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157 茶色いカキ氷とお父さんたちの苦労


「お母さん、どうしよう。シロップが熱すぎてこのままじゃ使えないよ」


「熱い? えっと、なにに使うのか知らないけど、焼肉パーティーまでにはまだ時間があるから、それまでには冷めるから大丈夫よ」


 どうやらお母さんは今作ってるお菓子のことを、焼肉パーティーの時に食べる為に作ってるんだって思ってたみたいなんだよね。


 だからそれを聞いた僕は、慌てて違うよって言ったんだ。


「これは焼肉の時食べるんじゃなくて、休憩の時にお姉ちゃんたちと食べるんだよ」


「あらやだ。これって焼肉パーティーの時に出すお菓子に使うものじゃなかったの? 私ったら、てっきりそうだと思い込んでこんなに作ってしまったわ」


 そっか、だからあんなにいっぱいシロップを作ったんだね。


 確かにうちだけじゃなくって近所の人たちも来るんだから、みんながかき氷を食べるのならあれくらいシロップがいるもんね。


 いっぱいシロップを作った理由は解ったけど、でも今はこの熱々のシロップを何とかしなきゃいけないんだよね。


「ねぇ、お母さん。こんなに熱いと使えないんだ。どうしたらいいと思う?」


「そうねぇ。なら小さな器にとって、氷の入った水で冷やせばいいと思うわよ」


 そっか。僕、お鍋にいっぱい入った熱々のシロップをどうやって冷やせばいいんだろうって考えてたけど、よく考えたら今いるのはほんのちょっとだもんね。


 ならそれだけを冷やせばよかったんだ。


「さすがお母さんだ。頭いい!」


「ふふふっ、そうでも無いわよ」


 お母さんはほっぺにてを当てて笑ってたけど、こう言う事にすぐ気がつけるって言うのはすごい事だと思うんだ。


 だから僕は、お母さんは凄いんだってちょっと嬉しくなったんだよね。



 お母さんに言われた通り、小さな入れ物にシロップを入れて砕いた氷を入れたお水で冷やしてたら、レーア姉ちゃんがキャリーナ姉ちゃんとスティナちゃんを連れて台所まで帰って来た。


