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148 研究に終わりは無いよね……あれ?


「これはまた、見慣れぬ形の器じゃのぉ」


「そうですね。ですが実験の内容から考えると非常に理に適っている形ではありますよ」


 僕が作った実験用の入れ物を手に持って、こんな事を言い合うロルフさんとバーリマンさん。


 話を聞くと、どうやら二人は筒状になるように銅板をくっつけた後、片方の端っこをつぶした後に折り曲げて作るような入れ物を想像してたみたいなんだ。


 それに対して僕が作ったのは小さな試験管みたいな形。


 これがもらった銅板を加工して作るっていうのならロルフさんたちが考えてるような形にしないといけないかもしれないけど、魔法で作るんだから元の形なんて関係ないんだよね。


 だから僕は、実験をする入れ物で細長いものといったらこの形だよねって頭に浮かんでた試験管にしたんだ。


「じゃが、確かにこれは理想的な形と言えるじゃろう。薬を入れる口は縁が丸くなっておるからここで怪我をする心配が無い。それに先端が丸くなっておるからのぉ。これならば実験が終わった後に、この器具を洗うのも楽じゃろうて」


「そうですね。先端をつぶして作ったものは、いくら丁寧に洗っても中に薬剤が残ってしまいますから」


 そっか。先端をつぶしたのは当然だけど、例えば筒の先っぽに蓋をしたみたいな形でも髪の毛つやつやポーションみたいにクリーム状になってるお薬を入れたら、こんな細い道具だとどうしてもそこの縁の方に残っちゃうよね。


 それに対して試験管は先が丸くなってるから、棒の先に布を巻きつけたものでも使えば拭き取るのも簡単だ。


 考えた事なかったけど、こう言う実験道具の形ってちゃんと考えて作ってあるんだなぁ。


「これは今回の実験だけでなく、少量の薬品による調合等にも重宝しそうじゃのぉ」


 ロルフさんはそう言うと、僕に向かってこう言ったんだよね。


「ルディーン君。この容器なんじゃが、他の魔法使いに見せて作らせても良いじゃろうか?」


「うん、いいよ」


 もっといるなら僕が作ってもいいって思ったけど、ロルフさんがこう言ったって事は多分他の人にも使わせてあげたいって思ってるんだろうから、いいよって答えておいた。


 だって、それでみんなが喜ぶならそれでいいもんね。


「ありがとう。それならば魔術師ギルドにでも依頼するとしよう」


 そしたらやっぱりそうだったみたいで、ロルフさんは笑いながらそう言って、長いお髭をなでたんだ。



 僕が作った容器に髪の毛つやつやポーションを入れてからコルクで作った栓をしたものを、きっちりとしたメイド服を着てるストールさん以外のみんなで服の中に入れて脇に挟んで実験開始。


