60 鼻フックは、アクセサリーじゃない!
プギー、またか。ってお話
キンタロー達は、気を失ったノイルを連れてキタ村へと戻ると、ジャンを始め村人一同で、燃える森が村へと移らない様に村の周りの木を切っていく。ニナにもう一度竜になってもらい、川の水を上からかけて行く。
時間は掛かったが、森の火は何とか消し止められた。
◇◇◇
「プギー?」
「何でしょう? キンタロー様。ブヒ」
「オレはノイルを縛っておけって言ったよな?」
「はい。だから、縛ってあります。ブヒ」
「うん、縛ってるね。間違いないね。でもさ、縛り方ってものがあるじゃない?」
「私は、あの縛り方しか存じませんので。ブヒ」
ノイルは、亀の甲羅の模様みたいな縛り方をされ、娘ニナの前で恥ずかしい格好にされている。当のニナは、腹を抱えて笑っていた。
「あ、そ。ならもう一ついいか?」
「はい。何でしょう? ブヒ」
「なんで、鼻フック着けさせた?」
「罰が必要かと思いまして。ブヒ」
「オレは、調教部屋のもの捨てろって言ったよね!? なんで、まだあるの!?」
「父の形見ですので。ブヒ」
「ぐっ…………! 嫌な形見だな」
父の形見と言われて、何も言えなくなる。珍しくプギーの勝利した。
「まぁ、いいか……」
「いいわけあるか! 縛るならちゃんと縛れ!」
「え!? 鼻フックはいいの?」
人型のノイルの姿は、黒いマントを羽織っており、ニナの父親にしたら、少し年配の男性だ。髪は白く、ニナの倍はある黒い角が二本、頭にある。
髪の一部が禿げて、鼻フックを装着し、亀の甲羅模様に縛られたノイルが真剣な顔で、キンタローに抗議してくる。
それを見たいニナは、腹を手で押さえ地面に転がりながら足をバタバタと動かし、カボチャパンツ丸見えで笑っていた。
「親父さん」
「む……ワシの事か? なんだ?」
「ニナの今の姿見てどう思う? まだ酷い目にでもされている様に見えるか?」
ノイルは、首を横に振り顔を伏せる……が、鼻フックの重しに引っ張られ再び顔が持ち上がる。
「親父さん、今回は犠牲や怪我人も出なかったから詳しい話は後で聞くとして、まずは復興が先だ。ジャン、森はどのくらい燃えた?」
「そうですね。燃え移らないように、皆で木を切ったので、燃えた畑も含めると、思っていたよりかは少ないですね」
「そうか。親父さん、あんたも詫びで手伝え。力はあるだろ?」
そう言って、ノイルの縄を切ってやると、鼻フックを着けたままのノイルは、ニナに抱きつこうとするが、ニナは驚いてクマゴローの影に隠れて怯える。ノイルはショックで動けなくなった。
「何故、取らない?」
ノイルに白い目を向けるキンタローがいた。
◇◇◇
「さて、復興の準備にかかるか。ミネアさん!」
「は……はい」
「門の修理だけど、燃え移らない様に切った木を使ってくれ。闘技場は、後回しでいい。それと、フラム」
「どうしたの、キンタロー?」
フラムが、人ゴミの中を掻き分けて寄ってくる。
「ラウザ工房の親方として、頼みたい。門の修理が終わったら追加で、物見台か物見小屋をあの丘に作りたい。大工の職人は門の修理が終わったら帰ってしまうが、何人かラウザ工房で雇って手伝ってもらいたい。
その際にはフラムやミネアさん、ハンスにも残ってもらうことになるけど、大丈夫か?」
「当たり前よ、私はキンタローの妻だもの」
「うん、まだ違うからね。嬉しくない訳じゃないけど、なし崩しとか止めて。
それじゃあ、ジャン。リベルにこの事を伝えに使いを出して欲しい。あと、ドワンゴ村の村長とナギ村の村長に、キタ村に来てもらう様に使いを出して」
「ナギ村とドワンゴ村の村長は、何故だ? キンタロー」
ゴルザが理由がわからず首を傾げる。
「今回の事もそうだけど、これからはお互いに連携を取れる様にした方がいいと思ってる。こっちに来てもらうのは、ウチの村長が高齢だからな」
ゴルザとジャンはお互い顔を見合せると何か含んだ顔をして、その後アレキサンダー村長を見る。
「決まりじゃな……」
アレキサンダー村長は、小声で呟いた。
◇◇◇
『それじゃ、クマゴローとミカンは森の木を、門の所に運んでくれ』
『おう! 任せろ』
「わかったの~」
クマゴローとミカンは、運搬を担当する村人達について行く。
「アンは、ジャンから食料を貰って炊き出しの準備をしてほしい。人数が多いし、大変だけど。プギーとチキンバードもアンを手伝ってやってくれ」
「キン……ニナは?」
アンリエッタとプギー達が、ジャンの商会へと向かうのを見送るキンタローのマントを、ニナが引っ張ってくる。
「ニナは、今日は無し。疲れてるだろうし、オレの側にいたらいいよ。今日はありがとな」
ニナは、キンタローに頭を撫でられると目を細めキンタローの腰にしがみついた。
「側にいろとは言ったけど──まぁいいか」
「婿どの、ワシは何をすればいい?」
何を手伝えばいいかわからず、ノイルはキンタローに聞いてきた。
「何だよ! 婿どのって!? というか、いい加減鼻フック外せよ!!」
「ニナも懐いておるしな。偶然とは言え、ワシを倒し──」
「ああ! もう、いい! それはあとで! 親父さんは、燃えた森の整備。早く行け! それといい加減、外せぇ!!」
竜の時より、人型の方がよっぽど疲れるキンタローだった。
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