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不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第5章 栗鼠と赤い髪と黒き竜
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49 ラブストーリーは突然に来たのはオレでしたぁ


ニナがとっても満足したってお話


「おう、キンタロー。引き受けてくれて何よりだ」


 ゴルザがヘラヘラと笑いながら戻ってくると、キンタローはキッと睨み付ける。何故ならゴルザは、ジャンとキンタローのプギー親子を引き取る話は、聞いていないはずだ。しかし、今現在ゴルザの後ろに付いてくるプギー親子がいた。


「ジャン……謀ったな!?」

「きっと引き受けてくれると思ってましたから」


 ジャンとゴルザの間では、既に話し合っており、キンタローへの説得はジャンに一任されていた。


 キンタローは、ガックリ項垂(うなだ)れながら、プギー親子の側へ行く。

 顔をゆっくり上げたキンタローの目を見て、プギー親子はゾッと背筋に寒気が走りぬける。

 その目は、ピッグの首を切った時と同じく黒い瞳に光は無く、深い深い闇のようだたった。


「1つ言っておく」


 キンタローの低く淡々とした声にプギー親子は生唾を飲む。


「お前達親子は、オレに家族を奪われた。だから、オレに対しては何しようが構わない。だが!!!! オレの家族に何かしてみろ! ただでは済まさない!! わかったな!!」


