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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第8章 エルフと死竜と魔王
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82 戦争の始まり

第8章の開幕です

 バルト川を進むキンタロー達は、対岸の魔人族の領域の森が赤く燃えあがっていると聞き、愕然とした。


「親父さん、引き返してくれ!! 早く!!」


 キンタローの言葉にノイルとクロウは驚く。まさか、キンタローが引き返せと言うとは思いもしなかったからだ。


「! すいません、ノイルさん。僕からもお願いします、一度引き返して下さい!!」


 トーレスも少し遅れて賛同する。本来のトーレスならもっと早く、もしかしたらキンタローより先に言っていたかもしれないが、流石に目の前の状況から少し思考が遅れるのも無理はなかった。


「すいません、キンタローさん。僕がもっとしっかりとしないといけないのに」

「気にするよ、トーレス。それより急いでくれ、親父さん」

(ふぅ~、しっかりしないと。これじゃいつまで経っても兄だと名乗れない)


 ノイルは、トーレスも賛同するには何か理由があるのだろうと、全力で引き返す。

 しばらくすると、バルト川に浮かぶ一艘の船が見えた。


「ノイルさん、船の近くで浮遊出来ますか?」

「当たりそうだが、やってみよう」


 船に近づくと、流石に船上にいた魔人族も何かあったのかと気になり、船首近くに寄ってくる。


「船長!! 急いでノイルさんの尾と船首に縄をくくりつけて下さい!! 船をノイルさんで引っ張ります!!」


 トーレスは、ノイルの羽音に負けないように、大声で叫ぶ。船長は、聞こえた合図に両手で丸を作り、すぐに指示を出した。


「あ、そういう事っすか」


 クロウがキンタロー達の考えに気づく。


「避難用っすね」


 キンタローにそう言うと、キンタローはニヤリと笑う。クロウは、自分ではそこまで考えが及ばなかった事にキンタローそしてトーレスに畏敬の念を抱く。


「キンタローさん、準備できました。戻りましょう。船長!! 帆は閉じて下さい!! 開いたままだと、折れてしまいます!!」


 船長は、再び両手で丸を作り指示を飛ばした。


「トーレス、あの船に何人乗れる?」

「そうですね、100ほどでしょうか」

「魔人族は何人くらいいる?」

「…………3000は下らないかと」


 クロウは、それを聞き絶望の表情を見せる。しかし、キンタローは諦めない。


「確か、船は底に石とかを入れるって聞いた事があるが」

「はい。あの船にも石を入れて船底を下げています──もしかして、捨てるかわりに人を乗せろと? 危険です! 傾いたら大惨事に」

「ならないだろ? ノイルに引っ張ってもらうのだから」

「…………婿どのは、人使いが荒いな」


 ノイルは、その表情は前を向いている為にわからないが苦笑いをしているに違いない。


「それでも、200です……」


 トーレスはかなり窮屈になるだろうが、そのくらいならと伝える。しかし、1つ言わなかった事があった。


 それは、船の耐久性。ノイルの力は強い。そんな力で、何度も往復などすれば船首が折れるか、船底に穴が空きかねない。だけど、諦めないキンタローの目を見ると言えなかった。


◇◇◇


「対岸だぞ、婿どの」


 ノイルの声で、全員が気合いを入れる。既にかなりの森が燃えており、正直、全員無事だとはクロウは思えない。

 一旦対岸に着陸して、ノイルと船を繋いでいた縄を外し、再び上昇した。


 そこに火事の原因が視界の先に飛び込んできて、全員が言葉を失う。森を燃やしている原因、それは1頭の竜の姿が遠方に見えたのだ。


 ギリッ!!


 ノイルが歯ぎしりをする。相手は竜。ノイルが知っているのは至極当然だった。


「知り合いか、親父さん」

「あれは……あれは、ワシの妻。つまりは、ニナの母親だ」


 やはりそうかと思ったものの、キンタローは森を燃やしている竜を見て違和感を感じていた。


 それは、動きが随分とぎこちない。上昇して、火の玉を放つと、急に下降し始める。

 火の玉を放つと、反動でその身体は後方へ下がる。しかし、あの竜は、火の玉を放つと急に力無く下降した。


「婿どの……もしかしたら、厄介な事になるやもしれん」


 キンタローは、ノイルの言葉に頷く。


「取り敢えず魔王と会うのは後だ。トーレス、オレ達はあれを何とかする。降ろすのはエアリーズ村の近くでいいか?」

「……すいません。僕は魔王様を守らないと……」

「それは、当たり前だろ? トーレスは魔王の側近だろう?」


 そう言うキンタローにトーレスは目を見開く。確かに魔人族のリーダーである魔王を守るのは、当然だが自分が側近だということを、すっかりと忘れていた。


(ははは……これは、事後が終われば魔王様に謝らなければなりませんね。既に心は掴まれてしまいました、と)


 ノイルは、全力でトーレスの指示に向かいエアリーズ村へと向かう。そのエアリーズ村近くで魔人族の集団と、エルフが数名と争っていた。


「親父さん、エルフだけ蹴散らせるか?」

「やってみよう」


 ノイルは、魔力を角と竜鱗に通すと、口を開き飛ばした魔法は、水流だ。不意をつかれた形のエルフを水に流すと、続けて1人のエルフを踏みつけて着陸した。


 初めは驚いた魔人族だが、エルフを攻撃した事で味方だと判断し残ったエルフへ攻め込んだ。

 トーレスは、すぐにノイルから降りて指揮官だろう魔人族に近づく。


「父上! お待たせしました!!」

「トーレスか!?」


 トーレスが父親に事情を話そうとした時、再びノイルが羽を動かす。


「トーレス! あれはオレ達が何とかする! そっちは任せた!!」


 ノイルが上昇し、この場を離れていく。トーレスは、父親とキンタローを会わせたかったが、今は一刻を争う。また、この後でゆっくり会わせたらいいかと、考えた。


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