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149 お湯とポーションと時間切れ


「如何なさいました? 旦那様」


 僕はロルフさんのお話を聞いて、そうだよねって感心してたんだけど、そしたらストールさんが急にこんな事を言い出したんだよね。


 だからどうしたんだろうって思ってそっちを見たんだけど、そしたらバーリマンさんとロルフさんがとってもびっくりした顔で僕の方を見てたんだ。


「なに? どうかしたの? 僕、何か変な事した?」


 何でこんな事になってるのか解んない僕は、二人にどうしてそんなにびっくりしてるの? って聞いてみたんだ。


 そしたら、ロルフさんが一言、


「お湯?」


 って言ったんだよね。


 お湯? ロルフさん、お湯が欲しいの?


 僕はそれを聞いてそんな風に思ったんだけど、どうやら違ったみたい。


 だって、続けてバーリマンさんがこう言ったからね。


「お湯で溶かして使ってるって……ポーションを?」


「えっと、うん。お母さんはそうしてるって言ってたよ」


 なんだ、お肌つるつるポーションをお湯に溶かして使ってるって事に驚いてたのか。


 そりゃそうだよね。だって僕もその話を聞いたときはびっくりしたもん。


「ギルドマスター。ポーションって水やお湯で薄めても効果があるのですか?」

 

「いえ、そんな話は聞いたことがありません。だから驚いているのですよ」


 ところが、僕が考えていた以上にお母さんたちがやってる事は非常識だったみたいなんだよね。


 バーリマンさんが言うには、ポーションって材料として使われた薬草の中にある薬の成分に錬金術師が魔力を注ぐ事で薬効を強化してるものなんだって。


 だからこそ、元の薬草の濃さってのが大事なんだってさ。


「そもそもポーションと言うのは同じ等級の場合、薬効に含まれている魔力の量によって品質が変わるの。だから多少魔力が少なくても中に含まれる薬効成分が規定値内なら効きの良し悪しは別として、効果は出るわ。でも、水やお湯で薄めるとなるとそうはいかないのよ」


「そっか。お湯で薄めるって事は薬効成分が薄まるって事だから、ポーションとしての効果が出なくなるってことですもんね」


 なるほど。だったらお湯で溶いたりしたらポーションの効果が発揮されなくなっちゃうはずだもん。


 でもそんな使い方をしてたのに、一応とは言え効果があったとしたらそれはびっくりしてもおかしくないよね。


「して、ルディーン君。お湯でポーションを溶かして使っていると言う話じゃが、それはどのようにしておるのじゃ?」


「どういう風にって言われても、お母さんたちはお風呂で使ってるから知らないよ。だって僕、お兄ちゃんたちと一緒にお風呂入ってるからね」


 僕はお母さんからこんな風に使ってるんだって聞いてはいけるけど、実際に使ってるところを見た事がある訳じゃないからどうやってるのかなんて解んないんだ。


 だからどんな使い方をしてるの? って聞かれても困っちゃうんだよね。


「そうか。それでは実際にやってみるしかないのぉ」


 僕に聞いてもわかんなかったから、ロルフさんとバーリマンさんは実際にお肌つるつるポーションをお湯に溶かしてみる事にしたみたい。


 ただこの実験、一つだけ問題があったんだよね。


「溶いてみたのはいいのじゃが……これを塗ってみた所で、今すぐに結果が出るわけではないのぉ」


「ええ。それにルディーン君の話では、このお湯でといた物はポーションによって綺麗になった肌の状態を保つ効果があるだけのようですから、これだけ塗ってもあまり効果は認められないかもしれませんね」


 そう。このお湯で解いたお肌つるつるポーションは肌の状態が元に戻るのを防ぐだけで、これによってお肌が綺麗になるわけじゃないんだよね。


 だからこの方法が正しいかどうかは、まずお肌つるつるポーションを使ってお肌を綺麗にしてからじゃないと解んないんだ。


「まぁ折角作ったものを無駄にする事もあるまい。入れ物に入れて保管すればよかろう」


「だめだよ。お湯で溶かしたのはすぐに使わないと、冷えてしばらくしたら悪くなっちゃうんだ」


 でも捨てるのはもったいないからってロルフさんは取っておくつもりだったみたいだけど、どうやらこのお湯で溶いたポーション、魔力が薄くなったせいなのかセリアナの実と同じくらい腐りやすくなってるんだよね。


