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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第7章 金と銀と魔人族
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SS  サフィエル達のその後

「熊型の魔獣だぁ?」


 サフィエルは、それを聞いて怪訝な顔をする。


「そうさね。初めは人族の(こんな)姿になった時は動き辛買ったがね」

「いや、そうじゃねぇよ。生き残った子供達とオレを助ける事がどう繋がるのかが、わからないんだよ。熊型の魔獣に知り合いなんて居ないしなぁ」


 サフィエル達は、歩を進めながら話をしていたが、片腕の男性が足を止めて何かを思い出す。


「もしかしたら、私達の子供の1人と関係があるのかも?」

「いや、だから魔獣に知り合いは──」

「いえいえ、違いますよ。私達の子供の1人は人族なのです」


 片腕の男性は、生前に人族の子供を拾って育てていた事を話す。サフィエルは、それでもわからない。人族との関わりなど多すぎて誰なのか。

 ただ、今こうしてここにいる事などを鑑みるとアルメイダが関係しているのは間違いなかった。


 そうなると、最近では1人の少年の事が頭を過る。こちらのミス……いや、それすらもアルメイダの故意かもしれない。死ぬはずじゃなかった、転生していったあの少年を。


 再び、歩を進めていたが、長身の女性が手で制して全員を止める。すると、脇道に全員を連れていき隠れた。


「どうした? 急に」

「静かに。後ろから誰か来るさね」


 後ろから? サフィエルは不思議に思う。ここまで、一本道だとは言わないが、確認と警戒をしてきた。


(もしかして、アリエルが……だったら止めないと!)


「なぁ……おい、もし──」


 声をかけた途中で、長身の女性が機先を制するべく飛び出す。慌ててサフィエルも追いかけた。


「わ! な、何なのだ!? いきなり!」


 飛び出した先にいたのは、銀髪のストレートで、スタイルのいい細身の女性だった。

 しかし、それ以上にインパクトだったのは、背中にある羽。その羽で浮いていたのだ。


 長身の女性が飛びかかろうとするが、サフィエルがしがみつき止める。


「ちょっと大きいが、もしかしてお前、妖精族か?」


 しかし、羽で浮いている女性は、その質問には答えず、彼女は、サフィエルを見て目を大きく見開き固まっていた。


「…………サフィエル」


 彼女がそう言うと、サフィエルは怪訝な顔をする。


「なんで知っている?」

「何を言っておる。ワタシだ。アリエルだ」


 羽で浮いている女性。それは、妖精族の長老だった。

 しかし、サフィエルは激昂する。


「アリエルだぁ? てめぇ、あいつの名前を語るとはいい度胸しているじゃねぇかぁ!!」


 サフィエルが長老に飛びかかる。


「ちょ、ちょっと待て! サフィエル、ワタシを覚えていないのか?」

「てめぇなんか、知るかよぉ!!」


 サフィエルの言葉に、長老は言葉を失う。


「チッ!! どうして避けようとしねぇ?」


 サフィエルの拳は長老に当たる寸前に止まる。長老の気の抜けてしまった顔を見て、毒気を抜かれてしまっていた。


「サフィエル……お前の言うアリエルと言うのは金髪で同い年位の子か?」

「!! なんで、知っている?」


 サフィエルは、長老に対して睨み付けるが長老は肩を落としたままだった。


「本当に覚えておらぬのだな」


 長老は、再開の喜びと忘れられた寂しさと複雑な心境だったが、自分が何故ここにいるのかを確認する。


(そうだ……ワタシは、あっちのアリエルに頼まれたのだったな……)


「サフィエルの知っているアリエルは、今ワタシの代わりに妖精族の長老をやっておる」

「な、なんでだ? 妖精族の長老って一体どこの……」

「イズーリア大陸と昔から呼ばれておる。サフィエル……お前も昔住んでいた所だ」


 サフィエルは『イズーリア大陸』と言われて、1人の少年の事を思い浮かべる。それも自分も以前住んでいた? 全く記憶にない。


「いくつか聞きてぇ事がある。八雲 恭二ってのを知っているか? イズーリア大陸に転生で送った人間なんだが」

「八雲 恭二? 転生? そう言えばキンタローがそんなに事を話していたな」

「キンタロー?」


 長老は、アリエルが妖精族として生まれた時、キンタローと話をした内容を伝える。


「くそぉ! アリエルめ、何を考えてやがる。いや、今はそれより八雲……キンタローか今は」


「ところで、そちらの者達は?」


 話に今一つついていけない長身の女性と男性、そして2人の子供。サフィエルは、自分を助けてくれた人達だと話す。


「何でも、元は熊型の魔獣だっていうから驚きだよ」

「熊型の魔獣?」


 長老は4人の姿をじっと見る。


「なるほどの。もしかして黒い髪の人族の子供を拾わなかったか? あともう1頭子供がいなかったか?」


 1人納得する長老。彼女は、キンタローから話を聞いている。少しずつピースが当てはまっていく。


 長老の言葉に最初に反応したのは、長身の女性だった。


「もしかして、2人を! 2人を知っているのさね」


 長老は、キンタローとクマゴローが初めて妖精の森に来た時の話をしてやる。


「じゃあ、2人は元気にやってるんさね」

「ああ。元気にしとるよ。そう言えば、今度子供が生まれるそうだ。お主らは、さしずめお爺ちゃんとお婆ちゃんだな」


 くくく……と、笑う長老に、安堵の笑顔を見せた長身の女性。子供達も「クマゴローと、キンタローだって。おかしいね」と笑いながらはしゃいでいた。


「ふぅ……取り敢えず、こんな所で立っていても仕方ねぇ。お前も一緒にきな。まだまだ聞きたい事があるんだ。……オレが、イズーリアに居た時の事とかもな」


 少し照れながらサフィエルはそう言うと、顔を隠すように再び走りだす。長老は、そんなサフィエルを見ると懐かしさを感じて、嬉しくなった。

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