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205 ルディーンが言い出した馬車って、そんなに凄いものなの?


 私、シーラ・カールフェルトは、村にある簡易神殿を訪れていた。


 と言うのも昨晩、息子のルディーンが馬車に魔法をかけて移動時の負担を軽くすると言い出したので、本当にその様な事ができるのかどうかを司祭様にお聞きするためだ。


「ふむ。今までの事をかんがみて、ルディーン君の事だからいつかはと思っていたが……そうか、もうそこに気が付いたか」


 私は昨日の晩御飯の時の話をしたら、司祭様はきっと驚くだろうと思っていたのよ。


 ところが彼は、この頃ほんの少しだけ髪が伸び始めた頭をさらりと撫でながら、感心するようにそう言ったの。


「と言う事は、司祭様はルディーンが言い出した魔法の使い方をご存知なんですね?」


「ああ。実を言うとこれは貴族の、それも公爵や王族など、ごく一部の上位の者たちの馬車にのみ取り入れられている技術なんだ」


 私はもし知っているのならルディーンが口にした問題を、御者台に座るハンスだけがルディーンの魔法の恩恵を受けられないのを何とかできないかと聞くつもりだったのよね。


 ところが司祭様の口から出たのは、この魔法を馬車に使っているのはとんでもなく偉い方々だけだって言う話。


 これには流石にびっくりしてしまったわ。だってそんな大事だなんて、思いもしていなかったんですもの。


「大貴族様や王族の方々の馬車!? そのような大それた物をルディーンは再現してみようとしていたのですか?」


「いやいや、そうではない。ルディーン君が使おうと思っている魔法はごくありふれた物だからな。ただ、それを馬車で使おうと思った場合、その魔法使いにある程度の資質が必要となる。だからこそ、大貴族や王族くらいしか、この馬車を保有しておらぬと言うだけの話だ」


 司祭様が仰るには、この魔法って魔法使いなら誰でも使うことができるそうなんだけど、その魔法の板の上に載せられる重さは魔法使いの力量によって大きく変わるそうなの。


「人が使う魔法と言うものは大きく分けると魔法使いが使う異界語魔法やわしら神官が使う神聖魔法、そしてそのどちらもが使える一般魔法の3つに分かれておる。このフロートボードという魔法は異界語魔法だな。そしてこの系統の魔法は、ステータスにおける攻撃魔力の数値とその魔法使いの持つ総魔力量とによってその強度が変わってくるのだ」


 説明されても私にはよく解らないんだけど、どうやら魔法って使う人の能力によって効果が大きく違って来るみたいなの。


 そして、それに関係して来るのが攻撃魔力とか治癒魔力って言う数値と、その人が持ってる総魔力量とか言うものなんだって。


「ルディーン君の場合、クラウンコッコを一発のマジックミサイルで倒してしまうと言うから、攻撃魔力はかなりの物だと推測できる。それも一日で相当数を狩って来たというのだから、その総魔力量も並みでは無いだろうな。となれば、家族全員が乗っても何の問題も無いフロートボードを生み出せたとしてもおかしくは無い」


「そうなのですか?」


「うむ。わしは過去に帝都の中央神殿に勤めておった時があってのぉ、その頃、何人かの魔法使いと知り合うことができたが、それ程強力なマジックミサイルを撃てるものには殆ど出会えなんだ。ようするにルディーン君はそれ程優れた魔法使いと言う事なのだよ」


 私は魔法に付いてはあまり知らなかったから何の疑問も持たずにルディーンの魔法を受け入れているけど、司祭様から言うとかなり凄い事らしいのよね。


 それに今話に出ている馬車に使う魔法も、普通の魔法使いが使ったらせいぜい大人2~3人くらいの重さしか乗せられないそうなんだ。


「ここまで言えば解るだろうが、貴族の馬車は箱型の上に色々装飾がなされておるからかなり重い。それを持ち上げる程の力を持ったフロートボードを生み出すには卓越した魔力を持つ魔法使いが必要でのぉ。そしてそのような魔法使いはとても数が少ないし、何より総じて給金がとても高いのだ」


「なるほど。だから、そのような馬車を持っている貴族様も少ないのですね」


 そんな凄い魔法使いのお給金って、何と月に金貨数十枚もするらしいの。


 それに、そんな凄い魔法使いだからみんな気位が高くって、たとえお金があったとしても平民に仕えようとしないらしいわ。


「うむ。だが今回はその魔法を使うのが息子さんだから、その手の心配は無い。そう考えると、フロートボード用の馬車を用意するのも良いかもしれんのう。よし、わしの知識などたいした事は無いが、ここはその馬車を作る助けになろうではないか」


 でも、うちの場合はルディーンがその魔法を使ってくれるからお金の心配は要らないって事で、司祭様は大貴族様や王族の方々が使っている馬車の簡易版を作ってみてもいいんじゃないかって。


「いいのですか?」


「うむ。それに揺れぬ馬車などわしも乗った事が無いからのぉ。完成したらぜひとも体験してみたい」


 司祭様でも乗った事が無い馬車なんて、そんなものを本当に作ってもいいのかしら?


 私としてはそんな疑問が頭をよぎったんだけど、目の前の司祭様はすっかり乗り気みたいなのよね。


 こうなってしまっては、今更恐れ多いからと言って断るわけにもいかない。


「解りました。ではよろしくお願いします」


「此方こそ。よろしく頼む。だがそうなると、一度ルディーン君に詳しい話を聞かなくてはならぬな」


 と言う訳で、ルディーンの魔法を使って揺れなくする馬車を作る事になったんだけど、そしたら司祭様がこんな事を言い出したのよ。


 でも、一体何を聞くつもりなんだろう?


 魔法が使える事は解ってるのだから、後は司祭様が知っている方法で馬車を作ればいいだけだと思うんだけど。


「ルディーンに、ですか?」


「うむ。彼がお宅の家族全員を乗せる事ができるだけのフロートボードを生み出せる事は解ったが、それだけでは馬車まで浮かべることができるかどうか解らぬ。それに、もしそれができるとしたら今度はどれくらいの馬車にしたらいいのかを知らねばならぬからのぉ。一体どれくらいの重さまでなら載せる事ができるのか、調べてからでなくては、馬車の製作にはかかれぬからな」


 なるほど。確かに作ってみたけど、馬車が重くって殆ど人が乗れなかったら意味が無いものね。


 こうして私と司祭様は、その魔法がどれほどのものかを聞くために、ルディーンの元へと向かう事にしたの。


 読んで頂いてありがとうございます。


 お母さん視点のお話でした。次回からはまたルディーン君視点に戻ります。


 さて、本編で魔法の強度は攻撃(治癒)魔力と魔力総量(MP)によって決まると書いてありますが、実を言うとその他にも魔法ごとに関係して来るステータスがあります。


 その代表的なのが攻撃魔法に影響を与える知力だったり、治癒魔法に影響を与える信仰ですね。


 あと、敏捷が器用さを必要とするクリエイト魔法や創造魔法の成否や魔法発動に必要な魔力循環にかかる時間に関係していたりと、案外色々な要素が魔法には関わっているんですよね。


 まぁこんな知識はこの物語を読むのに何も関係ないのですがw


 以上、設定一口メモでした。


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