 だから次の日くらいになると、もう臭くなって使えなくなっちゃうらしいんだ。


 そのことを話すと、ロルフさんはすごく残念そうな顔をしたんだよね。


「そうか。それではこのお湯で溶くという方法は、本来のポーションが手元に無いと意味の無い技術と言う事なのじゃな」


 お湯で溶いたポーションの話を聞いて、どうやらロルフさんは効果が下がったお肌つるつるポーションを作るのに役に立つんじゃないかって思ってたみたいなんだ。


 でも腐って使えなくなっちゃうなら、そんな風に使うこと、できなくなっちゃうもんね。


 だからこのお湯に溶いて使うって言う方法は、あまり意味が無い情報だったんだねってロルフさんは考えたみたい。


 そんな訳で、この話はここで終わりそうになったんだけど、ここでペソラさんが言った一言で状況が変わっちゃう事になるんだ。


「でも不思議ですよね。他のポーションは水で薄めたりしたら効果が無くなってしまうのに、その肌に塗るポーションは素人が適当にお湯に溶いて使っても効果があるんですから」


「「えっ?」」


 多分ペソラさんは特に何かを考えてしゃべった訳じゃないと思うんだよね。


 でも、その口から出た言葉は、誰も気が付いてなかったこのポーションの他には無い特徴を捉えてたんだ。


「うむ、確かにその通りじゃ! 錬金術師がポーションの効果が無くならぬようにと混ぜる量を測りながら慎重に薄めた訳ではなく、ただお湯で溶いただけであるにもかかわらず効果を保っておると言うのは他のポーションではありえぬ」


「そうですね。ルディーン君の話からすると、お湯に溶いたものは本来の効果は出ないものの一定の効果は発揮されていると言うのですから、その理由を調べれば現在よりも効果の下がったポーションを誰でも作れるようになるかもしれません」


 効果が下がっても使えるポーションだって言うところに気を取られて、薄めたのに効果があるっていう所に気が行っていなかったロルフさんたち。


 ところが思っても居ない所からの新しい意見を聞いて、その事に気が付いたロルフさんとバーリマンさんは大興奮。


「ルディーン君。すまないが、これからこの薄めたポーションを調べるのに付き合ってはもらえぬか?」


 早速その研究始めようと、ロルフさんが僕にそう頼んできたんだ。


 でも、それを止めた人がいたんだよね。


「旦那様。そろそろ夕刻となります。ルディーン様は親御さんと夜のお食事の時間までに帰宅するとお約束されていらっしゃるのですから、これ以上お引止めするのはいかがな物かと」


 ロルフさんにそう意見したのはストールさん。


 僕がお母さんから晩御飯までには帰ってきなさいよって言われてる事を知ってるストールさんは、このままロルフさんたちの研究のお手伝いをしてたらそれまでに帰れないから、ダメって言ったんだ。


 でもそれを聞いたロルフさんとバーリマンさんは、


「いや、もう少しだけでも」


「そうです。せめてお湯で溶いた後、どの成分が効果を保っているかだけでも、鑑定解析で調べてもらいたいわ」


 そう言って、なんとか僕に手伝って欲しいって言ったんだよね。


 でもストールさんはそんな二人に、絶対ダメって言うんだ。


「わたくしはルディーン様が使えると言う鑑定解析がどのような物か存じません。ですが、それは一度行使しただけで全ての事が解るような便利なものなのでしょうか?」


 ストールさんにそう訊かれたロルフさんとバーリマンさんは、黙っちゃったんだ。


 多分一回鑑定解析しただけじゃ、あんまりいろんな事が解んないんじゃ無いかって、二人も思ってるんだろうね。


 はぁ。


 そんな二人を見たストールさんは、小さくため息をついた後に、こう質問したんだよね。


「これまでルディーン様とご一緒してわたくしが感じた印象を申し上げますと、時間をかけて調べなければならない状況になった場合、この方はお二人の手伝いをそのまま続けようとするのではないでしょうか?」


「確かに、ルディーン君ならそうするじゃろうな」


 ロルフさんの答えに、満足げに微笑むストールさん。


「それが解っているのでしたら、今回はおやめになられた方が宜しいかと」


 ストールさんの話を聞いて、何にも言えなくなっちゃったロルフさんとバーリマンさん。


 結局この一言で、このお湯に溶かしたお肌つるつるポーションの実験はこれでおしまいになったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 とうとう話のストックが尽きてしまいました。


 なんとか150話までは毎日更新しますが、それ以降はとても今のペースでアップする事ができません。


 ですのから、すみませんが151話以降は週に3~4回更新になります。


 内訳としては月水金は毎週必ずアップして、出張などで余裕が無い週以外は土曜も更新するつもりです。


 更新速度が少し遅くなってしまいますが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。

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