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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第6章 白い竜と黒き竜と村長
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閑話4 サフィエル達は今 前編


 サフィエル達は、気絶させられた後、どこかの部屋へと閉じ込められ、かなりの時が過ぎていた。


「くそっ、固い扉だな! 開かねぇ……」


 サフィエルは、目の前にある扉に体当たりするも、その小さな体では、びくともせず苛立ちを覚える。どうにかならないかと、部屋を見渡すが灯りは常についてあるが、窓などは無い。あるのは、大量の媒体が並ぶこれまた大量の本棚と、恐らくそれを閲覧する為のパソコンみたいな物、そしてそれをずっと弄っているアリエルだけである。


 サフィエル達は、女神候補だが何か特別な力があるわけではない。栄養など取らないでも平気だが、流石に疲れはやってくる。


「くそっ、大体なんで守備隊の奴らがアルメイダに肩入れしてんだ! くそ!」

「慌てても仕方ない」

「でもよぉ……ここに閉じ込められてどれくらいだ? そもそもここは何処なんだよ? 見た事ないぞ」


 アリエルは、サフィエルに目を向けず、ずっとパソコンみたいな物に向き合っている。とうとう、アリエルの落ち着きっぷりに苛立ちだした。


「なんで、アリエルはそんなに落ち着いてんだよ! アルメイダが何かしようとしているのに、守備隊までアルメイダに味方して!」

「守備隊が味方してるなら、こんな所に閉じ込めない。サフィエルはプチュンされてる」

「プチュン言うな! それにオレだけかよ!」


 アリエルは、未だにモニターから目を離す事はない。サフィエルは呆れ気味に、唯一ある扉を背に座り込んだ。


「そもそも主神様(あの方)は、何でアルメイダを見逃している?」


 しかし、やはり寂しいのか退屈なのかアリエルに話かけてしまう。


「我関せずが、モットー。だから表立っては動かない。守備隊は、主神様(あの方)の管轄。だから助けはくる」

「助け……か。だったら守備隊の奴らが助けてくれりゃいいのに」

「守備隊が助けたら、主神様(あの方)が動いたも同じ。ここに閉じ込めたのは、必ず意味がある。そんなのもわからない? サフィエル、バカ?」

「ぐっ…………」


 モニターから目を離す事なく首を傾げるアリエルに、サフィエルは何も言えない。仕方なしに、他に何かないか探そうと立つ。


「サフィエル、サフィエル」


 アリエルが、手招きしてモニターの所にサフィエルを呼ぶと、何かと思いモニターを覗きこんだ。


「な!? 何だ、これは!?」

「多分、これが守備隊が見つけて欲しかったもの」


 サフィエル達は、モニターの内容を見て目を疑いたくなった。




──イズーリア計画──


 各世界からの大量の魂が入って来た為、各世界の神々が困惑した上、システムがエラーを起こす。尚、原因は不明。

 各世界の神々が、新しい世界を作り、そこを魂の仮置き場として魂を様々な種族に転生させる。

 新しい世界はイズーリアと名付け、新システムの元、管理を行う。

 以後、この計画をイズーリア計画と呼ぶ。




「な!? イズーリア? こんなの聞いたことないぞ?」

「まだ、続いてる」


 サフィエルは、読みながら眉間にシワが寄っていく。アリエルも平然とした顔をしているが、纏う空気に怒気をはらんでいた。

 



 種族として各世界に多い、人間、ドワーフ、獣人、魔人を主として、他に数十種類の種族に転生させる。


 システムエラー発生。人間がシステムには無い力を持ち、ドワーフ、獣人、魔人、少数の種族を蹂躙し始める。


 システムエラー発生。人間と他の種族との間に出来た子供は、全て人間である事が判明。人間が爆発的に増え、人間による蹂躙が止まらない。尚、原因不明の魂の流入は止まる。


 システムエラー発生。システムに何者かの介入が発覚するも、既に掌握されている事が判明。システムエラーの原因である人間の排除を決定する。


 人間以外の種族を一時保護。一部の土地に移動させ人間が介入出来ないようにする。尚、この計画の凍結が決定する。


 人間だけを排除するシステムを導入。尚、この計画で人間の排除が済み次第、イズーリアの放棄が決定する。


 人間の排除が完了。システムのエラーが無くなり、他の種族の生活に影響が無いのを確認。システムが掌握されている様子も無いのを確認。今後は、傍観者を1人置き、全神々が居なくなる。尚、傍観者はあくまでもイズーリアの最後を見届けるだけで、関知せず、見る事もさせない。



「どういう事だよ、これは……」

「サフィエル、ここ」


 アリエルが指差すのは、この計画の関係者一覧。流石に全世界の神々の名前は書いていないが、そのなかに2人が唯一良く知っている名前があった。


──アルメイダ──


「く……ここでもアイツか……しかし、イズーリアは神々がいない世界だとは知っていたが、まさか放棄とはな」

「おかしい」

「何がだ? アリエル」

「どうして、アルメイダは八雲をイズーリアに、しかも人間として転生させた?」


 サフィエルは大きく目を見開き、アリエルを見る。


「そうだ……そうだよ! 八雲の不運の事を思えば、種族を虫などにしない様にするだけで良いはずだ! だけど、イズーリアの事を知っているアルメイダは、イズーリアに人間として行かせる事を優先させた事になる」

「誘導された?」


 サフィエルは、八雲を転生させる直前の事を思い出す。


(転生させると決まった時、イズーリア大陸を指定したのは…………アルメイダだ。そこから虫にさせない為にアリエルに八雲を止めさせ、オレが人間を押す事を指示したのも……アルメイダだ! くそっ、手のひらかよ!!)


 サフィエルは、自分の不甲斐なさに激しく後悔する。転生の件だけではない。八雲が死んだ原因は、アルメイダだ。全てにおいて、踊らされていたのかと唇を噛むしかなかった。


「く……そぉ」


 悔しくて情けなくて、部屋の扉を何度も叩く。


 その時、扉の向こうから大きな音と振動がして、サフィエルは扉から離れる。更にまた大きな音と振動がして扉にヒビが入る。そして、遂に扉が粉々に吹き飛び、閉じ込められていた部屋の入り口が開いた。


 壊れた扉の前には、2人の背の高い男女、そして、2人の子供が立っていた。

 

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