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142 売れてる冷蔵庫と足りない魔石



「ペソラさんがまた僕のこと様って呼んでる!」


 急に態度が変わったペソラさんにびっくり。


 そして、その原因になったとしか思えないバーリマンさんに、僕は文句を言ったんだ。


「バーリマンさんが変な事言ったんでしょ! じゃなきゃ急にこんな風になる訳ないもん」


「ごめんなさい。でも、まさかここまで効果があるなんて思わなかったのよ」


 僕がこんなに怒ってるのに、バーリマンさんは口元に手を持っていって、ころころと笑ってるんだもん。


 もう! 何がそんなに面白いんだよ!


 そう思って僕がもう一回怒ったら、バーリマンさんはペソラさんがなんでこんなになっちゃったのかを教えてくれたんだ。


「実はこの子、何かを発見したり生み出したりした人にあこがれてるのよ」


 バーリマンさんが言うには、ペソラさんはそんな人たちにあこがれて、将来は自分もそんな人たちみたいになりたいって錬金術ギルドの職員になったんだってさ。


「それはそうですよ。だって新しい魔道具の発明ですよ。そんなの、普通の人にはできないんだから、あこがれるのは当たり前じゃないですか!」


「そうかしら? 魔道具の発明はその殆どが、こういう物が欲しいなぁとか、こんなのが出来るんじゃ無いかしらって言うひらめきから来てるのよ。なら魔道具の作り方を学んだ誰もが、あなたの言う発明ができる可能性があるのではないかしら?」


 そしてその憧れを当然のようにペソラさんは言ったんだけど、そんな彼女にバーリマンさんはそれは違うんじゃないの? って言ったんだよね。


 で、何でそう思ったのかも、バーリマンさんはペソラさんに教えてあげたんだ。


「考えても見なさい。確かにうちのギルドにあるような氷の魔石を使って中全体の温度を凍らない程度に保つ冷蔵庫を作った人は非凡な発想とそれを実現できるだけの能力があったのだと思うわよ。でもルディーン君が考え付いた冷蔵庫はどうかしら? 温度が変わりやすい金属を温度を保ちやすい木材で作った箱の内部に張り、その中に氷の魔石の特性である凍らせる力を利用した空間を作って冷蔵庫の中全体を冷やすと言う現象を作り出しているでしょ」


 そう言うと、バーリマンさんは視線をペソラさんから僕に移してにっこりと笑った。


 そしてもう一度ペソラさんに視線を戻すと、こう言ったんだよね。


「ルディーン君は別に新しい発見をしたわけじゃないの。ただ、子供らしい感性でそこにある現象からこの魔道具を考え出したのよ」


「……確かにそうですね。氷の魔石を使えばその空間は冷やされるし、金属は熱伝導率が高いから、このように使えば有効です」


 バーリマンさんの言葉から、ペソラさんは僕の作った簡易冷蔵庫の構造を考えてそう答えた。


 その冷蔵庫は、確かに自分が学んできた知識をあわせれば考え付いてもおかしくない物だったってね。


「そうでしょ。だからね、ペソラ。こうなりたいと思うのはいいけど、ただ憧れるだけではダメよ。あなたにだって、もしかしたらルディーン君が作った簡略した魔道冷蔵庫を作り出せた可能性もあるのだから」


「はい。私もルディーンさんを見習って頑張ります」


 バーリマンさんのお話で頑張ろうって思ったペソラさんは、ふんすと気合を入れたんだ。



「それにしても凄いですよね。確か商業ギルドで売り出したものは、その利益の一部が特許取得者に支払われるんでしょ?」


「ええ。商業ギルドではそうなっているわね」


 バーリマンさんが言うには特許が登録された商品を作る場合、商業ギルドで売るのならその利益の一部がもらえて、もしどこかの商会が作ってるのなら利益に関係なく一年で一定の金額がもらえるんだって。


 でね、商業ギルドで売るのはその商品がどれだけ売れるかや周りにこんなのができたよってのを知らせるためだから、そんなに長い間は売らないらしいんだ。


 その間にどこの商会からもうちで売りたいって言ってこなかったら、特許はそのまま残るけどもうお金が入ってこなくなるんだって。


 でもその代わり、どこかの商会が作るって話になったら商業ギルドで売ってた時よりもっと多くのお金がもらえるようになるそうなんだけどね。


「でも今は商業ギルドだけですけど、あれだけの商品ですもの。販売終了を待つまでもなく、早いうちに幾つかの商会が商業ギルドと契約をして販売を始めると思うわよ」


「そうですよね。今までの大きな氷の魔石を使った冷蔵庫に比べてかなり安くなってますもの。あれなら小さなお店や個人でも欲しいって思う人はいっぱいいそうですもんね」


 魔道冷蔵庫ってペソラさんがギルドにある事を自慢するくらい高かったけど、僕が作った魔道冷蔵庫はそんなに大きな魔石じゃなくても作れるから、ある程度お金のある人なら買えるくらいの金額になってるんだって。


