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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第7章 金と銀と魔人族
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72 不運を回避しろ!


『……たろ…………ンタロー……おい! キンタロー!! しっかりしろ!』

「うわあぁぁぁぁぁっ!!!!………………はっ!」


 クマゴローに身体を揺すられたキンタローは、ベッドから飛び起きた。


「ちょっと、キンタロー大丈夫なの? 顔が真っ青よ!?」

「フラム?…………はぁぁぁ……夢……かぁ……」


 隣で寝ていたフラムは、心配そうにキンタローの顔を覗く。汗だくになり顔面はまさに蒼白で、目には涙が浮かんですらいた。


 フラムの顔そして膨らんだお腹を見たキンタローは、夢だったと安堵し、まるで子供の様に胸へと顔を埋めて抱きついた。


「ちょ、ちょっと……! ん、もう……そんなに、怖い夢を見たの?」


 フラムは、子供をあやすように頭を撫でてやる。しかし、フラムとキンタローは、何やら視線を感じた。


 キンタロー達の部屋で寝ていたクマゴローとミカンとアンリエッタとニナはともかく、キンタローの悲鳴で、駆けつけたプギーや、トーレス達が部屋の入り口にいた。


 二人は咄嗟に離れる。キンタローは、改めて無事だったフラムとアンリエッタの顔を見る。しかし、突如夢で見た光景と重なり合う。


「……うっ!!」


 キンタローは、胃から逆流する物を感じ口を手で押さえるが、堪えきれずその場で吐いてしまう。


「ぐぇえっっ……ッがはぁぁぁ!」


 フラムは慌てて背中をさすってやり、アンリエッタは水を用意する。


 結局、その日キンタローは寝れずにフラムとアンリエッタの存在を確かめる様に抱きしめながら、朝を迎えた。




◇◇◇

 いつの間にか朝になった事に気付いたキンタローは、自分の書斎兼村長室に1人で閉じ籠もる。

 周囲は、キンタローの今まで見たこと無い状態に、夢の内容をとてもじゃないが聞き出せず、ただ心配をしていた。


 キンタローは、頭を抱えながら夢の内容を思い出す。余りにもリアルな夢の映像に何度も吐き気を覚えるが耐えている。キンタローは、背筋に寒気を感じながら、1つの言葉を思い浮かべる。


 それは『予知夢』


 余りにも非現実だったが、幾つか気になる点が夢にはあった。


 1つ目は、魔人族の領域からの帰り道から夢が始まったこと。

 まだ、行った事のない場所からの帰り道にクマゴローと話をしていた。しかも、夢の中でその場所を懐かしむ様に思い浮かべながら。


 部屋に閉じ籠もる直前に、トーレスにここへは船を使って来たのかと聞いた。


 答えは肯定だった。しかも、今までは、釣りをする小舟しかなかったが、今回初めて大型の帆船を使いバルト川を渡ったと。


 もちろん、バルト川の存在は知っていたが、ジャンから魔人族の領域へ商売で向かう時、迂回するという話をしたことがあった。


 2つ目は、ニナとノイルが出て来なかった事。魔人族領へは、ノイルかニナに乗せてもらうつもりでいた。

 しかし、夢ではノイルも、ニナも、出て来ていない。ニナが1人でフラム達から離れるのは考えにくい。つまり、ノイルとニナは一緒に魔人族領に行き、まだ残っていてキンタローとクマゴローの2人で帰って来たことになる。 


 3つ目は、フラムの抱えていた赤ん坊。確かにフラムは現在妊娠中で、近々出産の予定だし、魔人族領に向かうのもそれからだ。

 一見辻妻は合っている。しかし、夢の中の話だ。辻妻が合いすぎている。

 それが、却って違和感を感じていた。


 もし、これが本当に『予知夢』なら。そう考えると、一度は暗い顔をするが、やがて目に光が灯る。


 ふざけるな! ふざけるな! ふざけるな! もう、何1つ奪わせないと。『不運』な『予知夢』を絶対回避してやる! そう心に誓うキンタローだった。




◇◇◇

 キンタローが書斎から出ると、部屋の前にはキンタローを心配して、多くの人が集まっていた。


 その光景を見て、改めてこの大事な人達を守ろうと決意する。そして、夢の内容をその場で皆に話をした。


 初めは所詮夢の話だと高を括っていたが、キンタローの真剣さと夢の内容のリアルさ、キンタローの気付いた点に少しずつだが、信憑性を帯びてくる。


「キンタロー、なんでミカンは出て来ないの~? 寂しいの~」


 不意に、ミカンが手を挙げて聞いてくる。そして、キンタローは最大の違和感に漸く気付いた。


 何故、いつも一緒のミカンが居なかったのだと。


 ただ夢の中だから出なかった? 魔人族領に残った? 普段自分にベットリなのに? キンタローは、この『予知夢』を回避する鍵が実はミカンなのじゃないかと思い始めた。


 不意にトーレスが、もし心配なら魔人族領に来るのをだいぶ遅らせても構わないと言うが、キンタローは拒否する。大幅に変えてしまうと、新たな『不運』が来てしまうのではと考えていた。


 キンタローは、何か手はないかと目を瞑り考える。トーレスも何か知恵を貸せないかと目を瞑り考える。


「やっぱり、似てるわね」


 

 フラムは、2人を見比べて、誰にも聞こえない位の声で、そう呟いた。

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