47 オンドリですか?yesオンドリーです。
やっと、オンドリー出たよってお話。
キンタローとゴルザは《しまりす亭》へと帰って来た。
ゴルザは鼻歌を鳴らしながら、かなり上機嫌なのが伺える。その一方、キンタローは頭を抱えていた。
ゴルザとジャンの話を受けるということは、ゴルザの娘アンリエッタを嫁に貰う約束をしたことになる。キンタローの悩みは2つ。
1つは、アンリエッタの気持ちだ。いくら父親が決めたとはいえ、好きでもない男と結婚なんてごめんだろうと考えていた。
まあ、それは杞憂に終わるのだが。
残り1つは、フラムにどう話すかだ。
キンタロー自身もフラムとは、両想いだとはわかっている。だからこそ、自分で言わなければならない。
「何か、流れでもう1人と結婚することになりましたぁ!」
バカか!? 何かってなんだよ。
「2人と結婚する事になったが、2人とも愛してるyo!」
まず、キャラが違う。だいたい「yo!」ってなんだ、「yo!」って。
「はぁ……何て言おう……」
ゴルザと違い、足取り重くキンタローは、《しまりす亭》に入っていった。
◇◇◇
その夜、ノックが聞こえ部屋の扉を開けると、アンリエッタが胸元にワンポイントのリボンの付いた股下までの空色のネグリジェに、お揃いの色の短パンを着て立っている。
胸元のリボンが、アンリエッタの胸を強調させていた。
「えーと、何かな? アン」
「は、はわ! お、お話したいな……って」
確かに朝から夕方くらいまで、食堂で働いているアンリエッタには中々話す機会がない。しかし、流石に食堂も閉まり、まだ寝る時間帯ではないが夜も遅い。流石にゴルザに見つかると、不味い。
そこに、タイミング悪く水を飲みに来たのか3階から、ゴルザが降りてきて目が合う。
そしてそのまま、ゴルザは1階に降りて行った。
(おーい、おっちゃんスルーかよ。いいのか? それで?)
「と、取り敢えず入れば?」
キンタローは、アンリエッタを部屋に招き入れ、椅子を用意すると自分はベッドに腰をかける。アンリエッタは、椅子には座らず、キンタローの隣に座った。
暫く、部屋には沈黙が流れる。
「……ぶえっくしゅ」
「おっさんか!」
沈黙を破ったのは、ニナだった。
そのくしゃみをきっかけにアンリエッタが話を切り出す。
「き、キンタローちゃ……はわ! キンタロー、これ」
アンリエッタがキンタローに渡したのは、さっきから手に持っていた額縁である。その額縁には、1人の女性のラフ画が描かれている。
一目見て、美人なのがわかる。そして、やはりか隣に座っている少女に似ていた。
「これ、アンのお母さん?」
「うん。お母さんが亡くなった後、顔を忘れないようにって描いたの」
「へ? 描いたって、アンが? 上手っ!」
「はわ! ありがとう、お母さんを忘れないようにって一生懸命描いたから、褒められたら嬉しい」
アンリエッタは、よっぽど嬉しいのか大きな尻尾が左右に何度も揺れている。
「それで、話ってのは?」
「? それだけだけど?」
アンリエッタが首を可愛く傾げると、キンタローは、ガクッとベッドから落ちそうになる。
特に何かを期待していた訳ではない。
ただ、本当に話をしに来ただけなのだと拍子抜けするが、アンリエッタの気持ちを聞くには、いい機会かもしれないと考える。
キンタローは、真剣な顔つきに変わった。
「アンは、その、何て聞かされた? オレとのこと」
キンタローの質問に、アンリエッタの顔は段々と赤くなり、うつむく。
「アンは、キンタローの……その……第2婦人になるって……はわわ!」
「え? それだけ?」
アンリエッタが頷くと、キンタローは頭を抱えだす。
「おっちゃん、端的過ぎるだろ!」
ゴルザを責めたい気持ちになるが、グッとこらえて、これは自分で確かめなければならない事だと決意し、キンタローは、話を続けた。
「アンは、オレのこと好きか?」
変化球など持たないキンタローは、ど直球で質問する。
アンリエッタは、完全に耳まで紅潮していたが小さな声で「うん」とだけ答えた。
「本当にいいの? 第2婦人だよ? 差をつけるつもりは無いけど、それでいいの?」
「は、はわ……第1婦人てフラムさん……だよね。アンなら大丈夫……」
「え! フラムと知り合い!?」
「はい、話したこと無いけどラウザ工房の人は結構来るの
から」
アンリエッタの気持ちを聞いて、一先ず、自分の部屋に帰した。
まさかの知り合いとは、思っておらず少し安心したが、困難はまだ残ってると考えるキンタローは、頭を抱えて寝付けぬ夜を過ごした。
◇◇◇
次の日、アンリエッタと顔を合わせたが、頬を少し染める程度で普通に接してきた。
朝ごはんを食べる前にゴルザに連絡があり、オンドリーが到着したという知らせを聞くと、ゴルザとキンタロー達はすぐに出掛けた。
キンタロー達が到着すると、そこには村長とジャン、そして牢付の馬車の中にニワトリ……いやオンドリ顔のオンドリーがいた。
「よ、久しぶり。オンドリ」
「オンドリじゃない、あたしゃ、女だ!」
「こないだ自分でオンドリ商会って言ってたよね」
「オンドリじゃなくて、オンドリー商会だ!」
オンドリーは、一息大きく吸うと叫んだ。
「あたしゃ、オンドリでもなく、メンドリでもなく、オンドリー商会のメンドリー=オンドリーだあ!!」
「もう、ややこし過ぎるわあぁぁぁ!!!!」
キンタローの心の叫びが、辺り一面聞こえた。
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