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147 物を作るには素材の知識がいるんだってさ


「脇に挟んで熱を加えるのはいいとして、入れ物は何が良いかのぉ」


「一番簡単なのは皮袋でしょうけど、それだと水袋のような特別な造りで無ければ液体になった時にこぼれたり染み出してしまいます。そして何より中に入れて暖めた場合、皮がポーションに与える影響も心配ですよね」


 僕の意見を聞いて髪の毛つやつやポーションを脇に挟んであっためる事にしたロルフさんとバーリマンさん。


 でもいざそれをするとなると、何に入れたらいいのかって問題が出てきたんだ。



 前世だったら、こんな時は試験管とかを使えばいいんじゃないかって話になるんだろうけど、まだこの世界ではその材料になってるガラスがあんまり作られて無いんだよね。


 窓ガラスでも高級なお店じゃないと見かけないくらいだもん、そんなガラスを試験管みたいな形にできるほどの技術は無いと思うんだ。


 それにあんな割れやすい物を脇に挟んで、もし転んじゃったら危ないからやめたほうがいいよね。


「そうじゃのぉ。そうなると一番妥当なのは陶器で入れ物を作り、コルクで蓋をするのがいいのじゃろうが……」


「陶器は熱を通しにくいですから、体の熱で中のポーションを溶かす為の入れ物には向かないですよね」


 実際ロルフさんたちの口からはガラスと言う意見は出なくって、その代わりに出たのが陶器。


 これなら形も簡単に変えられるし、作ってもらったとしてもあんまりお金がかかんないから良さそうなんだけど、熱を通しにくいからダメなんだってさ。


「ふむ。となるとやはり銅のような金属で作るのが一番かのう。じゃが脇に挟めるほど細い入れ物を、果たしてろう付けで作れるものなのじゃろうか?」


「そうですね。用途から考えるとなるべく薄い材料で作りたいですし、そうなるとかなり腕のいい職人を見つけなければ試作するのも難しいと思いますわ」


 で、ロルフさんたちが次に考えたのが金属で作った入れ物なんだけど……ろう付けってなんだろう?


 名前からすると蝋を使った何かなのかなぁって思うけど、あっためたら簡単に溶けちゃう蝋で金属をどうにかするって事は鍛冶の仕事じゃないだろうから錬金術を使った何かなのかな?


 名前だけ聞いてもよく解んなかった僕は、錬金術の事なら知ってるだろうと思って近くに居たペソラさんに聞いてみる事にしたんだ。


「ねぇ、ペソラさん。ろう付けって何?」


「ろう付けですか? さぁ、私もよく解りません」


 だけどペソラさんも知らないみたいなんだよね。って事は、錬金術じゃないのか。


 と、そんな話をペソラさんとしてたら、横で聞いていたストールさんが僕たちにそれが何かを教えてくれたんだ。


「ルディーン様。ろう付けと言うのは金属を加工する技術の一つでございます」


 ストールさんが言うには、ろう付けって鍛冶の職人さんが金属と金属をくっつける時に使う技術の事なんだって。


 これは銅製品を作る時によく使う技術らしくて、くっつけたい所を洗ってから組み合わせた物を真っ赤になるまで熱して、そこに銅より低温で溶ける金属を押し付ける事でそれを接着剤代わりにしてくっつけるって方法らしいんだ。


 でもそれを聞いてロルフさんたちが何で作れないかもって思ったのか、何となく解る気がしたんだ。


 だって試験管みたいな細い物をその方法で作ろうとしたらかなり大変そうだもん。


 多分ろう付けって、どっちかって言うと鍋とかを作るときに使う技術なんだろうね。


「となると少々金はかかるが、金属の加工ができる魔法使いに頼むのが一番の早道なのじゃろうな」


「ええ。これはあくまでやって見なければ成功するかどうか解らない段階の実験ですし、ここでは実用化する際、実際にその道具を使用するかどうかには目を瞑ってそうすべきでしょうね」


 と言う訳で、どうやらロルフさんたちは作れる鍛冶職人さんがいるかどうか解んないから、取り合えずクリエイト魔法が使える魔法使いに頼む事にしたみたい。


 でもさ、それならわざわざお金を使わなくてもいいよね。


「ロルフさん。魔法で作っていいなら、僕が作れるよ」


 だって僕、形がしっかりと頭に浮かべられる物なら、材料さえあればクリエイト魔法で作る事ができるもん。


 そりゃあ大きなお家を作ってって言われたら無理だよ。だけど脇に挟むくらい小さなものを作るくらいなら、賢者が10レベルになった今の僕にはそれ程難しくないんだ。


「ほう。これは驚いた。ではルディーン君は、金属を加工するクリエイト魔法を使えると言うのじゃな?」


「うん。すごく大きい物だったり、いろんな材料をくっつけて何かを作ってって言われたら作れない物があるかもしれないけど、銅を使って何かの形にするだけなら簡単に出来るよ」


「まぁ、金属の加工を簡単に? それは本当に凄いわねぇ」


 ロルフさんが確かめるようにそう聞いてきたから、簡単なものなら作れるって教えてあげたんだ。


 そしたら何でかバーリマンさんにまで感心されちゃったんだよね。


「なんで? そりゃあ鉄を材料にしてそれを鋼の剣にできるって言うのならすごいかもしれないけど、ただ形を変えるだけなんでしょ? だったら魔法使いなら誰でもできるんじゃないの?」


