74 サイレントベアー同盟
キタ村を出発したキンタロー達。昔の様にクマゴローに跨がり、ミカンを懐に入れての旅である。
『久しぶりなの~、3人でお出かけなの~』
ミカンはとても上機嫌である。自分の事を長老に聞きに行くのが目的なのをすっかり忘れている。
『クマゴロー、重くないかオレ?』
『全然、平気だ。むしろオレは嬉しくて嬉しくて。うう……』
クマゴローは、キンタローの成長に喜び思わず涙をこぼす。キンタローは、お前はお婆ちゃんかと思いつつも黙っていた。
『しかし、こうして3人でいると今の状況が、昔では考えられないな』
『キンタローは、もうすぐお父さんなの~』
ミカンに言われて少しキンタローは照れる。
『はは、そうか……じゃあ、クマゴローは伯母さんになるって事だな、ミカン』
『何!? ミカン、誰がオバサンだ!』
『違うの~、ミカンじゃないの~』
昔よくした掛け合いに、キンタローは懐かしくもあり、今は減った事に少し寂しさを感じ、クマゴローの上で寝そべる。
『どうした? キンタロー?』
『いや、小さい頃こうして寝たなと思ってな』
クマゴローもキンタローの重みを背中に受けて嬉しくなる。
『あ、忘れる所だった。クマゴロー、長老の所に行く前に行ってもらいたい所がある』
『ん? どこだ、それは?』
◇◇◇
キンタロー達は、ナギ村を越えてドワンゴ村へと向かう丁字路までの道の途中、森の中に入っていった。
『たしか、この辺りで会ったと思ったんだけど……クマゴロー?』
『もう少し先だ。匂いを見つけた。けど、恐らく向こうも警戒していると思うぞ』
『怒らしたからなぁ』
『あれは、キンタローが悪いの~』
3人は、森の中を辺りを見渡しながら進んでいく。途中で待ち伏せも考えていたが、キンタロー達は無事に目的地にたどり着いた。
その場所は、昔住んでいた何処と無く似ている洞穴。その入り口には、2頭のサイレントベアーと2頭の子供のサイレントベアーが居た。
『あー、どうも。久しぶり』
キンタローは、クマゴローから降りて挨拶をする。
『そっちのには悪いが、ウチには雄の子供は居ないぞ。この2人は雌だからな』
挨拶をされたサイレントベアー。以前キンタローが気を利かしてクマゴローとお見合いをさせたサイレントベアーの親である。
『いやぁ、今回は違う。実はお願いがあってな』
『お願い? 人族のお前が?』
キンタローは、あくまでもお願いだと言い、話を始める。
それは、サイレントベアーの持つ探知能力を貸してもらい、村からエルフを警戒して欲しいとの話だった。
『私達が? 人族を守る為に? はっ! 無理だな』
『オレは人族を守ってとは、一言も言っていない。家族を守って欲しいと言うことだ』
キンタローの言葉に、不快感を示し殺気を高めていく。それに反応したクマゴローも同じく、牙を剥き出しに険しい表情になる。
一触即発に近い事態だったが、キンタローはクマゴローを落ち着かせ座らせる。殺気を出していたサイレントベアーは、キンタローの視線に合わせジッと見つめてくるが、キンタローはずっと視線を外さなかった。
サイレントベアーは、殺気を消しどっしりとその場に座る。自分に比べ冷静なキンタローを見て、自分が負けた気分になり、とうとう折れた。
『ふ~、どうしてそこまでエルフを警戒する? エルフなど森を走り回る鬱陶しい奴ぐらいだろ?』
キンタローは、首を横に振り事細かにエルフに対して説明をする。魔法で親を殺された事、盗賊紛いな事を始めた事、明らかに統率されており裏でコソコソと始めている事を。
そして、最後にキンタローは一言加える。
『このままいけば、近い将来エルフがこの森も世界も圧巻する可能性が高い。そうなれば、以前会った娘さんもそこにいる子供達も犠牲になる。あんたはそれでいいのか?』
『……わかった。協力しよう。何より家族を守る為だ』
『良かった。それじゃあ、右手を出してくれ』
サイレントベアーは、意味もわからず右手を出すとキンタローも右手でその手を取り握手を交わす。
『人族の挨拶だ。これからよろしく頼む』
『番で出ていった娘の場所もわかるし、知り合いにも声を掛けよう』
『オレは、これから妖精族の長老に会いに行く。連携を取る為にも、魔獣と人族の言葉がわかる妖精族は必要だし、協力も頼むつもりだ』
そう言い、キンタローが笑うとサイレントベアーも笑みを見せた。
ふと、サイレントベアーが何か思い付いた素振りを見せる。
『そうだ。これから協力するしていくのだし、早速1つ協力しよう』
キンタロー達は、何の事だかわからずに首を傾げる。
『そこのサイレントベアーに、番となれる雄を探しておこう。まだ、番では無いのだろう?』
『………………えぇぇぇ!? つ、番? オレが!?』
突然の提案に、今まで見せた事の無い位慌てふためくクマゴローだった。
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