閑話4 サフィエル達は今 後編
「はぁ……はぁ……あんたが、サフィエル……かい?」
突然、扉を壊し入って来た2人の男女と2人の子供。サフィエルは、唖然としてしまっていたが首を縦に振る。
背の高い女性は、肩で息をしているのを整えるように深呼吸をして、再びサフィエルを見据える。
「サフィエル、あんたを助ける様に言われて来たんだ。さぁ急いで出よう」
女性が、サフィエルの腕を掴み部屋から引っ張りだす。
「ちょ……ちょっと待ってくれ。おい! アリエル! 行くぞ!」
サフィエルが、部屋の外から声をかけるが、返事がない。女性の手から腕を払い、部屋に戻るとさっきまでパソコンの前にいたアリエルの姿はなかった。
「おい! アリエル! 何やっているんだ!? 行くぞ!」
しかし、アリエルの返事はなく、部屋を探し回るが姿がない。
「サフィエル、行くよ!」
女性が後ろからサフィエルの肩を掴むと、サフィエルは女性の方を向き、叫んだ。
「ま、待ってくれ! まだ、ここにアリエルがいるんだ! アイツを置いてはいけない!!」
「サフィエル……あたし達は確かに女の子2人を助ける様に言われて来た」
「そうだろ!? だから、アリエル……」
長身の女性は、首を横に振る。
「だけどね、あたし達が入って来た時にはサフィエルしか居なかったよ」
「な!?」
女性の言葉が信じられず、目を見開き怒鳴りつける。
「何言ってるんだ!! さっきまであそこに居ただろうが!?」
「あたし達は探知する能力に長けてる。ここに入る前からあんたしか部屋の中から探知してないよ」
「母ちゃーん、他に誰も居ないよー」
男性も子供達も、部屋を探し回ったが誰も居ないと言う。サフィエルは、それでも信じられない。何故なら、パソコンのモニターは、起動している……
「どこ行っちまったんだよ、アリエル……」
力なく膝から崩れ落ちるサフィエルだった。
◇◇◇
サフィエルを、2人の男女が励まし、若干、足元が覚束ないが立ち上がる。
「さぁ、行こう。あまりゆっくりも出来ないしね」
サフィエルは先ほどまでアリエルの場所を見ると、アリエルが、自分に何かを言っている姿を見た気がした。
──サフィエル、バカ? さっさと行く──
「アイツは……全く……居なくなっても、バカにしやがって……」
サフィエルは、自分の両手で2度頬を叩き、気合いを入れる。そして、助けに来てくれた4人と共に部屋をあとにした。
(アリエル……また、どっかで会えるよな……)
◇◇◇
サフィエルと助けに来た4人は、部屋を出て長い長い階段を昇っていた。
「そういや、オレを助ける様に言ったのは誰なんだ?」
「すいません、言わない様に口止めされているのです」
サフィエルの質問に、長身の片腕だけの男性が答える。しかし、サフィエルに心当たりはあった。
口止めしているということは主神様が関与している事を差し示している。
「じゃあ、あんたらは何が目的なんだ? そもそもあんたら誰なんだ? それも言えないのか?」
「あはは……っと失礼。質問ばかりなので、ついね。あたし達の目的は子供達の為だね」
「子供? 後ろの2人か?」
長身の女性は、首を横に振る。そして、少し表情が曇ったのをサフィエルは、見逃さなかった。
「もう2人……いるんだよ、大事な子供達が。あんたを助ける事が2人の為になるって言われてね」
「オレを助ける事が? よく、わかんねぇな。大事な子供達なんだろ? なんで、一緒にいない?」
長身の女性は、表情をますます曇らし黙ってしまう。サフィエルも、ちょっと不味い事を聞いてしまったかと思った。
「「兄弟は、まだ生きてるからだよ」」
後ろからついて来ていた2人の子供がハモって、教えてくれた。
「じゃあ、あんたらは死んでいるって事か?」
「多分……だがね。父ちゃんや、後ろの子供達が死んだのをあたしが見てたからね。正直、あたし達もわからないのさ。なんで、人族の姿で今ここにいるのか」
サフィエルと4人は、ゆっくりと歩みを止めた。
「人族じゃなかったのら、何だったんだ?」
「あたし達は、以前は熊型の魔獣だったのさ」




