155 焼肉パーティーの準備と冷たいお菓子
そして次の日。
僕たちは今日のお昼すぎからお庭でやる焼肉パーティーの準備を朝からしてたんだ。
と言うのも、うちのみんなはもう内臓のお肉がおいしいことが解ってるから気にせず食べるけど、もしかしたら近所の人の中には気持ち悪がって食べない人がいるかもってお母さんが考えたからなんだ。
だから初めはうちのお庭に石を積んで作ってある焼肉用のかまどに鉄板を置いて、そこで全部焼くつもりだったんだけど、やっぱりもう一個かまどを作って普通のお肉と内臓のお肉は違うとこで焼くことになったんだ。
と言う訳でお父さんとお兄ちゃんは村の中を流れてる川まで、かまど用のおっきな石を拾いに出かけてる。
で、僕はと言うと、
「ルディーン、そこのお肉取って」
「これでいいの?」
体が小さくておっきな石を運べないからって、お母さんたちのお手伝いをしてるんだ。
急に普通のお肉も焼くことになったけど、この間お兄ちゃんたちと狩りに行った時のがいっぱいあるから量自体は別に心配しなくてもいいんだ。
でもお庭で焼こうと思ったらおっきな塊のままじゃダメだから、みんなが食べやすいくらいの大きさに切らないといけないし、かまどに置く鉄板も1枚しかないから普通のお肉は鉄串に刺しておかないと焼くことができないんだよね。
おかげで僕んちの台所は大忙し。
お母さんとレーア姉ちゃんはずっと包丁を持ってお肉を切ったりお野菜を切ったりしてるし、キャリーナ姉ちゃんはその切ったお肉を串に刺すお手伝いをしてるんだ。
で、僕はと言うと、お母さんたちが切ったお肉やお野菜をキャリーナ姉ちゃんのところに運んだり、言われた塊のお肉をお母さんたちのところに持っていったりするお手伝いだ。
でもこれが結構大変。何せ運ぶのは僕一人なのに切るのはお母さんとレーア姉ちゃんの二人だからあっちへ行ったりこっちへ行ったりと大忙し。
それにこの頃はちょっと暑くなってきたから、僕は汗びっしょりになりながらお手伝いを続けたんだよね。
「おばあちゃん。スティナ、きたよぉ~」
そんな時、台所にスティナちゃんが駆け込んできたんだ。
「お母さん。準備が大変なんだって? 手伝いに来たわよ」
そして続いて入ってくるヒルダ姉ちゃん。
どうやらお父さんたちが石を拾いに行く時に、ヒルダ姉ちゃんちに寄って手伝ってって頼んでくれたみたいなんだよね。
「あら、いらっしゃい。助かったわ。それじゃあ、お肉を切るのを手伝ってくれる? レーアはヒルダに包丁を渡してお肉を運ぶ役をルディーンと交代して」
ヒルダ姉ちゃんがお手伝いに来てくれたと言う事で、レーア姉ちゃんが切る係りから僕と一緒にお肉を運ぶ係りになった。
おかげでさっきまでよりはちょっと楽になるなぁ、なんて思ったんだけど、
「それとルディーンはちょっとお休みね。疲れたでしょ」
なんとお母さんから、休んでなさいって言われちゃったんだ。
「なんで? 僕、まだ頑張れるよ」
「何言ってるの? そんな汗だくになるまでずっと重いお肉を運んでたんだから一度休まないと、焼肉を始めるころには疲れて寝ちゃうなんて事になるわよ」
だから僕はまだ頑張れるよ! って言ったんだけど、後で疲れて寝ちゃうからダメだって。
「そうそう。それに早く着替えてこないと。そんな水を頭から被ったような恰好でいたら風邪を引いてしまうわよ」
おまけにヒルダ姉ちゃんにまでこんなこと言われて、台所から追い出されちゃったんだ。
う~、僕、まだ頑張れるのに。
でも追い出されちゃった以上、このまま戻ってもまた追い出されちゃうだけだから、僕は一旦部屋に戻ってお着替え。
で、さっきまで着てた服を川から汲んできてあったお洗濯用の水で軽く洗ってから、お庭に干してたんだ。
そしたらそこにキャリーナ姉ちゃんがスティナちゃんと一緒に来たんだよね。
だからどうしたの? って聞いたら、キャリーナ姉ちゃんも今まで頑張ってお肉を串に刺してたから、ちょっと休憩しなさいって言われたんだって。