 キンタローの迫力に圧倒され、プギー親子は、僅か10歳のキンタローに萎縮する。

 しかし、すぐにキンタローの瞳には光が戻り、話を続けた。


「だけど、オレの家族に何もしないならオレが守ってやる。お前達は、もうオレの家族だからな」


 プギーの母親は、急にそんなことを言われても信用出来ずに、目には敵意がみなぎっていたが、プギーは自分の立場を理解しているようで、キンタローに深く頭を下げていた。




◇◇◇

 日もすっかり高くなり、ゴルザは、元プギー親子の、そして現在はキンタローの家にプギー親子を連れて行く。何でも家事全般どのくらい出来るかを見る為らしい。

 キンタロー達は、ジャンと別れ《しまりす亭》に引っ越しの為に戻っていく。引っ越しといっても荷物はリュック位なのだが。

 しまりす亭へと着くとキンタローは、先にアンリエッタの元に向かった。


「アン。今、大丈夫か?」


 食堂では、アンリエッタが忙しく動き回っており、キンタローの呼びかけに応えたいが、それどころでは無いみたいだ。

 アンリエッタは作業の手を止めず、だけどキンタローの所に行きたいと複雑な表情を見せる。


「アンちゃん、行っといで。ウチらは大丈夫だから」

「そうそう。おーい、構わねーよな?」

「「「大丈夫、大丈夫」」」


 客の1人が、アンリエッタの背中をポンと叩いて送り出す。アンリエッタは、食堂の客達に頭を下げて嬉しそうにキンタローの元に駆けていく。


 キンタローは、嬉しそうに駆けて来るアンリエッタの後ろで、あからさまに客達全員が肩を落としてお通夜みたいに暗くなるのを見た。



 アンリエッタに、今から新しい家に引っ越すことを話すと表情がみるみる暗くなり、落ち込んだ。

 予想はしていた事とはいえ、見かねたキンタローはアンリエッタの頭を軽く撫でてやる。


「はわ! もう、キンタロー、アン子供じゃないよ」

「わかってる。そうだ、今度付き合ってくれないか? ほら、この間出かける(約束)しただろ?」

「はわわ! 付き合うって、確かに婚約(約束)はしたけど。アン、わからないよ」

「いや、オレの方がわからないよ。ニナの事もあるし」


 アンリエッタが、愕然とした顔をする。


「もしかして、ニナちゃんとも婚約(約束)したの?」

「え? いや、外出(約束)は今決めたところだし。大体女の子の服なんて本当にわからないからさ」

「は、はわ? 今決めた!? って服?」


 ニナがいつまでも同じ服しか着てないので、前から新しい服でも買ってやろうかと思っていたけど、自分じゃわからないので、アンリエッタに選んでもらうつもりだと説明する。


「はわ! もう、紛らわし過ぎます、キンタローは!」

「え? なにが……」

「もう! いいです、ニナちゃんには取り敢えずアンの小さい時の服あげますから、お出かけは約束ですよ。お父さんに頼んで休みを作りますから」


 キンタローは、なんで頬を膨らまして怒っているのか分からなかったが、了承すると、アンリエッタはニナを着替えさす為に二階に連れて上がった。


「は、はわ! ニナちゃん、つつかないで!」

「ニナ……我慢……した」

「はわわわわ! そ、そんなに連続で、つつかないで!!」


 三階から聞こえる2人の声にキンタローは、聞かないそぶりをして、食堂の方にそっぽを向く。そこには、客達全員が聞き耳を立てており、イラッとしたキンタローは、壁をガンッと蹴ってやると蟻みたいに散り散りに散っていった。



 しばらくすると、2人が降りてくる。ニナは、ニナの瞳の色に似た薄い空色のワンピースを着ていた。

 ニナは、元々髪の色は真っ白で、肌の色素も薄い。だからかキンタローは思った事をそのまま言った。


「なんか……色々薄いな……」

「キン……そう。薄い……」


 ニナは、パッと見でわかるくらいブカブカのワンピースの胸元を触っている。


「いや、そこじゃないからな。ところでアンは何で、そんなに疲れているんだ?」


 ニナと一緒に降りてきたアンリエッタは、かなり狼狽している。


「はぁ……はぁ……に、ニナちゃんに……つつかないように言って……」


 着替えの最中も散々つついて、ニナはとても満足気であった。


 その後、荷物をまとめて、しまりす亭をあとにしたキンタロー達は、新しい家に向かった。


「お帰りなさいませ、ご主人様。ブヒ」

「ご主人様は止めてくれ、キンタローでいい」

「畏まりました、キンタロー様。ブヒ」


 キンタロー達が家に着くと、ゴルザと頭を下げたプギーが出迎える。

 プギーは最初の頃とは打って変わり、丁寧な言葉使いと態度だった。


 プギーが扉を開けると、キンタローは顔が引きつったまま中へと入る。後を続いてクマゴローが中に入りチラッとプギーを見る。


『誰だ? こいつ?』


 クマゴローが忘れるほど、別人に変わったプギーは、キンタローからマントを受け取る。


「キンタロー様、こちらのマントは、お洗いしてもよろしいですか? ブヒ」

「は、はいどうぞ。あ、そのマント実の母親の形見かもしれないので、丁寧にお願いします」


 思わず敬語になるキンタローに、クスッと笑い一言「畏まりました。ブヒ」と言って、そそくさと奥に行った。


 プギーが奥に消えたのを確認して、キンタローはクマゴローの上に登りゴルザの胸ぐらを掴みかかる。


「ねぇ!? あれ、何!? 完全に別人だよね!? 顔と鼻息なかったら、普通にいい娘なんだけど? 薬でも盛った!?」


 ゴルザは、キンタローの手を払い退ける。


「薬って、失礼だな。プギーは、元々いい娘なんだよ。アンリエッタと同じ年だしな、よく知ってる。俺も頑張って説得したんだ、感謝しろ!」


 キンタローは、プギーを誤解していたと頭をかきながら反省をしていると突然玄関の扉が開く。


 バーーーーーーーーン!!


「お久しぶりです! キンタローさん! あなたのハンスがやって参────へぶらっ!!」


 玄関の扉から現れたハンスに、キンタローはクマゴローの上から飛び蹴りを食らわす。



「人の家に入る時は、ノックぐらいしろ!!!!」

「突っ込むとこ、そこですか? ぐふっ」


いつも読んでくださってありがとうございます。


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