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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第6章 白い竜と黒き竜と村長
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66 あれから──

 キンタローが村長になり、キタ村は大きく様変わりをした。


 村の中を歩く人達は、獣人だけでなくドワーフの赤い髪もあちこちに見える。中には、獣人の男性とドワーフの女性が手を繋ぎ、仲睦まじく歩く姿もあった。


 これは、何もキタ村に限った話ではない。ドワンゴ村もナギ村も同じである。


 キタ村の正面には立派な門があり、村を囲むように柵と物見台があり、村の奥の丘には物見小屋も完成していた。



 キンタローが村長になり、3年の月日が過ぎようとしていた。




◇◇◇

 ドワンゴ村のラウザ工房は現在リベルが親方をしている。物見小屋が完成し、ミネアがドワンゴ村に戻って来た時、フラムも一緒に帰宅した。


 フラムは、職人組合の会合を開き、今後はドワーフと獣人の混血の子供が増えるので、ドワーフしか親方になれない慣習の撤廃を提案する。幾らか反対は出たものの、キタ村に門や物見小屋を作る手伝いをした親方達が賛成した為に撤廃になった。


 直後、フラムがラウザ工房の親方を父リベルに譲ると宣言し、反対する理由を無くした為に全会一致で認められる。

 フラムは、ラウザ工房の支店をキタ村に作り、そこの職人となりキタ村に移住することとなった。


 この3年で、ラウザ工房では3つのお祝い事があった。




◇◇◇

 キタ村のしまりす亭では、現在ゴルザが食堂をほとんど1人で切り盛りしており、宿の受付にはシロサイが座っている。ナギ村の店を潰してしまったシロサイは、キンタローを頼ってキタ村へとやって来て、しまりす亭で雇われる事になった。


 ゴルザは、現在顔役を降りている。同じ獣人族、娘のアンリエッタがキンタローの婚約者である事をあげ、キンタローから降りる様に言われたのだが、ゴルザは嫌な顔1つせずに受け入れる。後任にはノイルが就いた。


 ジャンも同じであった。元々、商売をしているジャンを、キンタローが頼って秘書みたいな形だったが、新しく後任が出来た為に商売に専念することにした。


 後任には、タカさんの子供ワシの獣人クロウが就く。 クロウは、キンタローを本当に慕っており、積極的にジャンに教えを乞い、勤勉で、努力を惜しまない。

 1年前、ジャンからの推薦されるまでになった。


 現在、キンタローの家には主のキンタロー、クマゴロー、ミカン。婚約者として、フラム、アンリエッタ、ニナ。女中のプギー、チキンバード。料理人のリリ、そしてリリを頼って奉公に来たリリの妹のルルがいる。

 この家にも、ラウザ工房にも、ハンスの姿はなかった……

 



◇◇◇

 今から2年前ラウザ工房からキンタロー達は、1つ目のお祝い事の連絡が入る。


 それは、ミネアの妊娠の報告だった。


 その報告から、約半年後キンタローとフラムとハンスも駆けつけ、ミネアは元気な男の子を出産する。フラムは、ミネアと産まれたばかりの男の子を抱きしめ「おめでとう、お母さん」と涙ながら祝った。


 そして、ミネアが出産してから半年後、大事件が起こった。


 ハンスが、結婚を考えている人がいるとキンタローとフラム達に話した。


「絶対結婚詐欺だ!」

「ハンス、騙されちゃダメよ!」

「ハンスさん、妄想するのは構いませんが、流石に現実を見ましょう」


 キンタロー、フラム、その場にいたジャンに散々言われて、ハンスは泣きながら出ていった。


 その日の夜、ハンスが1人の女性を連れて戻ってくる。頭に長い耳を生やし、背の高いスラッとしているが、出ている所は出ている、とても綺麗なウサギの獣人で名前をワラビーと言う。


「絶対詐欺だ! ハンス自首しろ!」

「はわわわ! ハンスさん、脅迫はダメです!」

「この豚やろう!!」


 キンタロー、アンリエッタ、スパン! とムチをならすプギーに散々言われて、ハンスは泣きながら出ていった。


 その後、クマゴローの探知内であっさり見つかったハンスに、盛大に祝ってやると約束して慰めた。


 次の日、村中をあげて盛大に祝ってやると、ハンスは唖然としていた。


 現在は、ワラビーと共にキンタロー家の中庭に建てた一軒家に住んでいる。




◇◇◇

 キンタローは、この3年で14歳になり、背も大きくなり精悍な顔つきになるが、思っていたより背が伸びずがっかりしていた。


 今は新しく村長室を家の中に作り、机に向かって自分に宛てられた要望書を読んでいる。


 村長室の真ん中の来客用のソファーに、フラムとアンリエッタが編み物をしており、クマゴローとミカンとニナは、部屋の隅で何やら手遊びをしていた。


 アンリエッタもフラムと同じ位の背丈になっている。出会った頃の小動物の様な愛らしさは、そのままだが、胸は更に大きくなりアンリエッタの悩みの種だった。


 ニナも、髪が少し伸び背丈も大きくなったが、性格は相変わらず子供のままで、クマゴローに引っ付く頻度は少しだけ減り、キンタローに引っ付く頻度は少しだけ増えた。

 しかし、父ノイルには全く引っ付く気配すらない。


 クマゴローやミカンは相変わらずである。


 やはり一番変わったのはフラムで、背丈はドワーフだからか変わらなかったが、見た目は明らかに変化していた。


 フラムとアンリエッタが今編んでいるのは、小さな前掛けと小さな靴下。しかし、これはミネアの赤ん坊にではない。

 2人は、本当の姉妹の様に仲良くしており、フラムの事をアンリエッタが知った時、喧嘩などは無くむしろ喜んで祝福した。





 フラムのお腹には新しい命を宿していた。


第6章は、これで終わりです。


いくつか、SSと閑話を挟んで第7章になります。


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