まぁ、近づかないなら大丈夫か。でも、まずは俺が近づいて一撃入れてからだ。そうしないと、幻獣がルディーンの所へ行ってしまうかもしれないからな」


「うん! でも、お父さん。一回叩いたら、一度横によけてよ? そうしないと、魔法がお父さんに当たっちゃうからね」


「あら、それならハンスには私たちがいる場所とは違う方向から近付いてもらえばいいじゃない。そうすればそんな事をする必要はなくなるでしょ?」


 そっか! そうすればお父さんがわざわざ動かなくって魔法が使えるもんね。


 お母さん、頭いい!


「確かにそうだな。それに、そうやって攻撃すれば幻獣の死角からルディーンが魔法で攻撃できるというメリットもある」


「それなら幻獣を見つけてからの大まかな立ち位置を、今のうちに決めて置かないといけないわね」


 幻獣を見つけてから、慌てて決めてたら見つかっちゃうかもしれないでしょ?


 だからお父さんとお母さんは、いろんな場面を想定して何個かの案を出し合ったんだ。


「よし。とりあえず今考えられる状況はこんなもんだろう」


「そうね。もしこのどれにも当てはまらないような特殊な状況なら一度引いて、その時にまた話し合って決めましょう」


 お話が終わってどうやって幻獣をやっつけるのかが決まったから、僕たちはギルドマスターのお爺さんたちに行ってきますして、3人で森へと出発したんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 危うく置いて行かれそうになりましたが、無事幻獣退治へ出発です。


 ただ、前に後書きで幻獣の弱点をうっかり書いてしまったので読む前らオチが見えてそうですが。


 と言うわけでみなさま、感想には予想を書かないようにお願いしますw


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― 新着の感想 ―
[良い点] そうか!索敵と魔法防御でアピールしてついていけるようにするのか! [一言] その場所で使わないから知識や技術は忘れられてしまったんですね。
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