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256 ヒルダ姉ちゃんはとっても強いんだよ


「それじゃあルディーン、ロルフさんの言う通り二つのポーションを調べて頂戴」


 バーリマンさんとお話してやる気になったお母さんが、僕にこう言って来たんだよね。


 でもさぁ、調べるってどうやるんだろう?


 そう思った僕は、ロルフさんに聞いてみたんだ。


「ロルフさん。僕、さっきお水と混ぜたお肌つるつるポーションを鑑定解析で調べたよね? でも、どんなポーションなのかってのしか出なかったよ」


「おお、これはわしが悪かったのぉ。ルディーン君は自力で鑑定解析のスキルを手に入れたのじゃから、その詳しい使い方を知るはずがない事を失念しておった」


 僕がさっき鑑定解析をかけたら、普通のより効果が落ちてるよってのが出てきただけだったんだよね。


 だからもういっぺんかけてもおんなじだよ? って思って聞いたんだけど、そしたらロルフさんは僕が鑑定解析の使い方を知らないからできなかったんだよって言うんだ。


「使い方? それが解ったらできるようになるの?」


「うむ。前に話した事は無かったかな? この鑑定解析というものは本来は斥候職が使うスキルじゃと」


 この鑑定解析ってのは、使うと調べようと思った事が解るスキルなんだって。


 だから、きちんと使えば本当にいろんな事が解るらしいんだよね。


「このスキルは名前が表す通り、あらゆるものを鑑定し、解析するものなのじゃ。じゃから、ただそこにあるものを解析するわしら錬金術師が使う解析と違って、いろいろな事ができるんじゃよ」


 ロルフさんはそこまで言った後、あごの白いお髭をなでながらちょっと考えてから、また話し始めたんだ。


「例えばそうじゃのう、もしこの部屋に脱出用の隠し通路や隠し部屋があったとするじゃろ? その場合、この鑑定解析で隠し扉がどこにあるか部屋全体を調べてみると、それが解ったりするんじゃよ」


「えっ! そんな事まで解ってしまうのですか?」


 ロルフさんのお話を聞いてたら、僕が何かを言うより先にお母さんがびっくりしてこんな事を言ったんだ。


 だからロルフさんは、うん、そうだよって。


 でね、そんなびっくりしてる母さんを見て、鑑定解析の事を教えようって思ったみたい。


「ルディーン君にはこの話をしてあるが、せっかくじゃし母親であるカールフェルトさんにも聞いておいてもらった方がよいじゃろう。ルディーン君が使う鑑定解析と言うスキルなんじゃが、実は秘匿スキルと言われるタイプのものなんじゃよ」


 ところが秘匿スキルって言葉を聞いて、お母さんはあれ? って顔したんだ。


「秘匿スキル? えっと、それは確か習得方法が国やギルドなどによって隠されているスキルの事ではないですか?」


 このお母さんのお話を聞いて、今度はロルフさんがびっくりしちゃったんだよね。


 なんでかって言うと、ロルフさんは秘匿スキルってものをお母さんが知らないと思ってたからみたい。


「よく知っておったのぉ。秘匿スキルというものは存在自体を秘匿されておるから、普通の者はその存在すら知らぬと言うのに」


「ああそれはですね、ルディーンの姉であるヒルダが昔、その秘匿スキルというものの一つを習得してしまったからなんですよ」


 これを聞いたロルフさんとバーリマンさんは、目を大きく開いて凄くびっくりしたんだ。


 そりゃそうだよね。僕だってヒルダ姉ちゃんがそんなスキルを持ってるって聞いて、ほんとびっくりしたんだもん。


「それはまことか!?」


「はい。まぁ、あの子の場合は戦闘や狩りなどで使うタイプのスキルなので、秘匿スキルと言っても偶然覚えてしまった人がヒルダ以外にもいるらしいのですが」


 ヒルダ姉ちゃんが覚えたスキルってのが何なのかは、冒険者ギルドのギルドマスターから他の人に絶対言っちゃだめだよって言われてるから僕たちにも話せなかったんだって。


 そっか、だから僕も知らなかったんだね。


「ただ、ヒルダがそのスキルを覚えたのはまだ12歳の頃でしたから、冒険者ギルドのギルドマスターも唖然としてましたわ」


 その秘匿スキルはね、ずっと前にAランクの冒険者さんがダンジョンでとっても強い魔物と戦ってる時に偶然覚えたんだって話だから、それをまだ小さいヒルダ姉ちゃんが覚えたって聞いて、みんなびっくりしたんだって。


 だからそれが周りに知られちゃうと大変だって事で、ヒルダ姉ちゃんには人前で使っちゃだめだよってお話しして、お母さんたちもそれから一度も人に話したことがなかったんだってさ。


