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閑話1 アブラボウズ

プロローグ直後のお話。


「バレて……ないよな?」


 八雲が目の前から消えて、サフィエルが心配そうにアルメイダに尋ねる。


「大丈夫ですよー」


 アルメイダはあっけらかんと答えて、転生場所のスロットの前に立ち、扉を開ける。

 中からリールを取り出すと、そそくさとリールに貼ってあるシールを剥がしていた。

 剥がしたシールには全て《イズーリア大陸》と書かれてある。


「アリエルさんも、ご苦労様でした。急遽考えた作戦にしては上手くいきました。何せ彼が押すと種族が《虫》に成りかねないですからねー。彼にボタンを押させないようにアリエルさんが上手くやってくれました」


「完璧」とアリエルが親指をグッと立てる。


「そうそう、アリエルさん?私に腹パンするのも、作戦の1つだったのよね?」


 アリエルは、「もちろん」と言うと目線を逸らした。




◇◇◇

「そもそも、アイツ(八雲)が死んだのってアルメイダ様のせいだよな?」


 サフィエルがジト目でアルメイダを見る。


「たまたまですよ、たまたま。だって、そうしないと《ハリマオ》ちゃんが轢かれたんですよ」

「なんだよ、その《ハリマオ》ってのは」


 呆れて頭を抱えるサフィエルだった。




◇◇◇

 話は八雲が死ぬ少し前に戻る。


 サフィエルは椅子に座り、目の前にあるタブレットのモニターを見ていた。


 モニターに映る死ぬ前の八雲を見て、サフィエルは頭を悩ます。


 (ったく……何なんだコイツは?何故、操作しても不運を回避出来ないんだ?)


 サフィエルが、目頭を押さえ椅子にもたれ掛かり一息つく。

 横を見ると、アルメイダが寝転びタブレットを見ながらお菓子を食べていた。


(チッ……コイツは……)

「おい、アルメイダ。菓子食いながらモニター触るなよ。ミスるぞ」


 サフィエルは、少しイラついていた為アルメイダをつい呼び捨てしてしまった。


「一応、最近女神に昇格したんですから呼び捨てはどうかと思いますよ。まぁ気にしませんけど。それよりサフィエルもこれ食べますか?美味しいですよ」


 アルメイダは食べていたスナック菓子の袋を差し出す。



 《ポテチ 期間限定あぶらぼうず味》



 アブラボウズ:ギンダラ科アブラボウズ属。深海魚。白身のトロのようで、結構美味。体の40%が脂で食べ過ぎるとお腹をこわす。



 サフィエルは恐る恐る袋に手を入れると、袋の中は油でギトギトだった。

 触っただけで、食べる気を失う。


「よく、こんなの見つけたな」


 アルメイダは口の周りをギトギトにしながら、アリエルの土産ですよと。


 アリエルを見ると横を向いて知らんぷりしている。


 (コイツ………イタズラ目的で渡したな。そしたら逆に気に入ってしまった。そんなとこか)

 

 サフィエルが手に付いた油を洗い流し、椅子に座り直す。

 モニターを見ると、そこには随分落ち込んだ八雲が映っていた。


「あ」

「え!?」


 それは突然だった。

 横断歩道をボーッと歩く八雲に対して正面から自動車が突っ込んでくる。

 まさか横断歩道に対して、突っ込んで来たはずの自動車が急にほぼ90°曲がって八雲にぶつかる。

 あまりにその動きは不自然だ。


「おいぃぃ!アルメイダどうすんだ、これぇ!?」


 サフィエルの怒号が響く。


 自動車を動かしたのは、アルメイダである。


 自分の担当している《ハリマオ》が、轢かれそうになり、誰もいない所に動かすつもりが、油で手が滑った。


 二人が慌ててあたふたしてると、アリエルが手を挙げる。


「転生させる」

「「それだーー!!」」


 サフィエルとアルメイダは同時にアリエルを指差し叫んだ。




◇◇◇

 今三人は、八雲の転生の為に準備をしている。


「転生用のスロットは激甘で良かったよな?」


 サフィエルがアルメイダに尋ねるが返事がない。

 アルメイダを確認すると、ゴソゴソと何かしてる。


「おいぃ!もうすぐ来るんだぞ!何してんだよ?」


 アルメイダは振り返ると、ニヤリと笑っている。


「ふふ……、どうせ転生させるなら《イズーリア大陸》にしませんか?あそこならバレませんし」

「えっ……?いや、しかし、どうやって?」


 アルメイダが手に持っていた紙を裏返すと、そこには《イズーリア大陸》と沢山書かれた、シールになってる紙だった。


 アルメイダがリールを取り出し、シールを貼る。


「せっかく《イズーリア大陸》に行ってもらうんですから、種族は《人間》かそれに近いほうがいいかもしれませんねぇ?でも、八雲()なら《虫》を引いちゃいそうですね」

「ああ。でも、アルメイダ時間ないぞ。どうするんだ?」


 アルメイダの提案にサフィエルは賛同したが、もう時間がない。


「そうですねぇ、種族はサフィエルさん、あなたが押してください。それと、アリエルさんは八雲()に押させないようにしてください。やり方は任せます。スキルは八雲()に任せちゃいましょう」


 アリエルが「まかせて」と親指をグッと立てた。




◇◇◇

 そして今に至るのである。


「粗方、上手くいったから良かったじゃないですか」


 アルメイダがそう言うと、何処からか取り出した例のお菓子の袋を開ける。


「少しは反省しろ!!」


 サフィエルが怒り任せに袋を蹴り上げると、真上に舞った袋から中身が飛び散った。


 三人は油まみれのまま立ち尽くしていた。

  

いつも読んでくださりありがとうございます。

次話から第2章になります。


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