58 洒落にならない親子喧嘩開始
第6章開始
空眼の白竜って、お話。
「………………はあああぁぁぁぁ!!!?」
アンリエッタから話を聞いて、キンタローも流石に驚かずにはいられなかった。
「あの黒い竜がニナの父親……」
キンタローは一瞬呆けたがすぐに頭を切り替え、唯一伝令役として残っていた衛兵に、緊急だと、ジャンを呼んできて貰う。
伝令を受け、馬で駆けつけたジャンに黒い竜とニナの関係を話した。
「もしかして、ニナさんもあの黒い竜も竜人族なのかもしれません」
「竜人族? 少数種族か?」
「それ以上ですね。少なくとも見たと言う方は、聞いた事ありません。文献に出るくらいです。もしかすると妖精族の長老が知っているかも知れませんが」
ジャンに言われて、長老長老詐欺の妖精を頭に浮かべるキンタローだったが、すぐに打ち消す。
「ニナ、父親の所へ帰るか?」
「キン……いっしょ?」
「一緒には、無理だな。帰るのはニナだけだ」
「や……キン……いっしょ……かえらない」
ニナは、キンタローに抱きついてくる。
「ニナ、ニナもあんな風になれるのか?」
抱きつきながらも小さく頷くニナに、優しく頭を撫でてやる。
「よし! じゃあ、父親に一緒に頼みに行くか」
「キンタローさん、ニナさんの父親は恐らく……」
「わかってるよ。ニナを取り戻すだけなら、ニナみたいに人型で村に来た方が簡単だ。それをわざわざ竜の姿で来るということは、怒ってるって事だろ?」
ジャンは心配するが、キンタローもわかっているみたいだったので、それ以上何も言わなかった。
「ジャンは、アンを連れてクマゴローとゴルザに合流してくれ。アンは、そのままゴルザと避難の指示を。クマゴローには、なるべくオレを視界に捉える位置に居てくれと伝言を頼む」
「わかりました。アンリエッタさん、行きましょう」
「キンタロー、気をつけてね」
「ああ、それじゃニナ頼む」
ニナは頷くと、大通りに行き、目を瞑る。頭の2本の角が輝き出すと、足元に魔方陣のようなものが浮かび出す。
魔方陣から、竜のシルエットが現れるとニナと重なりニナが消えていく。代わりに、シルエットが実体化して、その姿を現した。
「ブルー◯イズホワイト……」
キンタローは、前生で見たことのあるカードゲームを思い出す。
その姿は、屈強な脚に、その巨体を飛ばせる為の大きな翼、角も伸びている。身体と鬣は、ニナの髪と同じく何よりも白く、瞳は薄い空色をしていた。
「それじゃ、行くか。ニナ、乗っても大丈夫だよな?」
白い竜になったニナは、コクリと頷き巨体を伏せると、キンタローは、その背に飛び乗った。
◇◇◇
丘に避難していた村人達は、突然村の真ん中に現れた白い竜に驚き、動揺する。
しかし、見張りをしていたタカさんとクロウから、白い竜の近くにキンタローがいるのを確認したのを聞いたアレキサンダー村長が、村人の説得をした。
ゴルザとクマゴローと合流したジャン達は、キンタローの伝言を伝えると、クマゴローとミカンはキンタローの元へゴルザはアンリエッタと共にフラム達と合流しにいく。
フラム達も、まさか避難する方向の大通りに、白い竜が現れたのに、驚いた。
◇◇◇
「よし、行こうニナ」
「ん……」
キンタローを背に乗せたニナは、大通りを滑走路代わりと走りだし、両翼を始めはゆっくりと、そしてその羽ばたきを強めていき、飛び立った。
そのスピードは、想像以上でキンタローはニナの鬣にしがみつく。
「に、ニナぁ! 髪引っ張ってるけど、痛くないかぁ?」
「平気……」
黒い竜を見ると、向こうもこちらに気付いたのか、スピードを上げて迫ってくる。
「来るぞぉ! ニナぁって、何しようとしてるのかな、ニナさん!?」
ニナが口を大きく開けると、周りの空気が熱くなってくる。そして、体内を通り大きな火の玉が放たれる。
ドン!!
火の玉を放った反動でニナの身体が後方へずれる。キンタローは、空中に放り投げられそうになり、必死に鬣にしがみつく。
「に、ニナさぁん!? いきなり何やってくれって、うわあ!! 向こうも撃って来たぁ!?」
黒い竜も火の玉を放ってくる。咄嗟にニナは、先ほどと同じように火の玉を放ち相殺する。
「ニナ、少し横にズレよう。このままだと村に当たる!」
続く黒い竜の第2波を避けるため、放たれる前に横にズレたニナに、第2波が襲いかかる。しかし、高度を落として、ギリギリ避ける。
「あち! あち! あち! スレスレでも、熱いな! ニナ、火の玉は撃つな。森が燃えてる」
「わかった……」
ニナが再び口を開けると、まるで周りの光がニナの口に吸い込まれるように見えた。
キュイン! ズドーーーーーーーン!!!!
ニナの口から光の線が走ると、当たった森と山の一部を削りとる。
「ダメー! それ、もっとダメー! 洒落にならねー!!」
「むぅ……キン……わがまま」
「え? オレが悪いの?」
キンタローは、削られた森と山の責任を擦りつけられた。
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