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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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51 あれ? なんでピカピカなの?

ムチの取り扱いが難しいっておはなし。


 夜の営業時間も終えた《しまりす亭》。

 その食堂には、ゴルザとアンリエッタそしてキンタロー達とハンスとプギーがいた。


 しばらく固まったままだったゴルザだったが、立ち直った後、食堂を再開しだす。

 アンリエッタが元に戻った事で、客達も明るくなり活気づいた。


 キンタロー達は、プギーも呼び《しまりす亭》で晩ごはんを食べて、閉店すると片付けを手伝い、今は談笑している。


「え!? それじゃキンタローさん、このアンリエッタちゃんとも婚約って事ですか?」


 ハンスに、この村であった事を話した。

 てっきり、笑い飛ばしたり、からかったりするかと思われたが、ハンスは神妙な面持ちになる。


「キンタローさん。オレはお嬢が生まれた時からしっています。オレは結婚はしていないですが、お嬢を娘の様に、いえ、ラウザ工房の全員がそうです。だから、いくら何でも今回の事は酷すぎます。お嬢を捨てるなんて……」


 スパン! 空気の乾いた音が食堂に響く。音の正体は、こっちに慌てて持って来ていたムチの音だった。


「ハンス、オレは一度もフラムを捨てるなんて言ってないぞ」

「……言ってなかったですか?」

「言ってない」


 「ははは」と笑って誤魔化すハンスに、スパン! とムチが飛ぶ。


(便利だな、このムチ。いや、やっぱり止めよう)


 さっきから、ムチが振るわれる度にプギーがハンスに向かって悔しそうな顔を見せている。


「フラムが第1婦人、アンが第2婦人。2人に差をつけるつもりは全くないよ。フラムとアンには仲良くしてもらいたいし」

「はわ! 頑張ります」

「そうですね。おそらくフラムお嬢、近々ここに来ますし」


 ハンスの言葉に、キンタローは驚く。そういえばハンスは、この村に来る前にフラムに知らせを出している。フラムなら、すぐにでも駆けつけるに違いなかった。


「ハンス……どうしよう……何言えば、丸くすむかな?」


 珍しく動揺しており、思わずハンスに助けを求めてしまう。


「ははは……キンタローさん、ご冗談を。そんなのわかっていたら、このハンス、とっくに結婚してますよ」

「あ、それもそうだな」


 ハンスは泣いた。




◇◇◇

 しまりす亭から家へと戻ると、キンタローは2階に作った自室の新しいベッドに横になる。

 キンタローの家は、3階にプギーを皮切りに、これから雇う必要がある使用人の部屋が、2階はキンタローの自室を含むプライベートな部屋が、1階はリビングと広いからとの理由で、ちょっとした会議室が作られていた。


 もちろん、キンタローの自室にはクマゴローもミカンもそしてニナまでいる。ハンスは3階の1つに、プギーは自室まで付いてきたが、追い出した。


『どうした? キンタロー?』


 不安気な表情をひた隠しにはしていたが、クマゴローに見抜かれる。


『いや、また大事なもの(家族)が増えたなって思ってな』


 プギーはもちろんのこと、すぐに捕まるだろうと思っているプギーの母親。そして、新たに顔役となったこの村の人達。

 キンタローは、元々17歳だからか、現在10歳にしては当たりはキツい。口調も荒い。

 しかし、絶対に手放さないモノ(家族)がある事をクマゴローは知っている。

 クマゴローは、生来面倒見が良く兄貴肌だ。今日も絶対に手放さないモノ(キンタロー)の側で、寄り添いながら眠りについた。

 絶対にキンタローを守ると心に誓って。




◇◇◇

「なぁ、プギー」

「なんでしょう、キンタロー様。ブヒ」

「何でオレは、こんなところで座っている?」

「それはここが、一番逃げずらい所だからです。ブヒ」

「確かにな。でも、ここは処分するように話していたのだが?」

「はい。伺っております。ブヒ」

「何故かわかっているよな?」

「はい。それはここが、父が使っていた拷問部屋と(てい)の調教部屋だからです。ブヒ」

「じゃあさ! なんでこんなにピカピカなの!? 処分しろとは言ったが、誰が掃除しろって言ったの!?」


 今キンタローは、地下室で椅子に座っている。

 部屋の中には、拷問──というよりプギーの言う通りの道具が綺麗に磨かれている。

 その入口前で椅子に座っているキンタロー、その横で立っているプギー、キンタローの前にぐるぐる巻きにされたプギーの母親が座っていた。


 プギーの母親は、そんなやり取りを娘としているキンタローを睨み付ける。

 スパン! 乾いた音が部屋に響く。


「キンタロー様を睨むな、この豚やろう! ブヒ」


 プギーの手には、何故か没収したはずのムチがある。恐らくはこの部屋から持ちだしたのだろう。ここはそういう場所だった。


「プギー、ムチを渡せ。それから豚やろう言うな」


 キンタローがムチを取り上げると、プギーは頬を染め満面の笑みを浮かべる。


「いや、あとで捨てるから。それとオレの言葉にもいちいち反応するな」


 キンタローの言葉にガックリ肩を落とすと、母親を睨み付ける。


「だから、叩かないって」


 キンタローは、改めてプギーの母親を見ると、流石に娘の言葉に傷ついた様子だ。


「さてと………………プギー」

「はい。なんでしょう? ブヒ」

「………………お前の母親の名前なんだっけ?」


いつも読んでいただきありがとうございます。


知ってる、ブックマークを押したら皆喜ぶのですよ。


さぁレッツトライ。

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