「そう言うわけで秘匿スキルと言う言葉自体、さっき聞くまですっかり忘れていましたわ」


「そういう理由ならば知っておるのにも頷けるというものじゃが……ルディーン君だけでなく、その姉までもが自力で秘匿スキルを身につけておるとはのぉ」


「ヒルダ姉ちゃんはとってもすごいもん! そんなの当り前だよ」


 ヒルダ姉ちゃん、レベル限界も34で僕よりずっと高いんだよね。


 それに、ちょっと前に見てみたら、レベル上昇率UP大って言うドラゴン&マジック・オンラインの頃で言う取得経験値UP大とおんなじようなスキルを持ってたもん。


 お嫁さんに行かなかったら、きっとすごい冒険者になってたって僕、いっつも思ってるんだ。


「そうか、すごいのじゃな。ルディーン君がそこまでほめるという事は、それだけの力を持っているという事なのじゃろう」


「しかし、ご姉弟揃ってこれほどの才能をお持ちとは。お幸せな事ですわね」


「ええ。ただその分、気苦労も多いんですけどね」


 よく解んないけど、バーリマンさんとお母さんは、なんか二人してうんうんって頷いてるんだよね。


 だから僕は頭をこてんって倒して、ロルフさんの方を見たんだよ。


 そしたら、一応僕やヒルダ姉ちゃんのことをほめてるから大丈夫だよ、だって。


「さて、それでは話を戻すことにしようかのぉ」


 でね、ロルフさんは僕にそう言った後、手をパンパンって叩いて、みんなにそう言ったんだ。



「ところで、何処まで話したかのぅ?」


「鑑定解析を使えば、隠し扉さえも見つけることができると言う所までですわ」


「おお、そうじゃった、そうじゃった。では続きを話すとしよう」


 バーリマンさんからさっきどこまで話したのかを聞いたロルフさんは、その続きのお話をしてくれたんだ。


 その話によると、鑑定解析ってスキルは何を知りたいかを思い浮かべながら使うと、それを調べる事ができるスキルなんだってさ。


「とは言っても魔法や別のスキルで隠されているものは、その隠した者のスキルを上回るほどの力がなければ知る事は出来ぬ。じゃがのぉ、今回のようにポーションに含まれているものの成分や魔力の内包量などならば、調べるのはたやすいはずなのじゃ」


「そっか。そう言えばさっき、お水に混ぜたお肌つるつるポーションに鑑定解析を使った時は、ちゃんとお薬になってるかなぁって思ってたもん。それじゃあ、そのほかの事が解んなくっても当たり前だね」


 前にセリアナの実の油を鑑定解析で調べた時は、その中にいろんなのが混ざってるって解ったからお肌つるつるポーションが作れたんだよね。


 って事は、本当に何が知りたいのかを考えながら鑑定解析を使えば、このスキルでいろんな事が解っちゃうって事なんだと思う。


「どうやらルディーン君にも、何やら心当たりがあるようじゃな。このようにきちんとした使い方を知れば、この鑑定解析と言うスキルは無限の可能性を持つのじゃよ」


 ロルフさんはそう言うと、一度あごの白いお髭をなでた後にとっても怖い顔になってこう言ったんだ


「しかし、それだけにこの鑑定解析と言うスキルはとても危険なものじゃ。そしてじゃからこそ、良からぬ者に習得方法が伝わらぬよう秘匿スキルとされておる」


「そうだね、悪もんがこのスキルを覚えちゃったら大変だもん」


「そうじゃぞ、ルディーン君。じゃからこのスキルは他ではあまり使うでないぞ。そして前にも話した通り、その習得法は他の者には決して話してはならぬのじゃ」


「うん! 僕、絶対ないしょにするよ!」


 ロルフさんにこう言われて僕は、絶対誰にも言わないよってもういっぺん強く心に誓ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ルディーンの姉であり、スティナちゃんのお母さんでもあるヒルダは本来なら主人公になるようなチートキャラです。


 彼女の場合、レベルキャプが人より高く、その上スキルで成長速度も早いのですから普通の人ではまず辿り着くことのできないレベルキャプにも若くして到達できる可能性があるのです。


 正直言って、この世界では最強の部類に入るでしょう。


 因みにヒルダが覚えた秘匿スキルと言うのは剣に気(魔力)を乗せて前方の敵を一気に薙ぎ払うという強力なもので、戦場で使えば多くの敵兵を一撃で倒すことができるという凶悪なものだったりします。


 まぁ森での狩りでは一緒に行ったパーティーメンバーを巻き込んだり、周りの木や草を切ったり傷つけたりする迷惑な技なので、使っちゃだめだと言われたヒルダも別に反発しなかったため、今まで誰にも知られなかったという裏話もあったりますw


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― 新着の感想 ―
[良い点] スキルの使い方を教わってルディーン君の可能性が広がった! [一言] さすあね! 主人公役だったり主人公の母親役で子供をめっちゃ鍛えたりするのかな。
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