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177 いっぱいの卵とレーア姉ちゃんの涙

先日60万アクセスを超えました!


これも皆、いつも読んでくださっている皆さんのおかげです。


これからも細々と書き続けていくので、引き続きお付き合い頂けたら幸いです。



「どうしたの? ルディーン」


 レーア姉ちゃんから見て僕がよく解んない所を見ながら大きな声を出したもんだから、何が起こったのかって声をかけてきたんだ。


 だからさっきクラウンコッコをやっつけた事で、僕のレベルが上がったんだって教えてあげたんだよね。


 ところが、


「ふぅ~ん。で、それが上がると何かいい事があるの?」


 なんて聞いてきたんだ。


 だから僕は、これがどれだけ凄い事なのかを教えてあげようとしたんだけど……。


「あれ? 何かあったっけ?」


 そう言えば10レベルから11レベルに上がっても、そんなにいい事は無かった気がする。


 そりゃあさ、ステータスは上がるし、マジックミサイルは3発まで一度に撃てるようになるよ。


 でも次の12レベルと違って新しい魔法を覚えるわけじゃないし、ステータスだって1レベル上がったくらいじゃたいして変わんないんだよね。


「なんだ、何にも無いんじゃない。ならルディーンも手伝って。こっちは大変なんだから」


 結局レベルアップをして喜んでる暇もなく、レーア姉ちゃんに引っ張ってかれちゃったんだ。



「大変って、一体何なのさ!」


 確かにクラウンコッコは体が大きいから運ぶのは大変だって思うよ。


 でも重さを軽くする魔道具があるし、何より僕はみんなより体が小さいから運ぶのを手伝おうとしたってかえって邪魔になるだけだと思うんだよね。


 それに大きな魔物の場合は大体その場で血抜きをするから、余計に僕がやる事なんて無いと思うんだけど。


 そう思ってレーア姉ちゃんにそう聞いたんだけど、そしたら予想外の答えが帰って来たんだ。


「卵がいっぱいあるのよ。ルディーンも集めるのを手伝いなさい」


「卵? 巣に卵がそんなにあったの?」


 お姉ちゃんからそう言われた僕は、クラウンコッコって体が大きいから集めるのが大変なくらい一度にいっぱい卵生むんだって思ったんだけど、実はそうじゃなかったみたい。


「巣には4つだけよ。でもね、その周りにいっぱい卵が転がってたの」


 お姉ちゃんが言うには、クラウンコッコって毎日3つから5つのの卵を生むらしいんだ。


 でね、有精卵以外は普通そのまま放置して移動しちゃうらしいんだけど、今回は巣を作ってたから移動せずに近くに放置してたらしいんだよね。


「いくら無精卵でも流石に柔らかい草むらで生むみたいなのよ。だから探さないといけないんだけど、私たちはクラウンコッコを木に吊るして血抜きをしないといけないでしょ? だからその間にルディーンにはその卵を探して欲しいって訳」


「そっか。うん、解った! 僕、卵を探すよ」


 と言う訳で、捜索開始。間違って踏んづけたら割れちゃうから、僕は慎重に近くの草むらを見て回ったんだ。


 そしたらちょっと見難いところに最初の卵を発見!


「クラウンコッコの卵って、こんなに大きいんだ」


 見つけた卵は1個なんだけど、その大きさがお父さんのゲンコツより大きくてびっくり。


 でもあんなに大きな体になるんだもん。卵だってこれくらい大きくてもおかしくないよね。


 ただ、一日に3つから5つ生むって言ってたから近くに他のもあるだろうって思ったんだけど、そこにはこれ1個しかなかったんだ。


 だからレーア姉ちゃんに、1個しかなかったって言いにいったら呆れられちゃった。


「馬鹿だなぁ。一日に何個も生むからって、一度に生むとは限らないでしょ。その場所では1個しか生まなかっただけよ」


 お姉ちゃんが言うには、卵を守ってるクラウンコッコのいる場所には危ないから他の魔物も近寄ってこないらしいんだ。


 だから別の場所にも絶対あるはずだから、もう一度探してきなさいだって。


 と言う訳で、もう一度いろんなとこを探してみたんだけど、そしたら本当にいっぱいあったんだよね。


 その数8個。これは無精卵だけの数だから、巣にあったぶんとあわせると、ここにいたクラウンコッコは12個の卵を産んでたってわけだ。 



「へぇ、思ったよりあったのね」


 僕が一生懸命探した卵を一箇所に集めてると、血抜きをするためにクラウンコッコを木に吊るして大きな血管がある所に切り目を入れる作業を終えたお姉ちゃんたちが僕のところの寄ってきたんだ。


「一日平均4個として、3日程前からここにいたって訳ね」


「なら巣のもまだ卵のままって事か。よかった」


 ホッとした表情で卵を見つめるミラさん。


 自分の家で鶏を狩っているって言うマリアさんが言うには、普通の鶏だと生んでから20日くらいまでの卵ならちゃんと雛が孵るから、何個か有精卵がたまるまで卵を暖めないらしい。


 でね、さっきやっつけたクラウンコッコのメスは巣の上に居なかったから、多分まだ暖め始めてもいなかったんじゃ無いかなぁって言うんだ。


「まぁたとえ暖めだしていたとしても、3日以内なら大丈夫。割ってみてちょっと血みたいなものが混ざってても、普通の卵と同じように食べられるはずよ」


「そっか。でも、できたらそんなのも無いと嬉しいわね」


 やっぱり卵として食べるなら、ちゃんと黄身は黄身のままのを食べたいもんね。


 でもとりあえずさっき獲れた4個の有精卵はそんな事になっていないだろうって解って、僕たちはホッとしたんだ。



 午前中に獲ってた鳥の魔物と違ってクラウンコッコはとっても大きいから、とても持ち運ぶことなんてできるはず無いよね?