「あれだけ作っとけば、バーベキューの最初の内は十分持つから、後は近所のおばさんたちが来たらみんなでやるから私も休みなさいだってさ」
キャリーナ姉ちゃんが言うには今までレーア姉ちゃんが手伝ってたし、ヒルダ姉ちゃんも来てくれたからもうすぐお肉は切り終わるらしいんだよね。
そしたら休憩するから、それまで僕と一緒にスティナちゃんの相手をしててねって言われたそうなんだ。
「その時は声をかけるから、みんなでお茶を飲むって言ってたよ」
「そっか。ならパンケーキを焼いたほうがいいね」
みんないっぱい頑張ったし、お茶を飲むなら甘い物も一緒に食べたいんじゃないかなぁって思ったんだけど、僕がそう言ったらキャリーナ姉ちゃんに止められちゃったんだ。
「台所はすっごくあつかったから、あったかいパンケーキはみんな食べたくないんじゃないかなぁ」
「そっか。確かにこの頃はあったかくなってきたし、焼きたてのパンケーキを食べたら暑くなっちゃうかもしれないね」
まだ暑いって言うほどではないけど、あれだけ動き回った後なんだから確かにあったかいお菓子を食べたいなんて思わないかもしれない。
それに後で焼肉を食べるのに、今からパンケーキを食べたらお腹いっぱいになっちゃうもん。やめといた方がいいね。
「そうだ! ルディーン。甘氷を作ってよ。れいぞうこってやつの上の方で氷を作ってるんだから、甘氷も作れるでしょ?」
「無理だよ。朝からなら作れたけど、今から冷蔵庫の上で冷やしたって凍るはず無いじゃないか」
キャリーナ姉ちゃんが言ってる甘氷ってのは、果実水や牛乳にお砂糖を入れて甘くしたやつを凍らしたアイスキャンディーのような物の事なんだ。
うちには僕が作った簡易魔道冷蔵庫があるから材料と時間さえあればできない事も無いんだけど、今から作ってって言われてすぐにできるものじゃないんだよね。
それにもし作ろうと思ったら、売ってるのみたいに棒に刺したやつを作れるようなちゃんとした型を作ってからじゃないとダメなんじゃないかなぁ?
だって木の器に入れて凍らせても、いつも使ってる木のさじじゃ硬くて食べられないからね。
「なんだ、魔道具なのに入れてすぐ氷になるんじゃ無いのか」
「そりゃそうだよ。魔法で凍らせてるんじゃなくて、中を魔石の力で凍るくらい冷たくしてるだけなんだから」
一応物を凍らせる一般魔法はあるみたいなんだけど、それってステータスに灰色の文字で書かれてる場所から考えると18レベルくらいにならないと使えないみたいなんだよね。
これは多分、物を凍らせるのも相手を凍らせる攻撃魔法も同じくらいの攻撃魔力がいるからなんじゃないかな? って思ってるんだ。
そして当然まだ10レベルの僕がその魔法を使えるはずが無いんだから、今すぐに甘氷を作るのは絶対に無理なんだよね。
「ねぇルディーン、なんとかならないの?」
「無理だよ。他にも冷たいお菓子はあるけど、時間が無いと凍らないんだから作りようが無いもん」
どんな物を作るにしても時間が無くちゃどうしようもないんだよね。
お母さんたちはもうすぐ休憩するって言ってるんだから、それこそとっても大きな魔石を使ったすごく冷たくなる冷凍庫でもなければ、それまでに凍らせるなんて絶対に無理だ。
「そっか。じゃあ氷でなんかを冷たくするくらいしかできないね」
「えっ、氷で?」
「うん。今からこおらせるのができなくても、今入ってる氷はあるんでしょ。ならそれでなんかを冷たくするしかないじゃない」
キャリーナ姉ちゃんに言われて僕は初めて気が付いたんだ。
そうだよ。今からじゃ凍らせる事はできないけど、うちの冷蔵庫にはずっと氷が入ってるじゃないか。
「お姉ちゃん、スティナちゃんをお願い。僕、ちょっと作ってくる」
「作ってくるって、なにを?」
「冷たいお菓子を作る道具だよ」
氷はあるんだ。だったらあれが作れるじゃないか。
いろんな味は作れないけど、とりあえずお砂糖味のならできるもん。
そう思った僕は、急いでいつも魔道具を作っている部屋へと駆け込んだんだ。
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