37 ジャン=クラウドの出番です。
あらすじ>キンタロー二話連続、出番無しって話。
話は少し遡り、クマゴローがナギ村へ乱入する少し前。
一台の馬車が、ナギ村の東側の入口に到着した。
「さあ、ナギ村を抜けたら、残り半分ほどです。リリ」
「わかりましただ、ジャン様」
リリと呼ばれた少女が、手綱を締めて門の前で止まる。
リリは、毛色はサバトラで、メイドキャップを頭に被って、ジャンとは違い猫の顔をしている。
リリの隣には、糸目の山猫の商人ジャンが座っていた。
門にはキリンの門番しかおらず、その門番もジャン達の馬車が止まると同時に村人に声をかけられ村の中へと入っていった。
「ジャン様、門を開けっ放じで行っぢまっただ」
「何かあったようですね。中へ入ってみましょう」
「んだ」
リリは、手綱を操り馬車を進ませ村に入ると、村人が建物に入ったり、こっちへ逃げてくるのが見えた。
ジャンは、逃げる村人を掴まえ事情を聞く。
「さ、サイレントベアーが村に侵入して、暴れてるんだよ。あんたも早く逃げな!」
「サイレントベアーが?」
ジャンは、そのサイレントベアーに心当たりがある。
タイミング的に見ても、可能性は高かった。
「ありがとうございます。呼び止めてすいません。リリ!サイレントベアーの所に行きますよ」
「ええ!? サイレントベアーですよ、ジャン様! どうどう頭おかしくなっただ?」
「いいから、行きなさい!」
ジャンに怒られ、リリはしぶしぶ馬車を進ませる。
リリは、リリで頭がおかしいとは、随分だが……
逃げる村人をかき分けるように、馬車を進ませると、衛兵に囲まれたサイレントベアーが見える。
そして、ジャンにはサイレントベアーの周りを飛び回る物体も、見えた。
「リリ、馬車を端に停めて」
「ジャン様!」
「リリは、そこに居てください」
馬車が端に寄ると、ジャンは飛び降りサイレントベアーに向かって走り出した。
「すいません!衛兵、どいてください!!」
「あ、ジャンなの~」
ミカンは、ジャンを見つけると飛んでくる。
「ミカンさん! まずはクマゴローさんを落ち着かせるのが先です。話を聞きますから落ち着くように伝えて下さい! それと、衛兵さん達は、刺激しないように離れてください! このサイレントベアーは、私の知り合いです。危害を加えません。それは、このジャン=クラウドが保証します」
「ジャン=クラウドって、あのジャン=クラウド商会の……?」
衛兵達は、ざわめきながらクマゴローから距離を取る。
この衛兵達は、ただの有志で集まったナギ村の住人である。逃げ出したいが、そうなると村に住めなくなる。なので、ジャンの言葉は渡りに船だった。
遠巻きに囲む、衛兵の中心にはクマゴロー、ミカン、ジャン、そして、シロサイがいる。
クマゴローも、落ち着きを取り戻すとジャンはミカンから事情を聞いた。
「え……と、キンタローさんが居なくなって、クマゴローさんを思い出して、ミカンさんは寝てた、と。すいませんサッパリわかりません」
「う~ん。あ、そうなの~、あのおじさんが知ってるの~」
突然、指名されて驚くシロサイ。
「すいません。説明お願いできますか?」
「お、おう。実は……」
◇◇◇
ジャンは、シロサイから詳しく聞くと顎に手をあて、話をまとめた。
「つまり、ミカンさんが寝てる間に、キンタローさんは他の店を回っていた筈が、帰って来ないので探したが見つからず、クマゴローさんに話すと我を忘れて村に入った、と。」
シロサイは、頷く。
「ふむ、他に何か見聞きしませんでしたか? キンタローさんが居なくなる前でも構いません」
「う~ん、特には……あ、そういや坊主と奴隷一行を見たな」
「奴隷……ですか? 他に変わった事は?」
「変わった事か……あぁ、そういや、その一行に魔人族の子供がいたな」
「魔人族ですか?」
ジャンは、再び顎に手をあて、考え出す。
「わかりました、ありがとうございます。この度は、私の知人がお世話になったようで。お礼は必ずあとでさせて頂きます」
「お、おう。いいってことよ、嬢ちゃんも元気でな」
「おじさん、ありがとうなの~」
ミカンは、シロサイのほっぺにキスを軽くすると、シロサイはスキップしながら帰っていった。
「では、行きましょうか」
ジャンは、そう言うとクマゴローとミカンを連れてその場を離れていった。
◇◇◇
ジャン達は、ある商会の前に来ていた。
その商会の名前は《オンドリー商会》。
「ここにキンタローがいるの~?」
それを聞いてクマゴローの目付きが鋭くなる。
「いえいえ、まだわかりません。ですが、ここは私に任せて貰えませんか?」
ミカンから説明を受けクマゴローも納得すると、ジャンは1人、オンドリー商会へ入っていく。
「おや、ジャンの旦那じゃないか、珍しいね」
ジャンを迎えるオンドリー商会の店主。
「お久しぶりです、女将。いえいえ、実はですね。魔人族の子供を奴隷にした人がいるらしく、ちょっと女将の所を拝見させて貰おうと思いまして。なにせ、魔人族となると問題になりますからね」
「あ、あぁ。そりゃ不味いね。でも、ウチじゃないよ。良かったら見ていっておくれ」
店主の案内で、地下に降り奴隷達を見るとドワーフか、獣人ばかりだった。
(やはり、もう売れましたか……となると、売却先は、あの人ですね)
「どうやら、別の店みたいですね。失礼しました」
「いえいえ、良かったら、またいらしてください」
ジャンは、オンドリー商会から出ると、すぐにクマゴロー達と合流する。
「やはり、ここみたいですね。ですが、既に売れたみたいです」
『なにーー!?』
クマゴローは、ミカンからジャンの話を聞くと頭に血が昇る。
「落ち着いてください。売却先は検討がついてます。さ、急ぎましょう」
ジャン達は、一旦馬車へと戻った。
「リリ! お待たせしました。急いで出発してください。リリ!? 聞いてますか?」
ジャンの後ろから付いてくる、サイレントベアーに固まってしまうリリだった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
評価は、最新話の下の方にあります。良ければ是非。




