閑話 お姉ちゃん凄い!って言ってもらえた日
キャリーナ視点。ルディーンがまだ4歳の頃のお話です。
「ねぇ、ルディーン。まほうって、おけがなおすのとあかりをつけるの、ふたつしかないの?」
「ううん。ほかにもあるよ。でも、まだつかえないのばっかりだけど」
毎日お姉ちゃんたちの荒れた指先をキュアって魔法で治して練習してるけど、そろそろ他の魔法も使ってみたいのよね。
だから思い切ってルディーンに聞いてみたんだけど、こんな答えが帰って来たんだ。
ルディーンが言うには魔法の塊を飛ばす攻撃魔法のマジックみちゃいる、じゃなかった、ミサイルってのが一応使えるらしいんだけど、もし魔法が成功しても小石を持って投げた方が強いくらいなんだって。
「あとね、おばけをやっつけるのとか、あいてをねかせちゃうってのとかもあるんだけど……」
「ねかせちゃうの? すごぉい! わたし、それおぼえたい!」
相手を眠らせてしまう魔法があったら、とっても便利だもん。だから私はそれを教えてって言ったんだ。
でも、ルディーンはダメって言うんだ。
「だって、つかえるってだけで、ぜったいかかんないもん」
「どうして?」
「まほうはね、まりょくのつよさでうまくつかえるかどうか、きまるんだ。ぼくやおねえちゃんだと、まだライトもあんまりつよくひからないし、おけがもうまくなおんないでしょ? だから、ねないぞっておもってるあいてにかけても、ぜったいかかんないんだ」
ルディーンが言うには、相手もいきなり寝かされちゃったら困るからって頑張るから私たちの魔力では掛かんないんだって言われて、私は引き下がるしかなかったんだ。
「そっか、じゃあほかには? ほかはなんかないの?」
「ほかかぁ」
ルディーンはそう言うと、ちょっとの間、何もないところを見ながら人差し指をちょこちょこ動かしてたんだ。
これはルディーンが考え事をする時の癖みたい。だって1人でいる時もよくやってるし、これをやってるといつもその後、何かに気付いたみたいに新しい事始めるからね。
で、しばらく考えた後、こう言ったんだ。
「やっぱりまじっくみちゃい……みしゃ、み・さ・い・るってのが、いちばんいいみたいだよ」
「さっきいってた、いしをなげるよりもよわいってまほう? そっか、いちどそれおしえて。やってみるから」
ルディーンは小石を投げるよりも弱いって言ってるけど、私の方がルディーンよりお姉さんなんだし、もしかしたらルディーンよりうまく使えるかもしれないもん。
と言う訳で、いつもの村の資材置き場に移動して、その攻撃魔法を教えてもらう事にしたんだ。
「つかいかたは、おけがをなおすまほうとおんなじだよ。まりょくをからだにじゅんかんさせて、あれにむかってまじっくみちゃ……じゅもんをいえばいいんだ」
ルディーンは資材置き場にあった薪の一本を持ってきて、それをちょっと離れた所に置くと私にそう言ったんだ。
ルディーンって、マジックミサイルってはっきり言えないんだよね。もしかすると、だから使っても石を投げるより弱いのかもしれないね。
そう思いながら私は、キュアを使う時みたいに体に魔力を循環させる。
「マジックミサイル!」
そして右手の人差し指で薪を指差しながら、大きな声で呪文を唱えたんだ。なんとなく、そうすると魔法がうまく当たるような気がしたからね。
すると体に流れていた魔力が指先に集まったような感じがして、
コン。
指先から光の粒が飛んでいって、薪に命中したんだ。
ただ、ルディーンが言うように、小石くらいの威力だったけど……。
「おねえちゃん、すごいや! ちゃんとあたったし、こいしをなげたときくらいつよかったよ!」
それを見て私はちょっとがっかりしたんだけど、横で見ていたルディーンは大興奮。
そんなルディーンに何でって聞いてみたら、
「だって、ぼくがこのまほうにちょうせんすると、ちゃんとまほうがつかえたときでも、こいしをなげるよりよわかったもん。なのにおねえちゃんは、あたったらちゃんとコンっていったし、まきもたおれてるでしょ? すごいや!」
って答えが帰って来たんだ。
そっか。自分が思ってたのより弱かったけど、あれでもルディーンより強い魔法が撃ててたんだ。
まだルディーンより魔法を撃つまでの時間はかかっちゃうしマジックミサイルの威力も凄く弱かったけど、この日私は初めて魔法でルディーンに勝つ事ができて、ちょっとだけ嬉しかったんだ。
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