 そう言えば僕んちのだってブレードスワローと同じ大豆くらいの大きさの魔石を氷の魔石にして使ってるからなぁ。


 あれは確か冒険者ギルドで金貨5枚くらいで売れる奴だから、そう考えるとみんな頑張れば買えそうだね。


「ええ。実際に商業ギルドでは作った端から売れているって話よ。でもこの街には氷の魔石を作れる人が居ないでしょ。だから大急ぎで他の街から仕入れようとしているらしいのだけど、小さな氷の魔石は今まであまり作られていなかったから在庫そのものがあまり無いらしくて大きな騒ぎになっているそうよ」


「そう言えば氷の魔石は魔道冷蔵庫で使うのが一番多いって話ですもんね。ならこの街で言うと金貨200枚くらいの魔石を氷の魔石にしたものが一番多いだろうから、そんな小さな氷の魔石があまり無いのも解る気がします」


 でも、みんなが欲しがるからいっぱい作ろうと思っても、材料が無いから作れないんだって。


 だったら僕が作ってあげた方がいいのかなぁ? って思ってバーリマンさんに聞いてみたんだけど、それはやめておきなさいって言われちゃった。


「さっきも言ったけど、この街には氷の魔石を作れる人が居ないから、それこそとんでもない数の依頼が集まってしまうもの」


「そうですよね。作れる人がいるとなったらその小さな物だけじゃなくて、大きな魔石でも氷の魔石にして欲しいって言って来るに決まってるけど、そんなにいっぱい一人で作れるはず無いですもんね」


 そっか。僕はちっさな魔石だけのことを考えてたけど、大きな魔石を氷の魔石にして欲しい人だっているはずだもんね。


 それに僕の村と違ってこのイーノックカウはとっても大きな街なんだから、欲しがる人もきっと物凄くいっぱいいると思うんだ。


 でも僕一人じゃそんなにいっぱい作れないんだから、バーリマンさんたちが言う通り簡単に作ってあげるって言っちゃダメだよね。


「でも凄いですね、ルディーンさん。こんなに小さいのにもう氷の魔石が作れるなんて。火の魔石なんかと違って、結構凄い魔法使いじゃないと作れないんですよね?」


「ええ。本当なら16~7レベルの魔法使いにならないと作れないものなのよね」


「えぇ~!? じゃあルディーンさんって、そんな高レベルの魔法使いなんですか?」


 僕が、これからは簡単に作ってあげるなんて言っちゃダメなんだね、なんて考えてたら急にすぐ横で大きな声がしてびっくり。


 どうやらその大きな声を出したのはペソラさんみたいで、そっちを見ると何でか知らないけど彼女も僕の方を見てたんだ。


 その顔はホントにびっくりしてるって感じだったんだけど、僕は話を聞いて無かったから何が起こってるのかまったく解んなくて、その視線におろおろ。


 でも、そんな僕たちを見たバーリマンさんが笑いながら違う違うって言ったんだ。


「そうじゃないのよ。ルディーン君が言うにはもっと低レベルで使える氷の魔法があるらしいの。彼はそれを覚えたおかげで、氷の魔石が作れるようになったみたいよ」


「へっ、そうなんですか? びっくりしたぁ。でも氷の魔法って、色々あるんですね」


 そっか。前にロルフさんたちが勘違いした時と同じで、ペソラさんも僕が凄く高レベルなんだって勘違いしてびっくりしちゃったんだね。


 でもそれが勘違いだったって解ったペソラさんはホッとした顔になったんだけど、次の瞬間何かに気が付いたような顔をしてバーリマンさんに質問したんだ。


「あっ、でもギルマス。低レベルでも覚えられる魔法があるのなら、みんなそれを覚えればいいのに、何故そんな高レベルにならないと使えないって思ってるんですか?」


「それに関しては、色々と事情があるのじゃよ」


 でもその答えに返事をしたのは聞かれたバーリマンさんじゃなく、さっきまで二人の話を近くでニコニコしながら聞いていたロルフさんだったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。

 

 ブックマークが300を越えた上に総合ポイントも1000を超えました! 本当にありがとうございます。


 次の目標は日間ファンタジーの100位以内! まぁ流石に一日で100ポイント近くは難しいかもしれませんが、もし応援していただけるのでしたら、下にある評価を入れて頂けると本当にありがたいです。

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