一つの始まり
初めましてゆにです。読んで頂けたらとても喜びます。
少しずつ投稿していく予定です。
よろしくお願いします。
有名なお伽噺、その最終場面。
魔王がいう
「勇者よ、我の仲間になれ、さすれば世界の半分をお前にやろう」
その問いかけに勇者は答える。
「そんな物必要ない。
私は貴様を倒し、世界を救うだけだ」
そうして勇者は魔王を打ち倒し、世界は救われた。
子どもの頃から私はこのお伽噺が大好きだ。
よくある世界救済のお伽噺だけど、ハッピーエンドで終わるから好き。
勇者様はだれもが憧れる人類の宝、実際に存在し、伝説の人。
私なんかが会えるはずないけど、もし会えたのなら、
全ての人の変わりに、ありがとうと勇者様に言いたい。
今日はとても気分が良かった。
歩く足がスキップになり、鼻歌を歌う。
いつもは汗をかきながらのぼる坂道もなんなく越えられた。
町の入り口は既に多くの人が群がっている。
出遅れた!
この町は小規模で人口は500人ほどだ。
だがお祝いのために町の人間が集まれば、小規模でもすし詰め状態にはなる。
「おーい、聖騎士様が帰ってきたぞ!」
誰かがそう言ったので、私は町の入り口を見るべく頑張って背伸びをした。
今日はこの町出身の聖騎士が帰ってくる日だ。
聖騎士といっても一週間前に聖騎士見習いから聖騎士に昇進したため、
駆け出しの聖騎士、と言ったところだ。
だけど聖騎士になる事がとてもすごい事で、
騎士団で騎士として働き、実力が認められると聖騎士見習いになる。
聖騎士見習いになってからも聖騎士とともに鍛錬を行い。
死線をいくつも乗り越えてようやくなれるのが、聖騎士だ。
その聖騎士が二週間前にこの町の出身者から二人も誕生した。
そして二人が帰ってくるときき町を上げてお祝いをしているのだ。
入り口には鎧を着た二人の男が立ってた。
顔に被るバイザーは脇に抱えているため、人ごみの中でも顔はよく見える。
一人は身長が高くガタイも良い。
筋骨隆々とまではいかないが、数年後には実際にそうなるかもしれない。
いまは笑顔で手を振りながら大衆に対応している。
だが睨まれたり威圧されたりしたら、私なんかは蛇に睨まれた蛙のごとく動けなくなるであろう。
もう一人は細身の金髪でかなりのイケメン、、、だと思う。
それを証拠に笑顔で手を振ると町娘達が
「キャー、今私と目あったわ」
「いやいや、あたいを見てたねあれは」
などとキャーキャー言っている。
相当イケメンなのかもしれないが、私にはよくわからない。
私も大きく聞こえる声で彼に声援を送る。
「カイトお兄さまー!!今日はご馳走を用意してお母様と待っておりますわ!!」
そう、彼は私の兄である。
兄であるから顔の善し悪しはよく分からない。
だけど私は兄をとても尊敬しているし、憧れてもある。
私は現在15歳で、兄は私と10程離れている、
私が4歳の時に騎士になり、通常だと20年はかかるという騎士と聖騎士見習いの課程を終わらせ、
聖騎士となったのだ。
ここ10年、殆ど家には帰らずにいた兄だが、私は兄の顔を見て安心した。
昔と変わらない私の大好きな兄だ。
兄も私に気づいたのかこちらに手を振っていた。
さぁ、今日はお母様とご馳走を準備しなくちゃ。
私は踵を返し、走って帰路についた。
週二ぐらいで更新できたらいいなと思っております。