SS フラムとアンリエッタの秘密の会話
どうやらアレは、出し入れ自由みたいってお話。
ここは、しまりす亭3階にあるアンリエッタの部屋の中。
今、この部屋には、私フラム=ラウザと、部屋の主であるアンリエッタがいる。
さっき、私はキンタローにキレた。
キンタローが、目の前にいるアンリエッタも妻にするってふざけてるの?
私も正式に婚約した訳ではないけれども…………
でも、私の所に戻ってくるって言ったじゃない! なのに、この村に住むって……
ああ……そうか、キンタローが他の女の子と仲良くしているのも、腹が立ったけど……私、約束を破られたのが悲しかったんだ……
ダメダメ、弱気になっては。
私も引くわけにはいかない!
私に話があるですって? 聞いてやろうじゃないの。
「それで? 話って何かしら?」
アンリエッタは、ずっと立ってもじもじしてる。私が怖いのかしら?
だけど、それは違った。彼女は私をしっかり見ている。
「はわ! フラムさんは、そのキンタローの事好きですか!?」
ず、随分直球で来たわね。でも、負けるわけにはいかないわ!
「ええ、好きよ。大好き。貴女は?」
「はわわ! わ、私も好きです」
「それで、話はそれだけかしら?」
彼女は意を決したみたいで、おどおどしていた表情から真剣な表情に変わり、私に尋ねる。
「フラムさんは、キンタローの生い立ちを聞いていますか?」
「聞いてるわよ。もちろん。赤ん坊の時にクマゴローの両親に拾われて、そしてその両親をエルフに奪われた。そうでしょう?」
「はい。それじゃあ、キンタローの一番欲しいものを知ってますか?」
知っている。
キンタローの欲しいもの、それは。
「家族よ」
だけど、私はこの後、彼女に負ける。自分の見ているものと、彼女の見ているものの差に。
「そうです、家族です。私はキンタローと会ってまだ間もないです。初めにこの話をお父さんから聞いた時、困惑しました。
お父さんの話じゃ第2婦人だって言うし、村の為だとか言うし。だから、私はお母さんの絵を見せたんです。お母さんの絵を見ていたキンタローの目がとても優しかったんです。亡くなったお母さんと同じ目をしてたんです。
だから、私決めたんです。この人に1人でも多く家族を作ってあげようって、そして、その支えになってあげようって」
私はキンタローしか見ていなかった。
だけど、彼女は違った。
「私は、フラムさんもラウザ工房の人も、ドワンゴ村の人達も、キタ村の人達も、キンタローの家族になってもらいたい。キンタローの求めてる家族ってそういうものなんです。だから、お願いします。私を受け入れてください。キタ村の人達を受け入れてください。全てはキンタローの為に!」
彼女は、キンタローの隣に立ち前を向きその先を見ている。それに比べ、私はキンタローの背中を見て、隣に立つ事しか考えていない。
隣に立てば、キンタローばかりを見ているだろう。
負けた。
私は情けなさと悔しさで、いっぱいだった。しかも、彼女は私に助け船すら差し出している。情けないけれど、悔しいけれど、私は彼女の助け船に乗る。彼女を受け入れるという助け船に。
彼女は、思いの丈を吐き出したのだろう。肩で息をしている。
だから、私は立ち上がり彼女に手を差し出す。
「今回は負けよ。アンリエッタ、貴女を受け入れるわ。でも、次は負けない……違うわね。これからは一緒にね」
「はわ! はい、フラムさん」
「フラムでいいわよ。私もアンちゃんて呼ばしてもらうし」
「そ、それじゃ、『フラム姉さん』じゃダメですか?」
かわいい笑顔をしているわね。そうね、妹がいたらこんな感じかな?
「ええ、それでいいわよ。これからよろしくね」
「はい! フラム姉さん」
それじゃ、食堂へ戻ろうかな。暴れちゃったし、謝らないと。
「みんなの所に行きましょう」
「はい」
アンちゃんと私は部屋を出た。
あぁ、そうだ! やっぱりキンタローにも、もうちょっと反省して欲しいわね。
「アンちゃん、耳を貸して」
私は、新しく出来たかわいい妹に、般若の出し方をコッソリ教えた。
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