46 ダイヤモンドより硬いメンタルの猿がいます。
オンドリーの再登場がまた延びた、ってお話
ゴルザとの話を終え、夜食を食べたあとキンタローは、ベッドの上で天井を見つめていた。
『はぁ……どうしたらいいと思う? クマゴロー』
『キンタローの好きにしたらいいぞ。オレは付いていくだけだ』
クマゴローの言葉に、少しは救われた気持ちになるキンタローだが、やはりニナの事が気になる。
「ニナ、魔人族の所に行くのが遅れるかも知れない。寂しくないか?」
「? ニナ……キン……クマ……好き。寂しく……ない」
ニナがキンタローにくっついて来る。頭を撫でてやると、安心して目を細める。
「キンタロー、なんで、ミカンには聞かないの~」
「あーはいはい、ミカンも一緒だな」
「すっごい投げやりなの! ミカンは不服を申し立てるの!」
「(なんで、そんな言葉知ってんだよ)ごめん、ごめん」
キンタローは、ミカンを自分の懐に入れてやり頭を撫でてやると、蕩けた顔になる。
キンタローは、3人を見て目を細め微笑む。
大事な人が増えていく。それは、喜ばしい事。しかし、同時に不安も大きくなっていく。
その不安の原因は、いつ襲ってくるかわからない《不運》
(頼むから、寝ている間に来るなよ……)
いつものように、そう祈りつつキンタローは、眠りについた。
◇◇◇
翌朝、目を覚ますと、朝ごはんを食べに1階の食堂へ降りていく。
食堂には、昨日もいた常連らしい“アンちゃん親衛隊”の面々が、猿顔の獣人以外座っていた。
キンタロー達を見つけたアンリエッタが、駆け寄って声をかける。
「おはよう、キンタローちゃ……キンタロー」
そして、キンタローの腕を引っ張り昨日の席へと案内した。
「ひ、肘が当たってる!!」
馬顔の獣人が立ち上がる。
「な、なんて羨ましいんだ!」
鹿顔の獣人も立ち上がる。
「わ、わたしだって、あんなに密着したことないのに!?」
犬顔の女性が椅子から転げ落ちた。
「う、生まれ変わったら、あの腕に……」
羊顔のお爺さんが、目を見開き興奮する。
4人の視線を受けつつ席に座ると、ちょうど昨日の猿顔の客が食堂へ入ってきた。
「グツワさん、いらっしゃい。いつもの席にどうぞ」
アンリエッタが、近づき軽く挨拶すると、また厨房へ戻って行く。グツワは、すぐには座らずその場でしばらく立っていたが、慌てて“アンちゃん親衛隊”の面々の元に行く。
「み、見たか、今の!? いつもなら『はわ……いらっしゃい』なのに、名前まで呼んで挨拶してくれた!! もしかして、惚れられた!? とうとう春が来たのか!?」
“アンちゃん親衛隊”の4人は、興奮しているグツワを落ち着かせ、席に座らせると、さっきの出来事を話してやる。
直後、キンタローの背中に猛烈な視線が突き刺さり、振り向くと、グツワは睨みながら泣いていた。
キンタローは、取り敢えず無視を決めこみ、ゴルザと会話を続ける。
「そう言えば、アンから聞いたんだけど、おっちゃんの奥さんに結婚申し込んだバカがいるんだって?」
「ああ、そこにいるだろ」
ゴルザは、猿顔の獣人グツワを指差す。
「お前かよ!!!!」
キンタローが叫びながら振り返り、グツワは思わず視線を反らした。
「はあぁぁ……どんな鋼の精神してるんだよ、あの猿。しかもアンにまでだろ? いいのか? おっちゃん」
「一応の常連だし、しっかりお金落としてくれるからな。ちなみにあの犬の獣人メリと、夫婦だ」
ブッ! 思わず、含んだ水を吹き出してしまった。
「何やってんだ!? あんたらは!!」
キンタローの叫びに、グツワとメリはビクッと身体を揺らした。
◇◇◇
「そうそう、朝ごはん食べたら、ジャン達とピッグの家に行くからな。キンタローも来いよ」
「え? めんどくさ。おっちゃんに任せた」
「いや、来いよ。なんだよ、めんどくさって」
キンタローは、本気で面倒くさいと思ったが、拒否されてしまい、さっさと朝ごはんを食べ終える。
『クマゴローとミカンとニナはどうする? 行くか?』
『え? めんどくさ』
「え? めんどくさいの」
「くま……いっしょ……いる」
全員に拒否され、ゴルザと2人でピッグの家にトボトボと向かった。
既に、ジャンと村長は来ており合流すると、キンタローはピッグの家を見る。
なかなかセンスを感じる三階建ての家で、庭もある。中に入ると、大きな玄関フロア。その中央には二階へ続く階段が鎮座している。部屋の数も多く、確かに買い手がつかない程大きな物件だった。
キンタロー達が、一階を見て回っていると上の階から衛兵に連れられ奴隷達が降りてくる。奴隷達は老若男女おり、一先ず、村預かりとなるとジャンがキンタローも含め奴隷達に伝えた。
奴隷達は、キンタローがピッグを決闘で倒したことを知ると、睨む者、感謝する者、様々だった。
睨む者は、恐らくピッグに可愛がられ優遇されて来たのだろう。しかし、それが一転、先行き不安になってしまった。
「別に、睨むのは勝手だけど、ピッグの後を追うくらいの気持ちがないなら、やめた方がいいよ」
キンタローが、淡々とした口調で睨み返す。他の奴隷がキンタローの迫力に負ける中、1人の恐らく犬の獣人だと思われる女性が更に睨み返す。
「子供に何がわかるのさ!!」
「は? 大人なら奴隷の立場に甘んじてるなよ」
キンタローが、バッサリ斬って捨てるとその女性は、黙り込んでしまい、他の奴隷も肩をガックリと落とす。
見かねたジャンは、少し助け舟を出してやる事にした。
「オーガ家の財産は、全てキンタローさんに移ります。つまり、あなた達の主もキンタローさんになるのです。そういう態度は、今後困る事になりますよ」
「え? いや別に奴隷なんかいらないし」
助け舟は泥船だった。
その後、他の階も見て回りキンタローが不要だと思った物をジャンが買い取りしてもらう。
「やはり、小金貨3枚ってところですね。ところで、キンタローさん。ゴルザさんから話は行ってると思いますが、どうですか? この村でピッグさんの代わりに顔役になっていただけないですか? 今なら三倍の金貨1枚で買い取り、更に門の修理費も無しでいいですよ」
「なんで、ジャンまで……オレ、まだ子供だぞ」
ジャンも、一枚噛んでいるとは思ってはいたが、商売魂を曲げてまで押してくるとは、思っていなかった。
「そうですね。一言で言えば、行動力でしょうか? 妖精族の庇護、ラウザ工房のこと、今回のこと、全て考えた上で行動されている。村を警備する為には、必要な事です」
キンタローは、大きなため息を1つ吐くと、観念する。
「はあ~。魔人族の土地に行くまでだからな。ジャンや、おっちゃんにも勿論協力して貰うから」
「もちろんですよ」
「おう!」
こうして、キンタローはキタ村の顔役として、暫く滞在する事になった。
読んでくださり、ありがとうございます。
続きが、気になる方は上のブックマークをポチッと一回。一回ですよ。
面白かったら、下の評価をポチポチっと。
感想、レビューは上からでも、最新話の下からも送れるよ。




