43 フワフワの大きな尻尾と大きな胸、どちらが好きですか?
今回から第5章です。
ニナがつっつく。ってお話。
キンタロー達はジャンや村長と別れ、ゴルザに付いていき宿屋へと向かっていた。
村の人々は、ゴルザに挨拶しようと近づきたいが、後から付いてくるサイレントベアーにビクビクしている。そこに、1人の獣人の少女がやって来た。
「あ、あの。クマさん触ってもいい?」
キンタローは頷くと、クマゴローを伏せさせ触らしてやる。
「ふわぁ~あ」
少女は、お腹の辺りを触り、気持ちよさそうに頬ずりをしている。キンタローは、少女を持ち上げクマゴローの背に乗せてやると、遠巻きに見ていた子供達が一斉にクマゴローを取り囲んだ。
「わぁ、大きい~」「ねぇ、次ボクも乗せて」「私も私も」
流石に、クマゴローもそろそろ限界に来ているが、キンタローがチラチラと自分が刺してしまった傷を見せつけてくるので、我慢するしかなかった。
◇◇◇
「くく……人気者だったな、クマゴロー」
キンタローは、笑いを堪えながらそう言うと、クマゴローは、プイッと他所を向く。
「ほらほら、もうすぐだぞ」
ゴルザが指を差した先には、宿屋だけあって大きな建物がある。
《しまりす亭》
宿屋の看板には、そう書いてある。
すると、1階の窓が開き、酔っぱらいの獣人が顔を出す。
「ゴルザの親父、遅いぞ。アンちゃんが──って、うわぁあ!!」
酔っぱらいが驚くとキンタローは、またクマゴローに驚いたのかとウンザリする。
「ピッグを、殺した小僧じゃねぇか!」
「オレかよ!?」
酔っぱらいは、観戦していたらしく、一番驚いたのはキンタローだった。
◇◇◇
「悪いがクマゴローは入るのちょっと待ってくれ。客が驚くと面倒だしな。おーい、アンリエッタ。今帰ったぞ」
ゴルザとキンタローが宿に入ると、一階の食堂に顔を出す。食堂のキッチンから、パタパタと足音が聞こえてきた。
「はわわわ。お父さん、おかえりー」
アンリエッタと呼ばれた少女は、キンタローより背の低い女の子。
茶色の髪が肩まで伸び、頭には可愛らしく耳がちょこんと付いている。黒い瞳に、丸っこい目。ふんわりしたスカートに、白いエプロンをしている。
そして、他の獣人には中々無い、茶色の毛がフワフワした、まるで栗鼠のような大きな尻尾がある。
しかし、キンタローが気になっている所は別にあった。
「栗鼠の獣人?」
「ああ、俺が栗鼠と牛の獣人だからな」
(おっちゃんの、黒い瞳しか無い目は栗鼠だからか。この子似なくて良かったな)
キンタローが、そんな事を考えていると、アンリエッタが側に寄ってくる。
「はわ? お父さん、この子は?」
「ああ、客だ。部屋を用意してやってくれ。一番大きい部屋な」
「え? でも、この子1人──はわわわ!」
開きっぱなしの扉の向こうにいるクマゴローを見つけたアンリエッタは、その大きな尻尾を胸元で抱きしめ怯えている。
キンタローは、ますます気になりだす。
尻尾を抱きしめる事によって、ますます主張する大きな胸を。
その背丈とは、不釣り合いとも思える双丘を。
「キンタロー、ナニをミテルノカナ?」
ゴルザの瞳から光が消え真っ黒になって、迫ってくる。
まるで、ホラーの一種だ。
思わず無言で、首を振って否定するしかなかった。
◇◇◇
ゴルザがアンリエッタに、事の経緯を説明すると、ホッとしたようで尻尾を放す。
「はわ。驚いて、ごめんなさい」
アンリエッタが頭を下げると、揺れた。
今キンタローは見ていない。ゴルザにヘッドロックをかけられ、それどころじゃない。しかし、それに反応したのはニナだ。
クマゴローから、ずり落ちると頭を下げているアンリエッタの前に行き、両指で胸を──つついた。
「「「「!!!!!!」」」」
「はわわわ!」
アンリエッタも驚いたが、一番ざわめき出したのは、食堂の客達だった。
「な、なんて、うらやまけしからんことを!」
猿顔の客が立ち上がったのを、きっかけに騒ぎ出す。
「くそぉ、あの子の指になりてぇ!」
鹿顔の獣人が。
「ば、バカ野郎、それでもアンちゃん親衛隊か!?」
馬顔の獣人が。
「ふっふーん。私は触ったことあるもーん」
犬顔の女性が。
「め、冥土の土産に……」
羊顔のお爺さんが次々、好き勝手言っていた。
ニナが、またプニプニとつつく。
客達が、再び騒ぎ出そうとした時、ゴルザはキンタローをその場に落とすと首だけを客に向けた。
「ナンカイッタカ?」
「「「「何でもありません、すいませんでした」」」」
その場にいた客が、1列に並ぶと綺麗に礼をする。腰が曲がっていたお爺さんまでも、ピンと背筋が伸びていた。
「キン……ニナ……これ欲しい」
「……もいだらいいの」
「揉む……?」
「はわわ。揉まないで!」
ニナが真剣な顔で聞くと、ミカンがジト目で答え、アンリエッタが拒否する。キンタローの後ろでは、ゴルザが客達に説教している。
すっかり、置いてきぼりのキンタローとクマゴローだった。
『腹減ったな、キンタロー』
「そうだな。腹減ったな、クマゴロー」
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