 だから僕たちは血抜きがちゃんと終わったのを確かめると、この二匹を一度森の外へ運ぶ事にしたんだ。


 でもさぁ、これが結構大変だったんだよね。


 あっ、大変だったのはクラウンコッコじゃないよ。確かに血抜きをしたって180キロくらいあるんだけど、軽くなる魔道具があるからそっちはそんなに大変じゃなかったんだ。


 むしろ苦労したのは卵の方なんだ。


 だって重さ自体はたいした事無いけど、そんなのを入れる袋とかは持ってきて無いから抱えて持ってくしかないんだもん。


 それに普通の鶏の卵に比べたら殻が固いけど、それでも落としたり強くぶつけ合ったりしたら割れちゃうから、一人で何個も持てないんだよね。


 だからいっぺんにクラウンコッコと卵を運ぶのはあきらめて、まずみんなで卵を運んでから、もう一度戻ってクラウンコッコを森の外に運ぶ事にしたんだ。


 この森は卵を食べる爬虫類や虫なんかを食べる雑食の魔物はいるけど、肉食の魔物はいないからね。


 で、なんとか両方を馬車置き場まで運んだ所で、これからどうするかのお話をしたんだ。


「あのさぁ、私思うんだけど、血抜きをしている間にみんなで卵探して、運んじゃわない? さっきの感じからすると往復してもまだ血抜き、終わってないだろうし」


「そうよね。思ったより血抜きに時間が掛かるみたいだし、そうした方がいいかも」


 ミラさんの言葉にマリアさんが頷く。


 さっきはレーア姉ちゃんたち4人でクラウンコッコを吊るしてたけど、重さを軽くする魔道具を使えば1人でも吊れるんだから、確かにみんなでやる必要は無いんだよね。


 そのほうが早く終わるからそうしましょうってみんなで話してたんだけど、そんな時、レーア姉ちゃんがちょっと怖い顔をして僕に聞いてきたんだ。


「ねぇ、ルディーン。森へ入るのに邪魔なクラウンコッコって、後どれくらいいるの?」


「えっとねぇ、多分後4組はやっつけないと、かなり邪魔になっちゃうと思うよ」


 本当は他にも邪魔なクラウンコッコの番はいるんだけど、とりあえずこの4組をやっつければ大きく迂回する必要はなくなると思う。


 だからこれからの事を考えると、この4組だけはやっつけておいた方がいいって思うんだよね。


 でね、それを聞いたレーア姉ちゃんは、ちょっと考えた後にこんな事を言ったんだ。


「そっか。なら最低でもその4組は狩らないといけない訳ね。じゃあさ、血抜きや卵を運ぶのは私たちだけでやっちゃうから、ルディーンはその4組を一人で狩ってきてよ」


「ちょっとレーア! あなた一体、何を言い出すのよ」


 これに驚いたのはマリアさん。


 そりゃそうだよね。さっきは僕が一角ウサギを狩りに1人で森に入っただけであんなに怒られたんだもん。


 それなのに、今度は1人でもっと強いクラウンコッコを狩ってきてって言い出したんだから、そりゃあびっくりするよ。


「そうよ。流石にルディーン君1人で森を歩かせるのは危ないわ」


「いくら1人で狩れるからって、私もそれはちょっとどうかと思うわよ」


 そしてエイラさんやミラさんもマリアさんの意見に賛成して、レーア姉ちゃんに文句を言ったんだよね。


 でもね、レーア姉ちゃんはそれでもって言うんだ。


「そっか。そうだよね。でも、さっきみたいにみんなで行動してたらあと4組なんて絶対狩れないよ?」


「それなら今日中に狩らなくてもいいじゃない。村の大人の人たちにも手伝ってもらえば、もっと安全に狩れるでしょ?」


「それはそうだけどさ、その時の狩りにルディーンをつれて来るのを村の大人たちが賛成すると思う?」


 レーア姉ちゃんのこの一言に、マリアさんは黙っちゃった。


 そうだよね。みんなやうちの家族なら僕が魔法で狩るのが一番早いって解ってくれるだろうけど、他の大人の人たちは僕が狩りに参加するって言ったら絶対反対すると思うんだ。


 だって卵を守ってるクラウンコッコは大人でも危ないからって手を出さないようにしてるんだから、そんな所に僕みたいな小さな子を連れて行こうなんて考えるはず無いからね。


「さっき狩ったクラウンコッコを見て思ったの。あんな風に巣から離れず、ずっと周りを警戒して守ってるくらいだもん。普通の群れにいるクラウンコッコならある程度攻撃すれば何匹かは逃げてくれるだろうけど、卵を守ってる時は例え瀕死になっても最後まで必死に抵抗して来るはずよ。そんなのを相手にしたら村の大人たちだってきっと大勢怪我をするに決まってる。でもルディーンなら安全に狩れるのよ? そう考えたら、やっぱりこの4組だけは絶対今日中に狩らなくちゃダメ」


 ちょっと涙を浮かべて、そう言うレーア姉ちゃん。


 そりゃあレーア姉ちゃんだって、僕1人で行かせたくなんかないって思ってるよ。


 でもそれが一番安全にクラウンコッコを狩る事ができるって解ってるから、お姉ちゃんはこんな事を言い出したんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークが560を越えた上に総合ポイントも2000を超えました! 本当にありがとうございます。


 もしこの話が気に入ってもらえたのなら、お気に入り登録や評価を入れていただけると嬉しいです。


 感想共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。


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[一言] なんか物凄く嫌な予感その卵ほぼ有精卵のような気がする
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