77 絡み始める世界
妖精の森から数人妖精族を連れて、サイレントベアーに会いにいったキンタローとクマゴロー。
集まった5世帯14頭のサイレントベアーと共に、キタ村へと向かった。
クマゴローに慣れているとはいえ、キタ村の人々は、突然のサイレントベアーの集団に驚く。
キンタローは、トーレスと合流した後、村の主だった者を集めて、今後サイレントベアーと妖精族と協力するように話をした。
サイレントベアー達には3世帯がキタ村周辺に、ナギ村、ドワンゴ村に各1世帯を配置すると、一旦自宅に戻り、フラム達の様子を見たあとトーレスと2人で長老との話を相談する。
「エルフの遺体の有無……ですか? なるほど、盲点でしたね」
「トーレス、今この村は少なくとも1000人以上いる。もし、あっという間に村人を蹂躙するにはどの位が考えられる?」
トーレスは、目を瞑り考えを巡らす。
「倍、いえ3倍は必要ですね。ですが、完全に奇襲の場合はもう少し少なく見てもいいかもしれません」
トーレスの答えを聞いて、キンタローは完全な奇襲について考える。本来奇襲をするなら夜だ。特に月の灯りの無い夜。夢ではいつ奇襲されたかわからない。
だけど、キンタローは1つの可能性を考える。
それは、あまりにも非科学的な発想。しかし、非科学的な存在ならいる。それは、この地に転生してきたキンタロー自身。それに自分を転生させた者達。
ワープ。転移。本来この地には無い方法。しかし、キンタローがこの地にいる以上完全に否定は出来なかった。
だがこれは、あくまでも可能性の1つ。故に頭の片隅に置いとくこととした。
「キンタローさん?」
トーレスの呼ばれ、考え事をしていたキンタローはようやく顔を向ける。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもないよ」
「話の続きになりますが、サイレントベアーを仲間に引き入れたのは正解かもしれません。奇襲を防ぐためにも」
もし、可能性の1つで奇襲されれば、意味はない。キンタローは首を振り、余計なことを考えるのを止めた。
「トーレス、引き続き投石機と門の強化を頼む。オレはミカンを迎えに行くよ」
部屋を出て、クマゴローと合流すると玄関にはフラム達が見送りに集まる。
「フラム、オレが帰ってくるまで産むなよ」
「はは……そんな事はこの子に言ってよ」
フラムは、優しく大きくなった自分のお腹をさする。
「アン、ニナ、それにアマンダ。フラムとお腹の子の事、よろしく頼む」
「安心して行ってきてください。このアマンダがちゃんとお嬢様の事は見ておきますから」
アマンダの返事を聞きキンタローは安堵して、ミカンのいる妖精の森へ戻っていった。
道すがらキンタローはクマゴローに聞く。
『クマゴロー、たいへんだけどオレは今幸せというとを感じている。子供も産まれるしな』
『キンタローが幸せなら、オレは嬉しいよ』
『オレの幸せの中にはクマゴローが番になるのも入っているのだけど』
『バ……バカヤロー! オレの話はコレが決着ついたらだろうが』
『そうだな……クマゴローに今身籠ってもらったら困るし』
『あ……あひぃ!!』
クマゴローは、今までない位に変な声を出して動揺するのであった。
◇◇◇
妖精の森の入口の着き中へと入ると、長老のいる辺りから、まばゆい光が目に飛び込んできた。
キンタロー達は、急いで駆けつける。光の元はやはり、ミカンと長老であったが、長老は頬が痩け綺麗な銀髪は、輝きを失い白くなっている。
「こ、これは……?」
長老がキンタローに気づく。
「もうすぐだ、キンタロー」
ミカンは、気を失っているのか横になり、まばゆい光に包まれている。
その光に長老が手を当てていた。
「長老……どうしたんだ、その髪?」
「ふふふ……ワタシの残っている魔力を込めたのさ。ワタシの知識や記憶を引き継いでもらうためにね」
しばらくすると、急激に光が収縮したと思うと飛び散り、ミカンから離れた位置で再び集まってくる。
「くっ……思ったより小さいの!」
光は徐々に人形になっていくが、長老の言う通り小学生の低学年程度しかなかった。
そして、光が消えていきその姿を現す。長老は、想像していたより小さい事を嘆き、クマゴローは唖然と見つめている。
キンタローは…………信じられないものを見て、体の震えが止まらなかった。
光から現れたのは少女。妖精特有の羽を持っているが髪は金色をしている。
両サイドで髪を留めて、いわばツインテールになっていた。瞳の色は金色だが、表情は人形のように固く動かない。
キンタローの心臓がドクンと大きく鼓動する。緊張からか冷や汗が止まらない。しかし、体の震えを乗り越え一言発する。
「お前……アリエルか?」
ブックマーク、評価良ければお願いします