 で、そのタイミングでヒルダ姉ちゃんも包丁やまな板なんかの洗物が終わったって事で、休憩する事になったんだ。


「ねぇ、ルディーン。スティナちゃんを置いてなんかやりに行ったってことは、冷たいお菓子を作ったんだよね?」


「ルディーンにいちゃ、おかし! ちべたいおかしは?」


 僕が甘氷の代わりのお菓子を作るために作業部屋に行った事をを知ってる二人は、早くそれを出してって大合唱。


 それにその話をここに来るまでに聞かされてたレーア姉ちゃんも一緒になって早くって言うもんだから、台所は途端に大騒ぎに。


「あら、ルディーン。また新しいお菓子を作ったの?」


 そのうえさっきまで洗い物をしてたヒルダ姉ちゃんまで加わったもんだから、みんなの目は僕に釘付けだ。


 そんな訳で、僕は早速カキ氷を作る事にしたんだ。


「お母さん。氷を削るから、入れる器出して」


「ああ、そう言えば氷を削るって言ってたわね。よく解らないけど、どんな器がいるの?」


「えっとねぇ、僕が片手で持てるくらいので、お皿じゃなくスープとかを入れても大丈夫な奴だよ」


 僕がそう言うと、お母さんは丁度いいくらいのおわんを渡してくれたんだ。


 だからそれをカキ氷機においてから、氷とハンドルをセットして準備完了。


 シャリシャリ。


 僕がハンドルを回すと中に入った氷が削られて、器にカキ氷がどんどんたまっていったんだ。


「へぇ、氷を木屑みたいにしてるのか。面白いわね」


 それを見たヒルダ姉ちゃんがそんな事を言っているうちに、最初のおわんいっぱいのかき氷が完成した。


「お母さん、これにさっきのシロップをかけて。最初はスティナちゃんね」


「解ったわ」


 お母さんは僕から受け取ったおわんに入ったかき氷にシロップをかけると、それをスティナちゃんに渡した。


「やったぁ!」


「いきなりいっぱい食べると頭が痛くなっちゃうから、ちょっとずつ食べてね」


「あい!」


 一度にいっぱい頬張ったらだめだよって言ったら、スティナちゃんはちゃんとちょっとずつ食べてくれて、


「ルディーンにいちゃ、これ、ちべたくておいしいね」


 そう言いながらにっこり。


 よかった。気に入ってもらえたみたいだね。


 シャリシャリシャリシャリ。


 そんなスティナちゃんの表情に気を良くした僕は、どんどん次のカキ氷を作っていったんだ。


 そしたら、


「痛ったぁ~い」


「何やってるの。ルディーンもさっき言ってたじゃない。これは甘氷みたいなものなんだから、一気に食べたら頭が痛くなるのなんて当たり前でしょ」 


 レーア姉ちゃんが一気に食べて頭が痛くなったらしくて、それを見たヒルダ姉ちゃんに怒られてた。


 もう! お姉ちゃんなのに何やってるんだよ。スティナちゃんがまねしたら大変じゃないか。



 こんな感じでどんどん氷を削って行くうちに全員の手にカキ氷が渡ったから、最後に僕の分を削って一旦終了。


 まだ氷は残ってるけど、僕も食べたいからね。


 お母さんもカキ氷を食べてたから自分でシロップをかけたんだけど、そしたらカキ氷がちょこっと茶色くなっちゃった。


「そう言えばお母さんが、ちょっと焦がしちゃったって言ってたっけ」


 僕が魔石から作ったお砂糖は元々真っ白じゃなくて、ほんのちょっとだけ茶色いんだけど、このシロップはそのお砂糖よりもっと茶色いんだよね。


 でも、真っ白のカキ氷に真っ白なシロップをかけたら何にもかかって無いみたいだもん。


 だからこの方がいいよねって思った僕は、その色の付いた氷を木のおさじで掬ってぱくり。


「わぁ~このシロップ、甘いだけじゃないや」


 僕はただのお砂糖の味を想像して食べたんだけど、そしたらとってもいい香りがしたんだ。


 そう言えばお砂糖を焦がして茶色くするとちょっと苦くなるけど、いい香りになって美味しくなるんだっけ。


 僕は考えていた以上の味に大満足。そしてお母さんやお姉ちゃんたち、それにスティナちゃんもこのカキ氷が気に入ったみたいで、みんな嬉しそうに食べてたんだ。




「ただの氷を削っただけのものがこんなに美味しいなら、これから暑くなるんだから氷をいっぱい作らないといけないわね」


 この後、焼肉パーティーの準備のために早めに来た近所のおばさんたちにもお母さんがかき氷を作って食べさせたら、こんな話になったんだ。


 でもさ、氷をいっぱい作れる冷凍庫って、作ろうって思ったらかなり大きな魔石がいるんだよね。


 そう思った僕は、お母さんたちにそう言ったんだけど、


「あら、それならブラックボアの魔石で作れるくらいのをいっぱい作ればいいじゃないの」


「いいえ、それならいっそブラウンボアを狩って、その魔石で作っちゃいましょう。ルディーン君ならすぐに見つけられるんでしょ?」


 そしたらお母さんと、そのお母さんたちと一緒にパーティーを組んでるエリサさんがこんな事を言い出したんだよね。


 そんなお母さんたちの話を聞いてたお姉ちゃんたちや近所のおばさんたちもその話に賛成して、どうせなら魔石や材料、それに手間賃としていろんな物をうちにくれる代わりに、大きな冷凍庫を一つだけじゃなくってちっちゃなのも何個か作ってって言い出したんだ。


 こうして僕は、カキ氷用の氷を作るおっきな冷凍庫や、お風呂場や集会所なんかの村の人たちが集まる場所に置くちっちゃな冷凍庫や冷蔵庫を何個か作る事になっちゃった。


 そして。


「ルディーン。これから何かを思いついた時は、作る前に一言相談してくれ」


「うん、そうする」


 お父さんや近所のおじさんたちは、その魔道具を作るのに必要な魔石を集める為に何度か森へと行かされる羽目になったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 お肌つるつるポーションではクラウスさん1人が酷い目に合いましたが、今回は多くの村の男集が酷い目に。


 普通ならこれで懲りそうな物ですが、ルディーン君の料理用魔道具作りはこれからも続きます。


 お父さんたち、不幸。


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