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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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SS フラムとアンリエッタの秘密の会話


どうやらアレは、出し入れ自由みたいってお話。


 ここは、しまりす亭3階にあるアンリエッタの部屋の中。

 今、この部屋には、私フラム=ラウザと、部屋の主であるアンリエッタがいる。


 さっき、私はキンタローにキレた。

 キンタローが、目の前にいるアンリエッタも妻にするってふざけてるの?

 私も正式に婚約した訳ではないけれども…………

 でも、私の所に戻ってくるって言ったじゃない! なのに、この村に住むって……


 ああ……そうか、キンタローが他の女の子と仲良くしているのも、腹が立ったけど……私、約束を破られたのが悲しかったんだ……

 ダメダメ、弱気になっては。

 私も引くわけにはいかない!


 私に話があるですって? 聞いてやろうじゃないの。


「それで? 話って何かしら?」


 アンリエッタは、ずっと立ってもじもじしてる。私が怖いのかしら?

 だけど、それは違った。彼女は私をしっかり見ている。


「はわ! フラムさんは、そのキンタローの事好きですか!?」


 ず、随分直球で来たわね。でも、負けるわけにはいかないわ!


「ええ、好きよ。大好き。貴女は?」

「はわわ! わ、私も好きです」

「それで、話はそれだけかしら?」


 彼女は意を決したみたいで、おどおどしていた表情から真剣な表情に変わり、私に尋ねる。


「フラムさんは、キンタローの生い立ちを聞いていますか?」

「聞いてるわよ。もちろん。赤ん坊の時にクマゴローの両親に拾われて、そしてその両親をエルフに奪われた。そうでしょう?」

「はい。それじゃあ、キンタローの一番欲しいものを知ってますか?」


 知っている。

 キンタローの欲しいもの、それは。


「家族よ」


 だけど、私はこの後、彼女に負ける。自分の見ているものと、彼女の見ているものの差に。


「そうです、家族です。私はキンタローと会ってまだ間もないです。初めにこの話をお父さんから聞いた時、困惑しました。

 お父さんの話じゃ第2婦人だって言うし、村の為だとか言うし。だから、私はお母さんの絵を見せたんです。お母さんの絵を見ていたキンタローの目がとても優しかったんです。亡くなったお母さんと同じ目をしてたんです。

 だから、私決めたんです。この人に1人でも多く家族を作ってあげようって、そして、その支えになってあげようって」


 私はキンタローしか見ていなかった。

 だけど、彼女は違った。


「私は、フラムさんもラウザ工房の人も、ドワンゴ村の人達も、キタ村の人達も、キンタローの家族になってもらいたい。キンタローの求めてる家族ってそういうものなんです。だから、お願いします。私を受け入れてください。キタ村の人達を受け入れてください。全てはキンタロー(あの人)の為に!」


 彼女は、キンタローの隣に立ち前を向きその先(将来)を見ている。それに比べ、私はキンタローの背中を見て、隣に立つ事しか考えていない。

 隣に立てば、キンタローばかりを見ているだろう。


 負けた。


 私は情けなさと悔しさで、いっぱいだった。しかも、彼女は私に助け船すら差し出している。情けないけれど、悔しいけれど、私は彼女の助け船に乗る。彼女を受け入れるという助け船に。


 彼女は、思いの丈を吐き出したのだろう。肩で息をしている。

 だから、私は立ち上がり彼女に手を差し出す。


「今回は負けよ。アンリエッタ、貴女を受け入れるわ。でも、次は負けない……違うわね。これからは一緒にね」

「はわ! はい、フラムさん」

「フラムでいいわよ。私もアンちゃんて呼ばしてもらうし」

「そ、それじゃ、『フラム姉さん』じゃダメですか?」


 かわいい笑顔をしているわね。そうね、妹がいたらこんな感じかな?


「ええ、それでいいわよ。これからよろしくね」

「はい! フラム姉さん」


 それじゃ、食堂へ戻ろうかな。暴れちゃったし、謝らないと。


「みんなの所に行きましょう」

「はい」


 アンちゃんと私は部屋を出た。

 あぁ、そうだ! やっぱりキンタローにも、もうちょっと反省して欲しいわね。


「アンちゃん、耳を貸して」


 私は、新しく出来たかわいい妹に、般若(アレ)の出し方をコッソリ教えた。

いつもありがとうございます


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