44 ゴルザの嫁にプロポーズした強者がこの村にはいる
アンリエッタは、逆ハーレムも築けるってお話。
「はわ! ニナちゃんどうにかして欲しいんですけど……はわ!」
アンリエッタは、キンタローに訴えるが取り合わない。別に冷たくしている訳ではなく、ただ単に面白いからである。
隣でニナに、胸をつつかれながら、アンリエッタは二階の一室に案内した。
「ここを好きに使っていいです。そ、それと助けて……はわ」
少し涙目のアンリエッタが、可哀想になりニナを引き離す。
「むう……残念……キン……変わる?」
「た、助かりました~って、はわわ!」
「いや、しないから」
ニナの提案に、キンタローもアンリエッタも顔を赤くした。
「き、キンタローちゃんは……」
「え? キンタロー“ちゃん”?」
「はわ? 10歳ってお父さんから……アン、12だし」
「年上!? いや、なるほど……」
キンタローは、アンリエッタの胸をジッと見て納得する。
「もう! どうして、みんなそうなんですかぁ!? 男の人もお姉さんもアンより年下の子もお爺ちゃんやお婆ちゃんも、結婚申し込んでくるし! 挙げ句には、亡くなったアンのお母さんを口説いてた人までくるし! しかも胸しか見ないし!!」
アンリエッタが捲し立てると、思わず、たじろぐ。
「お、おう。なんかごめん。も、モテモテだな……」
「ぐすっ……お母さん程じゃありません。お母さんは、わかるんです、綺麗な人だったし……でも、アンは……」
アンリエッタは、既に泣き出しそうになっている。このままでは、ゴルザに、ただじゃ済まされないと思い、ちょっと話題を変えてみる。
「えーと、お母さんって、既におっちゃんと結婚してたんだよね? なのにモテモテだったんだ?」
「ぐすっ……はい、結婚も申し込まれてました……」
「強者だな、そいつ。おっちゃん、怒ったろ」
「お母さんと一緒に殴ってました……それに、お母さんの側には、いつもお父さんがいたから。でも……アンには、殴るなんて無理だし、お父さんみたいな人いないし……お父さんがいないと、1人で外も……ぐすっ」
また、泣きそうになり困り果てたキンタローは、なんとか慰めようとアンの頭を撫でてやる。
「よし、おっちゃんの代わりに、(外出の時は) オレが一緒に居てやる! なーに、どうせ決闘裁判の噂で誰も来ないさ」
「え……!?」
キンタローがアンリエッタの目元を拭ってやると、アンリエッタの頬が朱色に染まる。
「ホントにお父さんの代わりに (ずっと) 居てくれるの?」
「約束するよ、(出かける時) 守ってやる」
「ぐす……ホントに (ずっと) 守ってね? 約束だよ?」
アンリエッタは、今まで似たような事を言われてきている。
しかし、誰も彼も、視線は顔より下にある。
真剣な顔で、自分の目を真っ直ぐに見て言われたのは、初めての経験で嬉しかった。
しかし、お互いニュアンスの違いに全く気づかず、アンリエッタは、涙を拭き小動物みたいな愛らしい笑顔を、キンタローに向けた。
その時突然、キンタローは、どこからか刺すような視線を感じる。
ミカンや、クマゴローがいる方向ではなく、それは窓から……
「うわぁ!!」
思わず尻もちをつく。
窓の外には、般若が顔を覗かせていた。
「呼んだ?」と言ったような気がして、首を横に振ると「そう……」と言った気がして、消えてしまった。
「はわ! 大丈夫、キンタローちゃん?」
「だ、大丈夫、大丈夫。あ、それと“ちゃん”はいらないから。呼び捨てでいい」
「う、うん。アンもアンでいいよ。そ、それと……これから、よろしくね」
「? ああ、よろしく」
意味がよくわからず、適当に返事をすると、アンリエッタは顔を俯き、耳まで赤くなって、部屋を出ていった。
◇◇◇
荷物を部屋に置き、食堂に入ると、忙しく働くアンリエッタがいた。
大きな尻尾を揺らし、客に笑顔を振りまきながらパタパタと動くアンリエッタに、食堂の入口でキンタローは立ち止まる。
それを見つけたアンリエッタが、キンタローの手を引いて、カウンターの一角へと案内した。
「はわ。キンタローとニナちゃんは、ここ座って。それとクマゴローちゃん、ちょっと狭いけど、ごめんね?」
クマゴローは、首を傾げる。
『狭くて、ごめんねだってさ。クマゴローちゃん』
『早くご飯してくれたら、どうでもいい。って“ちゃん”はやめろ“ちゃん”は』
「キンタロー! ちょっと、来てくれ!」
ゴルザに呼ばれ厨房に入っていくと、困った顔を多分しているゴルザと、厨房内を飛び回るミカンがいつの間にかいた。
多分というのは、ゴルザの目が黒目しかなく、表情が読み取りにくかったからである。
「あれ~、木苺ないの~、どこなの~?」
「すまん、キンタロー。この妖精なんとかしてくれ」
キンタローは、やれやれとした表情で、ミカンを掴まえる。
「あ。キンタロー、この店木苺無いの~。品揃えなってないの~」
「ば、バカ。何言い出す」
キンタローが、慌ててミカンの口を塞ぐと、ゴルザは気にする事なく笑いだす。
「いやー、まさにその妖精の言う通りだ。本当ならあってもおかしくないんだが、まだ届いてないんだよ。シロサイのヤツ何してんだか」
「シロサイ?」
「ああ、ナギ村で野菜を売ってるサイ族のシロサイってヤツが居てな。いつもならそいつから仕入れているんだが」
キンタローは、知っている。
シロサイから木苺を仕入れる事は、今は無理だという事に。
ミカンの方を見ると、ミカンは、すぐに目線を反らす。
シロサイの店にあった木苺は、ほとんど既にミカンのお腹の中にあった。
◇◇◇
キンタロー達は、久々のご飯に満足して部屋に戻ったが、突然キンタローが膝から崩れ落ちた。
「木苺買ったの、オレだった…………」
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