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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第7章 金と銀と魔人族
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68 動きだす歯車


「ほら、村長。会議に遅れちゃうっす」


 未だ自分とフラムの初めての日の話をされて、悶えているキンタローを、アマンダとクロウが引っ張って会議室へと向かった。


 今日の会議は、キタ村にとっても大事な会議であった。


 このキタ村や、ナギ村は獣人達の村だが、その獣人の中には虎やライオンを始めとする猛獣の獣人がいない。全くではないが、キタ村に住んでいる者はいなかった。


 元村長に、話を聞くとキタ村の北に小さな村を作ってそこに、虎やライオンと言った猛獣の獣人は住んでいるとの事だった。


 初めは、一緒に住んでいたらしいが、元村長が産まれるずっと前に、1人の猛獣の獣人が起こした事件がきっかけで、危険だと扱い迫害されて、追い出されたとの事だった。


 全く交流が無いわけではない、しかし、お互いにどこか根深いものがあり、一歩を踏み出せないと聞いたキンタローは、新村長として挨拶に向かった。


 その頃、猛獣の獣人の村も新しく若い虎顔で女性の獣人がリーダーとなっており、3年をかけて徐々に交流を深める事となった。


 そして、今日で3年が経ち2つの村は合併する為の会議が行われる。


「お待たせしたっす、キンタローさんが駄々っ子になって、しまって遅れたっす」

「誰が、駄々っ子だ! いいか、クロウ! お前も子供出来たら──」

「キンタローさん、先方はもう来ております」

「あ……」


 今回の会議に呼ばれたジャンに(たしな)められ、キンタローが会議室のテーブルに虎顔の女性が座っているのに、気がつくと身だしなみを整え何事もなかったかのように、テーブルについた。


「あーいや、その、遅れて申し訳ない……アニ村の村長」

「あっはっは!! いやいや、あたいも子供がいるからね。気持ちはわかるさ」


 豪快な笑い声でキンタローの正面に座る虎顔の女性が、猛獣の獣人の村、アニ村の村長で、名前をキンコと言う。


 キンコは、おもむろに立ち上がり、キンタローの側へとやってくると、右手を差し出してくる。キンタローも立ち上がると、その右手を取りがっちりと握手を交わした。


「3年……長かったな、キンタロー村長」

「ああ……お互いに徐々に交流させて、わだかまりを解いていく。3年と期限は区切ったが、正直それ以上かかると思ってたよ。あんたが、積極的に交流してくれたお陰だ。ありがとう、アニ村の村長」

「あっはっは。キンコでいい。あたいは、もう村長じゃなくなるのだし、でも、あたいもキンタローと呼ばせて貰うよ。なにせ、堅苦しいのは苦手だ」

「キンタローさん、キンコさん、それでは、契約書の内容を読み上げます」


 ジャンが合併のために、事前に作った契約書を読み上げていく。


1、合併するにあたって、キタ村は、アニ村までの街道の整備、生活水準の向上、経済的な支援を行う。


1、アニ村は、キタ村の警備の為に人材を派遣する。


 次々と細かい契約書を読み上げていくジャン。しかし、キンタローとキンコは、先の2つの条件以降ほとんど聞いていない。2人にとっては、それら以外は問題ではなかった。


 アニ村は、他と交流が少ないせいで、生活水準が低く、食料もかなり厳しい状況にある。キタ村は、エルフに対抗するために、猛獣の獣人の身体能力が欲しかった。


 2人は、それぞれの契約書に署名をし会議は、無事に終了となる。すぐに帰るかと思われたキンコだが、辺りをキョロキョロと見回す。


「キンコ、どうかしたか?」

「あ~、いや、ゴルザは今日は来てないのかと思ったんだよ」

「ゴルザなら、しまりす亭にいると思うぞ。会いにいけば、いいじゃないか?」


 会いにいけと言われて、キンコは、ばつの悪そうな顔をする。キンコとゴルザが知り合いなのは、初めに挨拶にアニ村をゴルザと共に訪れたときに聞いている。なのに、キンコの態度を不思議に思っていた。


「だったら、オレが連れてこようか?」

「そ、そうか! それは助かる!」


 不審な態度を取っていたキンコは、キンタローの肩を叩いて、連れてきてとお願いする。キンコはゴルザに会うのが問題なのではなく、しまりす亭に行く事に抵抗があるとキンタローは睨んだ。


「条件が、1つだけ。なぜ、しまりす亭に行きたくないのか教えてくれ」

「え!? そ、それは……ゴルザの娘さんに、会いたくないんだよ」


 キンコの顔が赤い。それは、誰が見てもわかるくらいに。キンタローは、ちょっと待ってろと会議室を出ていく。そして、再び入ってくるとアンリエッタも連れて来た。


「ぎゃあああ!!」


 キンコは、驚き叫ぶ。キンタローは、アンリエッタを自分の婚約者だと紹介し、キンコもこれから頻繁に会うことになるのだから、慣れろと説明した。


 キンコは、キンタローとアンリエッタに、自分は以前からゴルザに惚れていたと話をする。自分も今は独り身で、あわよくばとちょっと思っていたと白状し、アンリエッタに謝った。


 アンリエッタは、首を横に振りながらキンコの手を取り、お父さん次第だとキンコの想いを認める。そして、アンリエッタ自身もキンタローの第2夫人になる事を話し、フラムに対して特に嫉妬などはないが、気持ちはわかると伝えた。


「はぁ~。キンタロー、あんたこんなにいい娘を娶るのに、第2夫人にするとはねぇ」

「2人共、オレには勿体ないくらいだよ」


 アンリエッタの頭を撫でながら、キンタローは微笑んだ。


 その時、突然会議室の扉を勢いよく開けてゴルザが飛び込んできた。


「あれ? おっちゃ──」

「──キンタロー! 大変だ!! 急いで来てくれ!!」


 息を切らし、かなり慌てた様子で話すゴルザを落ち着かせようと、声をかけるその前に、ゴルザが話しだす。


「ま、魔人族の使者がやって来たんだ!!」




◇◇◇

 キンタローは、全員を集めて魔人族を引き留めてる門へと向かった。


 門に到着すると、そこには門番とフードを被った3人がいる。しかし、そのフードからは、全員2本の角が見え、魔人族だとすぐにわかった。


 フードの1人がキンタローに近づいてくる。大人のジャンやゴルザ、強そうなキンコがいるにも関わらず真っ直ぐに。

 近づいてきた魔人族がフードを取ると、肩まで伸びた銀色の髪と、銀色の瞳。その顔立ちは、女性にも見える美形だが、体型と声で男性だと気づいた。


「はじめまして。キタ村の村長ですね? 僕は────」

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