第五都市アーニュル『1』
体調を崩して少し遅れました。
待ってくれてるかた申し訳ないです。
それでも読んでくれる方々、ありがとうございます。
「やっとぉー!着いたーーー!!!
やっとここまで来れました!
私の目の前には石作りの大きな門が立っている。
ここは第五都市の入り口だ。
魔物が入ってこないように石壁が都市を囲っている。
門の入り口には関所があり、不審者が都市に入らないようにチェックをしている。
関所は他の都市からの行商人や観光客などで列ができていた。
私達もそこに並ぶ
「楽しみですね!第五都市!」
都市に入ったらまずは宿を探さなくては
ずっと野宿だったため早くふかふかのベットで眠りたい。
それと食事ですよ食事!
もう木の実は食べ飽きました……
調理器具も調味料もない状況でガリルが野うさぎを狩ってくることもあったが、
調理方法は”焼く”のみ。
美味しいには美味しいのですが……
せめて塩だけでも欲しいのです。
「あ…」
私はふと思った。
とても重要なことである。
なぜいままで気づかなかったのだろう。
きっとここに来るまで町に寄ったりしなかったのが原因だろう。
私は小声でガリルに話しかける。
「あの、ガリルさん
お金って、お持ちですか?」
そう、宿に泊まるにも調理器具や調味料を買うにもお金がいる。
私の所持金はゼロ。
ガリルだけが頼りだった。
もしこれで持ってないと返された絶望である。
だって都市に入れたところで待ってるのは野宿じゃないですか!
というか野宿をしても大丈夫なのだろうか。
景観が崩れる!とかで逮捕されたりしないのだろうか。
もしそんな事になったら、町から逃げるように出て来た意味が全くないではないか。
そんな事を考えていると、ガリルがローブの内側からゴソッと何かを取り出した。
「大丈夫だ、多少は持っている」
ガリルは大人の拳程の大きさ程の袋を掌に乗せ、私に見せて来た。
袋を軽く揺らすと、中からジャラジャラと音がする。
この袋の中身は全て銀貨らしい。
この量なら今後の事も考えて五泊くらいはできる。
買い物をする場合は三泊くらいか。
気持ちが浮き足立つ。
これで問題なく関所を通れれば何も言う事は何だが……
だが世の中そう上手くは行かない。
分かってます。分かってますとも。
町を出る決断をした時点で私には色々な困難が待ち合わせていますから。
「はい、次の組
君らは観光?それとも仕事?」
ほらきました第一の困難
でもこんなもの困難でも何でもございません。
と自分に言い聞かせて落ち着かせる。
これくらい普通に振る舞って終わらせればいいことなのだ。
「えっと、観光です」
よし!自然に答えたぞ。
誰がどう聞いても観光に来た少女だ。
「そんな汚いなりで?」
「え?」
私は忘れていた。
自身が一週間程水浴びもせずに同じ服を着ていることに!
山道を進んでいたため、着ていた服もボロボロだった。
ひたすら本を読まされていて全然そっちに気が回らなかった。
「いや、えっとー」
私は言葉に詰まる。
まずい、役人がこちらをジッと見ている。
もしかして怪しまれているかもしれない。
私が何も言えずにしていると、ガリルが私の頭をガシっと掴んだ。
「違うだろ、すみません、こいつまだ新人なもんで
仕事に来たんですよ、古い魔術教本を売りにね
その証拠にほら、この子のリュックの中身
魔術の教本ばかりでしょ?」
一瞬誰が喋っているのか分からなかった。
顔を見上げると、ガリルが笑顔で役人と話している。
声のトーンもいつもより明るい。
ガリルは私の頭を掴んだまま軽く謝罪させると、
役人も不信感がなくなったのか通してくれた。
私、何もしない方が良かったのでは?
よし、これから都市に入る時はガリルに任せよう。
私はそう心に誓った。
都市の中は活気に満ち溢れていた。
道の脇には露店が並び、観光客を出迎えている。
まず驚いたのが建物が全て石造りであることだった。
町では基本的に木造建築が一般的だが、見渡す限り全て石作りである。
それに至る所に花壇や鉢花があり、全体がキラキラして見えた。
立てていた予定が崩れていく……
早く観光したい!見て回りたい!!