「いいえ、そうでもないのよ。クリエイト魔法は攻撃魔法とかとは違って、製作する物に使われている素材の特性が解っていないと、うまく使えないと言う性質があるの。だから、普通は材料ごとに練習しないとちゃんと発動しないのよ」


 なんと! クリエイト魔法にはそんな条件があったんだね。


 バーリマンさんが言うには、金属をクリエイト魔法で加工できるようになろうと思ったら、まずはその金属を変形させる練習から始めないといけないんだって。


 そうやって何度か変形させているうちにその金属の特性が解ってくるから、そしたらそこから更に細かい加工が出来るように練習をするのが当たり前なんだってさ。


「でもね、過去に貴族お抱えの優秀な鍛冶職人が、自分の3男に勉強をさせて魔法使いにしたら初めから金属加工のクリエイト魔法が使えたという話があったらしいの。だから、今では使用する素材をしっかり理解していればクリエイト魔法は使いこなせると考えられているわ」


 なるほど、そういう事なら僕が初めからいろんな材料をクリエイト魔法で加工できた理由が解るね。


 今の僕が触った事が無い物でも、前世の学校ってとこで習ったりテレビで見たりして、そんな色々な素材がどんな物なのかを科学とか言うあの世界の知識として覚えてるもん。


 それに前世では図工の時間とか家庭科の時間、それに社会科見学とかでも実際に工作をしてたから、この世界の職人さんたちほどでは無いけど、そのお家に生まれたからお父さんのお仕事を見てたけど修行はしてないって子供くらいの知識はあると思うんだよね。


 人に話したらホントにその程度の事で? って言われちゃうかもしれないけど、それでも何も知らない人よりかはずっと有利だから、初めからクリエイト魔法がうまく使えたんだと思うんだ。


「ルディーン君は鍛冶仕事なんかした事が無いだろうから金属のクリエイト魔法が使える事に驚いたんだけど、そう言えば雲のお菓子の魔道具には小さな穴の空いた缶が使ってあったもの。そう考えると、それを目の前で見せてもらった私が使えることに驚いてちゃダメね」


「おお、そう言えばそうじゃのぉ。それに金属の加工が魔法で行えれば村での生活は格段に良くなるのじゃから、練習していてもおかしくは無い。実際に草刈りなどに使う道具はルディーン君が手入れをしておるのではないか?」


「うん。庭用の草刈りの魔道具は僕が作ったんだよ」


「やはりそうであったか。うんうん。ルディーン君はまだ小さいのに、村の人たちのお手伝いをして本当に偉いのぉ」


「えへへっ」


 お父さんたちに言われてやってるだけなのに、ロルフさんに褒められちゃった。


 そのおかげで嬉しくなった僕は、材料があるなら入れ物を今作ってあげるよって言ったんだよね。


「そうか、悪いのぉ。制作費に関しては後日支払うから頼めるかい?」


「うん、いいよ。それとね、簡単に出来るからお金も要らないよ」


 そしたらね、ロルフさんが作ってもらったんなら、そのお金もちゃんとはらうよって言ったもんだから、僕はいらないって言ったんだ。


 だってジャンプの魔法の転移場所にロルフさんのお家を使わせてもらってるし、ここへ来るまで馬車にも乗っけてもらってるもんね。


 でもさ、それを言ってもロルフさんはダメって言うんだ。


「ルディーン君。これは治癒魔法のような規則では無いが、それでも弱者を守る為の決まりごとの一つなのじゃ。じゃからのぉ、やはり誰かを助けたり、その手伝いをしたりする為に魔法を使ったのならば、その対価は受け取るべきじゃとわしは思うのじゃ。そうでなければ頼む方も次から頼みづらくなるしのぉ」


 そうなのか。でもなぁ、ロルフさんやバーリマンさんにはいろんな事してもらってるから、あんまりお金を取りたくないんだよなぁ。


 そう思って誰かに助けてもらおうと周りを見たんだけど、みんなロルフさんに賛成みたい。


 そんな風にいつの間にか誰も味方が居ない状況になってたんだけど、それでもなんとかお金は要らないって言おうと思ってた僕に、バーリマンさんが声をかけてくれたんだ。


「ルディーン君。君にはこれからも色々と助けてもらわなければいけないのだから、思うところはあるかもしれないけど貰っておいてくれないかしら。それにね、これは錬金術ギルドから出るお金だからロルフさんや私が支払うお金じゃないもの。そこまで気にする必要も無いのよ」


「そうなの? じゃあ、もらってもいいかな」


 僕がもらってもいいよって言っても、ロルフさんたちが自分のお金を払うんじゃ無いって聞いて一安心。


 何の心配もなくなった僕は、ロルフさんから材料をもらって実験用の入れ物を作ったんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 とうとう話のストックが尽きてしまいました。


 なんとか150話までは毎日更新しますが、それ以降はとても今のペースでアップする事ができません。


 ですのから、すみませんが151話以降は週に3~4回更新になります。


 内訳としては月水金は毎週必ずアップして、出張などで余裕が無い週以外は土曜も更新するつもりです。


 更新速度が少し遅くなってしまいますが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。

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