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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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52 鳥の丸焼き頼んだら、出てきたのは豚の丸焼き


丸焼きってお話


 キンタローは、プギーの母親の名前を知らなかった。


「キンタロー様。この人の名前は『チキンバード=オーガ』です。ブヒ」


 キンタローは、耳を疑い聞き直してみる。


「……何だって?」

「『チキンバード』です。あ、でも父はもう居ないので母方の姓なら『チキンバード=マールヤキ』です。ブヒ」


 頭が痛くなってきたキンタロー。そして、キレた。


「あぁ~! もう、何なの獣人ってぇ!? なんで、鳥ぃ? 豚じゃないのぉ!?」

「キンタロー様。彼女は豚の獣人です。ブヒ」

「そんなの知ってるよ! というか見たら一目瞭然だからね!? 大体丸焼きって、鳥の丸焼き頼んだら、豚の丸焼きが出てきましたぁ! ってなるからね! ハッ! ピッグが婿入りしてたら、豚の丸焼きだよ。ってどうでもいいわあぁ!!」


 スパン! キンタローは、椅子から立ち上がりムチを地面に叩きつけ、チキンバードを指差し叫んだ。


「いいか!? もう逃げるなよ! 娘の為に側に居てやれ! プギーは、まだ12だぞ! それと、プギー! どうして、地面を睨み付けてる!? 何に嫉妬してる! おかしいだろ!!」


 そういうと、キンタローはそそくさと地下室から出ていった。


 チキンバードはプギーに縄を外してもらうと泣きながら謝った。

 しかし、プギーに言われた言葉にショックを受ける。


 「プギーではありません。女中長と呼びなさい。豚やろう。ブヒ」

 

 娘を想って泣いているのか、娘の変わりように泣いているのか、チキンバードの心中は複雑だった。




◇◇◇

 地下室から出てきたキンタローは、今起きて来たハンスとバッタリと会い、しまりす亭へと朝ごはんに誘った。


 クマゴロー達も、キンタローと共にしまりす亭に向かい中に入ると、いつもの“アンちゃん親衛隊”がおらず静かだった。


「アン、いつもの5人はどうした?」

「はわ! さっき全員集まったら『きんくま対策を練るぞー』って帰ったよ」


(きんくま? きん……くま……? キンタローとクマゴローか!? なるほどな……でも、おっちゃん忘れてないか? あの5人)


 キンタローは、内心呆れながらも「くくく……」と笑っていた。


「はわ! あのキンタロー。お父さんが居れば、アンいつでも出掛けていいって」

「そうなのか? せっかくだし今から行くか?」

「はわ!」


 アンは「着替えて来る」と言って、嬉しそうに3階へと上がっていった。





◇◇◇

「キンタロー、お待たせ」


 アンリエッタは、白いワンピースに淡いピンクのカーディガンを着ていた。


「お店じゃ白い服って着れないから……どうかな?」

「よく、似合ってるよ」


 アンリエッタは、頬を染めて大きな尻尾を胸元で抱きしめ顔を隠した。


「それじゃ行こうか?」


 キンタローが、手を差し出すとアンリエッタは恥ずかしがりながらも、手を繋ぐ。

 ミカンはキンタローの懐に入り、クマゴローはニナを乗せた。


「あれ? ハンスは来ないのか?」

「行くわけないじゃないですか。嫌がらせですか?」

「そうだけど」

「キンタローさん、あんた鬼だ」


 ハンスは、お酒を注文すると、泣きながら一気に飲み干した。




◇◇◇

 アンリエッタと村の中を散策していると、以前外出も大変だと言うのが良くわかった。


 村の人が、老若男女問わずひっきりなしに声をかけてくる。しかも、アンリエッタの名前が出る度に人が増えていく。ただ、今回はキンタローと一緒だからか、後ろにクマゴローがいるからかわからないが、声こそかけるが寄っては来ない。


「はわわ! すごいです。歩けます!」


 アンリエッタの話だと、周りに人が集まって歩けないとの事だった。


「でも……はわ! ごめんなさい……」


 アンリエッタが謝る理由は、キンタローへのやっかみが所々で聞こえるからだ。


「アンが気にする必要はないよ」


 そう耳元で囁いてやると、アンリエッタは真っ赤になり、村の特に若い男連中も、怒りでなのか真っ赤になる。しかし、1人の老婆が誰も近づかないキンタロー達に近寄ってくる。


「アンちゃん、いい人見つけたんだねぇ。おめでとう」


 そう言って、キンタロー達の元を去っていく。

 老婆の言葉を聞いて村人の中には祝福の声が聞こえだす。


「アンちゃん、良かったね」


 キツネ顔の獣人の女性が声をかける。


「アンリエッタ、幸せにな!」


 鳥の獣人のアンリエッタと同じ年くらいの男の子が声をかける。


「坊主、アンちゃんを泣かすんじゃないぞ!」


 男の子の隣にいる、頭のハゲた鳥の獣人の男性が声をかける。


「誰が坊主だ!! 坊主はお前の方だろうが!!」


 キンタローの言葉で、村中が静まりかえった。


 気まずい空気になり、当初の目的通りニナの服選びに服屋へと入っていく。

 ニナとアンリエッタが、取っ替え引っ替え服を選んでいる。キンタローは、ファッションには無頓着だが、ゴルザやピッグの服があるくらいだからと、クマゴローの服を探していた。


「キンタロー、これどうかな?」


 ニナは試着を終えて、キンタローに見せにくる。

 それは、赤い服というより、真っ赤なワンピースのドレス。


「うん、ニナだと1日で破るな」

「はわ! キンタロー、そうじゃなくて」

「うん、ニナだと1日でクマゴローの毛だらけたな」

「だから、そうじゃなくて……」


 アンリエッタは、ガックリ肩を落としたがキンタローには何の事かさっぱりわからなかった。


──ゾクリ──


 キンタローの背中に寒気が走る。


「こ、これは……」


 キンタローは、嫌な予感がして背後を素早く振り向く。



 そこには、店の前で腕を組み仁王立ちする赤い髪の少女と、その足元にはボロボロのハンスがいた。

いつも、ありがとうございます。


感想も新たにいただき感謝している今日この頃。


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