41 決闘裁判 最終弁論
キンタロー、クマゴローに刺されてる、ってお話。
『オレが……オレが……キンタローを……』
キンタローから離れたクマゴローは、ひどく落ち込み、先ほどまでの暴れっぷりから、打って変わり借りてきた猫のようになっていた。
「あ~、いててっ。──って!! 痛ーーっ! いたい! いたい!」
キンタローがクマゴローの爪が刺さった箇所をさすっていると、その場所に何かが当たりグリグリと傷を拡げてくる。
「う~、良かったの~~、キンタロー見つかったの~~」
ミカンが、キンタローの元に飛び付き顔を押し当て泣いていた。
そうか、心配かけたんだな──などとはキンタローは考えていない。
「痛いわぁーーーっ!!」
「ひやぁーーなのーー」
ゴン!!
ミカンの頭を掴み強引に剥がすと、クマゴローに向かって投げつけた。
「まあまあ、ミカンさんも心配してたんですよ」
「うわっ! ジャン、お前いたの!? 気付かなかった」
「またまた、冗談ばっかり。ほら、こんなに派手な服を着ているのですよ。気付かない筈ないじゃないですか」
(こいつの派手な服って、もしかして少しでも目立つ為なのか?)
相も変わらず、赤やら青やら派手な色が散りばめられて、目がチカチカする服だ。
キンタローの予想は、当たっていた。
クマゴローの探知範囲を掻い潜るジャンの能力。
それは、存在感の無さによるものであった。
◇◇◇
プギーは、困惑していた。
あの少年は、自分の父親を殺した。
しかし、さっきは自分の母親を助けてくれた。
「どうして…… ブヒ」
「プギー、キミはオレの娘と同じ年だ。もし、自分の娘が天涯孤独になったら親としては辛い。ピッグの事は残念だが、決闘で亡くなったと誇りに思えばいい。今はまだ分からないだろうがな。ただ、あの少年がキミの母親を助けてくれた事は忘れてはならない」
ゴルザが肩を抱き、言い聞かすようにプギーに話しかける。プギーもわかっている。父親は、正当な決闘の上、亡くなった。しかし、母親のしたことはそれを無下にする行為だ。
もし、母親がキンタローを殺してしまったら決闘のルールに違反により、衛兵に捕まるだろう。
プギーも無事じゃすまない、よくて村を追放される。
それはプギーが天涯孤独になることを意味している。
プギーは、ゴルザに一つ頭を下げて母親の元に駆け寄っていった。
◇◇◇
「さてと……」
キンタローは一つ伸びをして、ニナのいる牢に近づいていく。
ニナは、カボチャパンツと白いお腹を丸出しで、大の字になって眠っていた。
(えー? あの歓声やクマゴローの怒声の中、よく眠れるなぁ)
キンタローは、牢を剣でこじ開け服を整えてやると、抱き抱えて牢を出る。
抱き抱えたまま、アレキサンダー村長の元にいく。
「ちょっといいですか?」
キンタローのこの後の発言に、観衆もプギーやゴルザ、ジャンまでも驚く。
キンタローは、手招きしてゴルザを呼びつけると、プギーとプギーの母親を指差した。
「オレは、オーガ一家に対して、損害賠償を請求する!!」
◇◇◇
「そ、損害賠償……だと? 理由は何だ?」
ゴルザの質問にキンタローは、ニヤリと笑い答えた。
「簡単だよ。オレは奴隷に無理矢理されたが、決闘裁判で奴隷じゃない事が証明された。だけど、オーガ一家はオレを牢に入れ、奴隷のように扱った」
「だから、賠償を請求すると?」
「精神的に傷ついたからね。そらもう、ツラカッタツラカッタ」
平然と牢の中で歌を歌っていた人の言う台詞ではない。
誰が見ても、白々しかった。
「……で、請求額は?」
「せ、請求額?」
キンタローは、この世界のお金の仕組みをちょっと前にシロサイに教わったばかりだ。
金貨が高いのはわかったが、価値がわからなかった。
「え、えーと。金貨で200枚?」
「「「はあああぁぁぁぁぁ!?」」」
「え? え?」
キンタローの請求額にアレキサンダーもゴルザも遠くで聞いていたジャンも驚き、ジャンは、慌ててキンタローに近づき、忠告する。
「き、キンタローさん。金貨200は流石にやり過ぎです。私でも、払えるかどうか……」
「そ、そう? じゃあ金貨100枚で」
いきなり、半分になる。
「まだ、高いです」
「ええーっ、だって変態ぶ……ピッグのヤツ、自分で大富豪とか言ってたぞ! じゃあ、金貨50! もうこれ以上は、まけてやらない」
4分の1になった。
すっかり、呆れているアレキサンダーとゴルザとジャンは、お互い顔を見合わせると、ジャンが一つ頷いた。
「わかった。金貨50だな、いいですか? 村長」
「う、うむ……ちょっと可哀想じゃが」
「では。オーガ一家は、キンタローに対する損害賠償を金貨50支払うこととする。なお、異議があるなら決闘裁判になるが、いいか?」
「い、いいわけないでしょう! そんな、馬鹿げた金額払えるわけ──」
「では、決闘裁判になるが?」
プギーの母親は、黙り込んでしまった。
もう取り巻きのゴロツキもいない。かといって二人じゃキンタローには勝てない。払うしかなかった。
「ちょっとは、いい奴だと思ったのに…… ブヒ」
プギーが凄い目で睨むが、キンタローはヘラヘラと笑っている。
ゴルザは、自分の説得は一体何だったんだと頭を抱え込んでしまった。
「キンタローさん、一つ教えておきますが金貨は1枚あれば富豪、複数枚持っていれば大富豪と呼ばれます。」
「へ?」
キンタローは、ここに来てリベルが渡した金貨の本当の意味を初めて知る。
世間一般で言うところの、結納金だった。
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