 最初はちょっと冷たかったけど、材料に銅を使ったからかすぐにあったかくなったから特に問題なし。


 それから10分程たった頃。


「そろそろ、一度確認してみるかのぉ」


 ロルフさんのこの一言で、みんなその入れ物を服の中から取り出したんだ。


 で、蓋を開けてみると。


「あっ、僕の、溶けてるよ」


「ふむ。わしはまだだったようじゃな。完全には溶けきっておらぬように見える」


「私もですわ。どうやら体温の高い子供の方が、早く溶けるようですわね」


「えっと、溶けてしまってる私は、まだ子供って事なのでしょうか?」


 完全に液体になってたのは僕とペソラさんの二人だけ。


 ロルフさんとバーリマンさんの二人は、もうちょっと挟んでないとダメだったみたいだね。


「じゃが、これで容器に入れて体温で温めれば液体になる事は証明された訳じゃ。それではルディーン君、頼めるかな?」


「うん! それじゃあ調べるね」


 前もって言われてた通り、僕は完全に液体になってる僕が持ってる容器の中のポーションに鑑定解析をかけてみたんだ。


 そしたらさっきまでのクリーム状の時と殆ど変わらないって出たんだよね。


「大丈夫。溶けてても、ほとんど変わって無いよ」


「ほとんど? と言う事は、どこか変わってしまっている所があると言う事なのじゃろうか?」


 僕が大丈夫だったよって教えてあげると、ロルフさんは笑顔にならずに心配するような顔になってこう言ったんだ。


 でもさぁ、変わってるとこ、あるに決まってるよね。


「そりゃそうだよ。だって溶けてるもん。だから説明の最初に、温められて液状になってるって書いてあるんだよ」


「おおなるほど、確かに変わっておるな。して、ルディーン君。他に変質してしまっているところは無いのじゃな?」


「無いよ。説明にも見た目は変わっちゃったけど、中身は同じ物だって書いてあるもん」


 名前の横に液状って書いてあるのと、説明の最初にさっき言ったのが書いてある以外はまったく同じだから、この実験は成功って事だよね。


 だからそれを聞いたロルフさんは満足そうにお髭をなでながら、今度こそ笑顔になったんだ。



「後はどのようにしてこの液状化したポーションを頭皮につけるかじゃが」


「そこはやはり細い棒の先に布をつけ、そこに染み込ませたもので塗るのが宜しいのでは?」


「ふむ。じゃがそれではポーションの多くが布に残ってしまい、無駄になるのではないか?」


「そう言えばそうですねぇ」


 その後はロルフさんとバーリマンさんで、このお薬をどうやったらうまく頭に塗れるかのお話し合い。


 僕としては指先につけて塗ればいいだけなんじゃ無いかって思ったんだけど、


「それだとクリーム状の時でもできたんじゃ無いですか?」


 ってペソラさんに言われちゃった。


 でもね、


「いや、ルディーン君が言っておる事は別に間違いでは無い」


 お話し合いをしてる時でも僕たちの声は聞こえてたみたいで、ロルフさんがバーリマンさんとのお話をやめて僕たちにそう言ったんだ。


「ええ。他にいい方法が思いつかなければ、それが最善だと私たちも思っているのですよ」


 そして、その意見にバーリマンさんまで賛成したもんだから、ペソラさんはびっくり。


「ですが、それなら別に液体にしなくても、クリーム状のままでも良かったんじゃないですか?」


 慌ててそう聞いたら、ロルフさんもバーリマンさんも全然違うんだよって言ったんだ。


「粘りが強いクリームの状態ではうまく広げる事ができぬ。じゃからクリーム状のままでは頭皮に届くよりも髪の毛に吸収される物の方がどうしても多かったのじゃ」


「それに対して液体だと、指先につけたポーションを頭皮に擦り込みやすくなるでしょ。どうやったって全てのポーションを頭皮だけに塗る事はできないのだから、より多く、そして頭皮全体に万遍無く塗れるようにするにはこのポーションを液状にする必要があったのよ」


 この話を聞いて、ペソラさんはやっと納得。


「確かに前のままだと、頭皮全体にはうまく塗れませんからね。そう考えると、液体にしないといけないってのも解ります」


「そうでしょ。でも、ただ指先につけて塗るだけだとどうしても髪の毛に付く分が増えてしまうから、なんとか他の方法は無いのかと私たちは相談しているのよ」


「うむ。折角ここまでこぎつけたのじゃから、どうせならより多くのポーションを頭皮に届けたいからのぉ」


 そしてそんなペソラさんに、バーリマンさんとロルフさんは何で話し合いを続けているのかも最後に説明したんだ。


 液体にできたからこれで終わりにしちゃってもいいんだけど、どうせならもっと使いやすくした方がいいってね。


 それを横で聞いてた僕も、その意見には大賛成。


「うん! 僕もできたからそれで終わりにしない方がいいと思うんだ。だってお母さんたちも、もうお肌や髪の毛がつるつるつやつやになっちゃったんだから、僕しか作れないポーションをそのまま使うのはもったいないよねって、今はお湯に溶かしたのを使ってるもん」


 何かあってお肌がかさかさしてきたらまたそのままのポーションをそこだけ使うらしいけど、そうじゃなかったらそれでも十分つるつるつやつやのままでいられてるって言ってたんだ。


 でも僕、そんな使い方するなんてまったく想像もしなかったんだ。


 やっぱりロルフさんたちの言う通り出来たら終わりじゃだめで、そこからもっと工夫しなきゃいけないよね。


 読んで頂いてありがとうございます。


 お湯で溶かして使う話は前にどこかで書いたつもりだったのですが、いくら探しても見つかりません。


 もしかして書いたつもりになっていただけだったのだろうか? だとしたらショック。折角伏線として用意しておいた話だったのになぁ。


 とうとう話のストックが尽きてしまいました。


 なんとか150話までは毎日更新しますが、それ以降はとても今のペースでアップする事ができません。


 ですのから、すみませんが151話以降は週に3~4回更新になります。


 内訳としては月水金は毎週必ずアップして、出張などで余裕が無い週以外は土曜も更新するつもりです。


 更新速度が少し遅くなってしまいますが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。

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