表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第7章 金と銀と魔人族
84/121

71 悪夢


(今は、言えないですね。私達がキンタロー()を捨てたんですから……だけど、いつか……)

「……レス、……トーレス! 聞いているのか?」


 キンタローの呼び掛けにハッとしたトーレスは、すぐに謝罪して誤魔化す。

 トーレスがキンタローを弟と確信した後、トイレから戻ったがずっと頭の中は、その事で一杯だった。


「すいません、ちょっとボーッとしていて……」

「旅の疲れかもな。とりあえず、今すぐ魔王に会うのは無理だって話だ。子供の事もあるしな。最短で2ヶ月くらいは見といて欲しい」

「わかりました。それでは、魔王様に会談は4ヶ月後位になると連絡を──」

「ん? ああ、連絡送るだけ無駄になるかもしれないから止めといた方がいい。子供が産まれたらすぐにでも出発すれば数日とかからないだろうし」


 トーレスは、話が見えないでいた。ここから魔王のいるエアリーズまで最短でも2ヶ月かかる。それを数日と言った意味がわからなかった。


「あ。ああ、そうか。いや、うちには竜人族がいるんだよ。背中に乗せて行って貰えばすぐだ」

「りゅ、竜人族ですか!?」


 あとで、トーレスにも会わせると約束し、一先ず旅の疲れを取るように促し、キンタローとトーレスの会談は終わった。


(弟に、幻の竜人族ですか……今回の旅は本当に実りが多い)


 トーレスはとても満足している。しかし、その9割がキンタローの事で、残り1割は竜人族に会えるという自分の知識欲だけだ。

 魔王の事は、すっかり、これっぽっちも頭になかった。


 会談が終わり、ゴルザに食事の用意をするように伝える。テーブルには、既にトーレスの連れの魔人族2人が出来上がっており、その間にはハンスが何故かいて意気投合していた。


「キンコも待たせてすまないな。ところで、誰だ!? ハンスを呼んだのは?」


 リビングにいた全員が首を横に振る。


「別に呼んでないわよ。2人にお酒を用意したら現れたのよ」


 フラムの答えに、呆れつつも意気投合しているのを見て、後で褒めてやるかと思うキンタローだが、調子に乗りそうなので、すぐ考えを改め、席に着いた。


「キン……これ……」


 キンタローとトーレスの席の間に、ニナが飲み物を持ってくる。ニナの頭を撫でてやると嬉しそうに目を細めた。


「魔人族の娘ですか……」


 トーレスがニナを見て呟く。


「いや、ニナが竜人族だ」

「はぁ……はあぁぁッ!!!?」


 トーレスの切れ長の目が飛び出るのかと思う位に見開く。


「は、はは……僕は、ここに来て驚いてばかりですね」


 トーレスが自嘲気味に笑うしかない。食事が始まり、キンタローとトーレスが並んでいるのを正面から見ていたフラムは、首を捻る。


「フラム姉さん、どうかしましたか?」


 隣にいたアンリエッタが心配そうに覗き込む。


「え? ああ。アンちゃん、何でもないわ。ただ……何故かしら? 似てるなって思っただけ……」


 再びキンタローとトーレスを見るフラム。アンリエッタも2人を見るが首を捻る。


「そう……ですか?」


 フラムも理由までは、話せなかった。ただ、見た目ではなく、雰囲気でもなく、纏っている空気感が似ているように思えた。


 食事が終わり、トーレスの連れはハンスと繁華街へ飲みに行き、トーレスに部屋を用意する。


 初の魔人族との邂逅は、無事に終わった。



 



◇◇◇

 キンタローとクマゴローは、魔人族の領域からの帰り道。あと数分もすればキタ村の門が見えてくる街道を歩いていた。


『あの、船とか言う乗り物は懲りたよ、キンタロー』

『はは、船酔いして、ずっと気分悪そうにしていたしな』


 2人が帰り道にあった事を話し合いながら歩いていると、突然クマゴローが止まった。


『どうした? クマゴロー?』

『血の……臭いがする!』


 キタ村まで、あと少しの所にいたキンタロー達は、嫌な予感を感じて、村へと走り出す。


 門に着くと、驚くほど静かで声の1つもない。門番は、軒並み倒れており門も何かで壊されている。キンタロー達は、門をくぐり村に入ると悲惨な光景が目に飛び込んできた。


 門近くには、衛兵と村人の死骸が転がり、何かで斬られた者、何かで心臓を貫かれた者、そしてオンドリーや父熊と似たような状態の者。


「誰かぁぁ! 居ないのかぁ!」


 キンタローは、叫びながらも顔色は悪くなり、村人の遺体を見つける度にガリガリと心を削られるのを感じた。


 途中、しまりす亭に入ると二階へ逃げようとしたのだろう、シロサイの死体が階段に転がっている。食堂を覗くと、親衛隊の亡骸はあったが、ゴルザが見つからない。


 ゴルザが生きている可能性が少し湧いたキンタローは、自宅へと急いで戻る。


 しかし、自宅に着いたキンタローの目に、飛び込んできたのは、門前で踏ん張ろうとしたのだろうゴルザの遺体が転がっていた。


 僅かな希望を失ったキンタローは、壊れた扉を押し退けて中に入る。

 そこには、クロウの、プギーの、チキンバードの、リリの惨たらしく殺された遺体があった。


 キンタローは、急いで二階へと上がると、自室の扉の前にハンスの遺体がある。それは、ここにフラム達が居るのを指しているようだった。


 ヨロヨロと足元が覚束無く、扉に近づき開ける。


「!!!!」


 そこには、明らかに乱暴された跡のあるフラムとアンリエッタの痛々しい遺体があった。


 フラムは、産まれたばかりの赤ん坊を庇うように抱き抱え、後頭部から大量の血だまりの中に倒れている。

 アンリエッタも、フラムを守ろうと覆い被さりながら、首には縄が巻かれていた。


「う、う、うわああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」


 キンタローは立ったまま、頭を押さえ絶叫した。

ブックマーク、評価良ければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