「まずは宿だ、行くぞ」
ガリルは冷静にそう言って歩き出す。
先ほど役人と会話していた姿が嘘のようにいつも通りである。
「ちょっと待ってくださいガリルさん!
あそこのお店からいい匂いがしますよ!
あ!あそこお洋服屋さんです!
ちょ、ちょっと待ってくださいよーー」
ガリルはどんどん繁華街から離れて行く。
私も渋々着いて行く。
あとで絶対観光するんですからね!
繁華街から少し離れたところでガリルは宿屋を見つけた。
少し古く見えるが味がある。
中に入ると1階が飲食店のような佇まいで、
カウンターにはお酒が並び、丸机と椅子がいくつかあった。
きっと1階は泊まる客がご飯を食べるところなのだろう。
カウンターには中年の男性が1人いる。
席には客と思われる老人が座っていた。
ガリルはドサッとカウンターの上に銀貨の入った袋を置いた。
「三泊したいのだが、いくらだ?」
先ほどまで観光したい気持ちだったが、宿の中に入った瞬間
早く水浴びをしてベットで眠りたい!
という欲求が強くなってきた。
正直なところ疲れはピークに達しているのだ……
「お客さん……こりゃダメだ
この銀貨は古すぎる
こんな骨董品うちじゃ使えないよ」
なんだって……マジですか………
関所の前で袋の中身を見た訳ではないから、不安がなかったと言えば嘘になる。
これはもしや…本当に野宿になるのではないだろうか。
でも!
多分!
大丈夫!
今回もきっと関所の時みたいにガリルがなんとかしてくれるはず!
私はチラっとガリルの顔を見る。
あぁ、なんという事でしょう……
ガリルも”マジかよ”という顔をしていた。
私たちは宿のカウンターに立ち尽くす。
心と気持ちはすでに休むモードになっている。
もはや私は立っている事がやっとになっていた。
ガリルは魔物で体力が人間よりもあるからいいかもしれないけど
私はただの人間、15歳の少女ですもの
……人って、立ったまま寝れるのかな…
自分がだんだん変なテンションになっていくのを感じる。
段々と意識が遠退く中、それを叩き起こしたのは大きな声であった。
「こ、これは!!!」
その声に失いかけていた意識が引き戻される。
私は目を開けカウンターを見た。
そこにはこの宿に私たちが入った時からカウンターに座っていた老人が、
ガリルが置いた袋の中身を食い入るように見ている姿だった。
「これは、勇者と魔王の大戦時代の通貨じゃないか!
お兄さん!これワシに譲っちゃくれないか!
ダメか!ダメならちょっとまっちょれ」
老人が一方的に喋り宿を出ていった。
その出って行った時の速さたるや。
本当にあの方は老人なのでしょうか。
少しすると、ドタドタと音を立てて老人が宿に返って来た。
おじいさん、凄い汗ですよ。
大丈夫ですか?
今にも倒れそうなくらい息が切れてますが……
そんなことより…私は眠いです……
老人はガリルの小袋の横に一回り大きな袋を置いた。
「これで、これと交換で頼む!!」
老人はガリルに詰め寄る。
袋の中には大量の銀貨が入っていた。
ガリルが持っている倍の量はあるのではないか。
「あ、あぁ頼む」
ガリルは老人の圧に押し切られたようだ。
老人はガリルの言葉を聞いた瞬間に小袋を抱え、
走って宿を出て行ってしまった。
一応これで宿に泊まれるようにはなった。
お金を宿の主人に渡して部屋に案内してもらう。
階段を上り2階へ
部屋が3つありそのうちの1部屋に案内される。
あれ?
部屋、1つ?
男女が1つの部屋とかこの主人なにか勘違いしてないか
そこは2つの部屋で別々に通すべきでは!!
