ヒーローとエンカウント
金色のおじさんはこちらを凝視、両手をブンブン振り回しながら言った。
「お前…見ねぇ顔だな!ナニモンだーー!?」
(こ、声が大きい…)
僕らとの距離は10メートルほど離れてた。けど、そんなのお構いなしに体全身を使って雄叫びをあげている。
「おっとっと…」
勢いあまってヨダレまで出ちゃってる。
無視するのも何なので、とりあえず返事をしよう。
僕は沢山の酸素を胸一杯に吸い込み、声帯を震わせるとともに吐き出した。
「旅の者ですーー!ちょっとお話しいいですかーー?」
…
しかし、僕の声量があまりないせいか、聞こえなかったようだ。
しかめっ面のおじさんは耳に手を当てたまま近づいてきた。
しかも超ダッシュで。
ダッダッダッダ
ザザーッ
到着と共に無駄に足で地面を撫で、ヒーローっぽいポーズをとる。
「…もう一度問おう。お前は何者なんだ?」
(こっちのセリフだよ)
ツッコミたい気持ちを抑えて、問いに答える。
「詳しく言ってもよくわからないと思うから、あんまり説明できないけど、僕たちはある目的のために旅をしてるんです」
「僕たちって言ってるが、今私の目の前には白髪マスクの少年しか見えないが?まさか、お前霊を連れてのか!?そうなのか!?あああああ!」
金ピカなおじさんが一人ではしゃいでいるのを呆然と見るしかなかった。
だって、僕が喋る間も無く一人で喋っているんだから。
…ようやく落ち着いたようだ。
「この腕時計を見てください。僕もよくわかってないんですけど、しっかり自我を持って喋るんです」
んー?っとおじさんが僕の右腕に顔近づける。
「やあ★」
腕時計が声を発した瞬間、おじさんは驚いて、驚きすぎて肩からひっくり返った。