75 懐かしいあの人は、ただの恐怖でした
『クマゴロー、ふらふら歩くなよ。危ないだろ』
『だ、だ、だ、だって、オレがオラが番なんで、考えた事ありませんですとよ』
『落ち着けって、言葉使いがおかしくなってる』
クマゴローは、真っ直ぐ歩くどころか、キンタローを乗せたまま立ち上がったり、急にその場をぐるぐる回りだしたりと動揺を隠せずにいる。
今まで、ずっと自分を守る事を優先してきてくれたクマゴロー。今のクマゴローを見て、嬉しくもあり、少し寂しさを感じるキンタローだった。
『キンタロー、次は長老様の所なの~? 湖が全然見えないの~』
ミカンが森より高く飛び上がり見渡すが、妖精の森の目印になる湖が見えず、キンタローの所に戻ってくる。
『み、ミカン! お前、成長したな!』
『え、えへぇ。そんなに、褒められると照れるの~』
今までのミカンなら、まず森より高く飛んで辺りを見回すなんて事を自発的にやることはない。そんな成長ぶりに、少し嬉しくもあり、非常に寂しさを感じるキンタローだった。
◇◇◇
そんなやり取りをしながら、途中で野宿をしたり、採取した木苺を含む果物を食べたりと懐かしい場所へとやって来た。
『久しぶりだな、ここに来るのも。なぁ、キンタロー』
『あぁ、本当はもっと頻繁に来たかったのだけど』
その場所は、キンタローとクマゴローにとって大事な場所。生い茂った雑草を取り除き積み重ねられた石の前に、途中で摘んだ花を手向ける。
積み重ねられた石の横には、ぽっかりと空いた洞穴。キンタローとクマゴローの育ったあの洞穴である。
キンタローは、静かに目を瞑り今まであった事を逐一、両親と兄弟へ報告する。クマゴローとミカンも、キンタローに倣い目を瞑った。
キンタローは、洞穴の中へ入り、暫く感傷に浸る。クマゴローも、外から洞穴の中で懐かしむキンタローを見て、あの小さかった子供がここまで大きくなったのかと、ついつい涙腺が緩くなった。
◇◇◇
洞穴を跡にしたキンタロー達は、昔遊んだ川へと着き、川を遡り妖精の森近くの湖を目指した。
湖に着くと対岸へと赴き、妖精の森の入り口である一本の木に手を当てると中へ吸い込まれる感覚になり、妖精の森の中央の大木へと出てきた。
『おいおい、どうなってる。これは?』
キンタローは、妖精族の生活の変化に驚く。それは、至るところに小さな家が建っており、キンタローの建てた東屋の横には、小さな噴水みたいな物まである。
「久しぶりじゃな、長老様に会いに来たのか?」
後ろから声をかけられ振り向く。そこには可愛らしい妖精がキンタローの鼻を、持っていた杖でつついてくる。
「えーと、どちら様?」
見覚えの無い妖精に声をかけられ、不思議に思うがミカンは違った。
「久しぶりなの~、元気なの~」
「見た目どおりじゃ」
(……“じゃ”?)
年寄り臭い喋り方、そして、飛んでいるにも関わらず杖を持つおかしな妖精。
「あーーーっ!! えーーーーっ!?」
驚きと疑問で頭がパニックになるキンタロー。それも仕方ない。この妖精こそ、長老の傍にいつもおり、長老長老詐欺で年齢詐称の老婆の妖精だと気づいた。
「いやいやいやいやいや、おかしいでしょ。何で、ミカンも普通に接してしてるのよ!」
ミカンと老──元老婆の妖精は、キンタローの質問に首を傾げる。
キンタローは、頭が痛くなってきた。
「も、もういい。ひとまず、長老に会おう。それからだ」
そう言うと、キンタロー達は元老婆の妖精と長老の元に向かって行った。
「おお! 久しぶりだの、キンタロー。随分大きくなったの」
「お久しぶりです、長老様」
長老は、いつもの大きな切り株の上で横になっており、少し頬が痩け、目の下に隈があり見た目からも体調が優れないのがわかる。キンタローは、起き上がろうとする長老を制止し、そのままでいいと伝える。
キンタローはその場に座ると、クマゴローとミカンも横に座った。
「早速、聞きたいことがあります。長老様」
「ん? なんだ? ワタシでわかる事なら何でも聞けばよい」
「この妖精の生態について」
キンタローは、ズバッと元老婆の妖精を指差す。
「ワタシにも、わからぬ」
「おい!」
「仕方ないだろ。徐々に若返っていって、ワタシもちょっと怖いかったぞ」
「…………それは、大変だったな」
長老は早々に答え、まさか、わからないと返って来るとは思わず頭が益々痛くなったキンタロー。自分の事を聞かれると思っていなかった元老婆の妖精は叫んだ。
「儂は……儂は……儂はまだ、20歳じゃあぁぁぁぁ!!」
「ぐっ…………!!」
嘘だと言い返す所だが、見た目が見た目な為キンタローは、歯ぎしりするしかなかった。
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