と考えたが、ずっとガリルと一緒に行動して、
洞窟の中だったり、野宿だったりでもう慣れています。
ついこの間まで、私の処女が!などと考えていた自分を殴りたい。
とりあえず………
ベットだーーー!!!!!
ボフッ
私はベットにダイブした。
ふかふかのベット、なんて心地がいいのだろうか。
少し堪能したら買い物に行こう。
繁華街も見て回ろう。
そう思っていた、そう思っていたのに!
段々と瞼が重くなって来た。
意識が……遠のく………
寝ちゃダメだ、寝ちゃダメだ!
この都市を楽しむんだ!!
………スヤァ
私は睡魔に負け、眠りについた。
パッと目が覚め。
窓から入る光に自然と目が覚めた。
少し喉が乾き、お腹が空いている感覚がある。
良く寝た気がするし、もう少し寝たい気もする。
見知らぬ天井にふかふかなベッド。
一瞬どこにいるのか分からなかったが、宿に入ったのだと改めて認識する。
部屋を見渡すと、そこにガリルの姿はなかった。
ふとベットの横にある机の上を見ると、お皿が置いてあり、
そこにパンが二つ置いてあった。
私はパンを一つ手にとり口の頬張る。
美味しい!
何日かぶりの人が作った食べ物を口にする。
口に入れた瞬間に広がる小麦の香り。
外は少し硬いが中はふんわり、しっとりしており、
噛み締めるとほのかにバターの香りもする。
私はあっというまにパンを二つたいらげてしまった。
「お、起きたか」
ガチャっとドアを開けてガリルが入ってくる。
買い物にでも行っていたのか手には小包を抱えていた。
「起きたばかりで悪いがこれを試してくれ」
ガリルが小包から小さな石を取り出し、ベットの横にある机に置いた。
「これは、なんですか?」
「魔術結晶だ、素の魔術結晶を持つと自分がどの属性なのか分かる仕組みになっている
持って力を入れてみろ」
私は机の上に置かれた魔術結晶手に取り強く握る。
すると魔術結晶は淡い水色に光だした。
「綺麗……」
その光はまるで澄んだ青空のよう。
手を広げて握るのを止めても少しの間、魔術結晶は光続けた。
一瞬光の中に何かを見たような気がする。
馬のような……
単純に光がそう見えただけかもしれないが、なんだか優しい気持ちになった。
「水属性だな
確かお前の兄も水属性だったか
血縁でも同じ属性は以外と珍しいぞ」
そうか、私も兄と同じ、水属性……
兄と同じ魔術を使用する事ができるのか……
純粋に嬉しかった。
あんなことがあったけど、私は今でも兄の事が好きなのだ。
あの一夜を思い出すと今でも恐怖で泣きそうになる。
でも、それ以上に私は優しかった兄の姿を知っている。
それに魔術を使用できるようになれば、勇者病になった人を少しは救えるかもしれない。
ガリルは治らないと言っているけど、兄の最後はいつもの優しい兄だったようにも思う。
もしかしたら、治す事は無理でも症状を多少軽減する事は可能かもしれない。
私が色々と考えているとガリルが話しかけて来た。
ガリルから私に話しかけるなんで珍しい事もあるものだと感じる。
「そういえば昨日ずっと寝てたが、今日は観光とかいいのか?
もう明日で出発だぞ」
「……………
えええぇぇぇぇぇ!!!!」
まさか!そんな!昨日私ずっと寝てたの!!
起こしてくれればよかったのに!
私…そこまで疲れていたのか……
あれから初めて緊張の糸が切れた感じはしたけど、これほどとは。
「観光行ってきます!!
ダッシュで見てきます!!
あ!!
少しだけ……お金を頂いてもいいですか?」
私はガリルから数枚の銀貨を貰い外に出る。
急がねば、見たいものや買いたい者が沢山ある。
私は宿を出て繁華街の方へ歩き出す。
少し歩き、次の道を右曲がれば繁華街の通りのでる。
「早く金出せって言ってんだろうが!!」
男性の叫び声が聞こえた。
不穏である。
とても不穏である。
私は、声が聞こえた方に目をやった。
中途半端なところで切って申し訳ないです。