もう一つの始まり
もう一人の話です。
短いです。
俺はいまでも、死んだ父を尊敬している。
全ての者に敬意を払い、人間も魔物も関係なく全てを愛していた父。
その父がいま目の前いる。
はぁ•••またこの夢か•••
俺は少し溜め息をつく。
何ども見た夢。
この夢の最後は決まって一緒だ。
父が俺の目の前で殺される。
殺されるのと同時に目が覚める。
あと少し、あと少しで目が覚める。
父の後ろに男が一人立ち、後ろから父の腹を剣で突き刺す。
そして父は殺され、俺は目が覚めた。
目が覚めて天井を見つめる。
天井と言ってもここは洞窟の中であるため、見えるのは岩だけ。
洞窟の入り口から微かに入ってくる太陽の光で、今が夜ではない事を知る。
差し込んでくる光の向きからして、午前だな。
そんな事を考えていると、喉が乾いているのに気がついた。
あの夢を見ると起きた時にいつも喉が渇く。
幸い昨日川から汲んできた水が残っていたはずだ。
コップはあるが、俺は桶の中にある水を一気に飲み干した。
もう出立の準備は整えてある。
今日はこの陰気くさい洞窟からでる日
この日のためにどれだけの苦労と、どれだけの犠牲でなりたっているのか。
想像するのは辞めた。
俺は必要最低限の物を身につけて外にでる。
洞窟の周りは森になっているが、洞窟の入り口にはあまり樹木が生えておらず、
太陽の光は容赦なく降り注いできた。
少し熱いな
俺の目は一瞬視界を奪わ、目に入ってくる光を手で防ぐ。
光は入っていたとはいえ薄暗かった洞窟から出たのだ。
順応するには時間がかかる。
徐々に光りに慣れて行った。
慣れ親しんだこの洞窟ともお別れだ
湿気くさい洞窟内も、寝にくかったごつごつの寝床も
全てはこの日のための我慢。
全てはやつを倒し、偽りの世界を壊すため。
そして俺自身の世界を救うため。
俺は歩き出し、森の中へと入って行く。
やっと本題に入れそうですね。
はやく出会わせてあげたい。