34 オンドリですか?Yes.メンドリです
「キンタロー、この村の人の顔変わってるの~」
「そうだな、半分くらいがそうだな」
「ねぇ、あれは、なんなの~?」
ミカンの指差す先には、真っ赤な顔したタコの獣人が。
「すでに調理済み!?」
キンタローと、ミカンはシロサイの店主の店先で木苺を食べている。
リュック自体はクマゴローに預けてるので、山盛りの木苺を持って歩けば、こぼれる。なので、ある程度食てから、また他の店をまわるつもりでいた。
「ん? シロサイのおじさん、あれは何?」
キンタローの目の前を、ボロボロの服を着て手枷をされている、一行を見つける。
「ああ、あれは奴隷だな」
「奴隷制度があるのか?」
「ある程度は黙認してるのさ。何せ、奴隷を扱うのは商人だ。下手に取り締まると物価が高騰するからな、労働力が足りないから仕入れが少なくなるとか適当に言ってな」
(まさか、アイツも……)
キンタローの脳裏に浮かぶは、あの糸目の商人ジャンである。
「おじさん、ジャン=クラウド商会って知ってる? そこでも奴隷扱ってるの?」
「いや、扱ってないな。ジャン=クラウド商会は、キタ村で1、2を争う位だからな」
「ふ~ん。あんなに見た目、胡散臭いのに」
散々世話になっておきながら、サラッと、ひどい事を言い放つキンタロー。
奴隷の一行を眺めてると、その中に1人、角がある幼い少女がいる。
「おじさん、あれは?」
キンタローが、少女を指差す。
「魔人族だな。まだ、あんなに小さいのに。もしかしたら拐われて、売られたのか?」
シロサイとキンタローは悲痛な顔をし、少女を見てると、その少女は一つ、大きな欠伸をする。
「随分余裕そうだな」
「そうだね、おじさん。オレらの緊張感返して欲しいよね」
二人は、少し呆れて視線を奴隷一行から外した。
◇◇◇
「あれ? どうして、こうなった?」
キンタローは、今手枷足枷をされて、ひんやりと感じる首輪をされている。
そして、目の前には木の冊、というより木で出来た牢に閉じ込められていた。
◇◇◇
1時間程前、キンタローはシロサイの店先で奴隷一行を見た後、ミカンに視線をやると寝転んでいた。
「うーん、うーん、もうムリなの~」
ミカンの腹はぽっこり膨れ、顔は木苺の汁まみれだ。
ザルに山盛りであった木苺は、既に一つも残っていない。
「食べ過ぎ……って、明らかにおかしいよね! 木苺の体積、ミカンより大きかったよね? どうやって腹に入った?」
「うーん、よくわかんないの~。動けないの~」
寝転びながら、羽をパタパタ動かすが全く浮かない。
とりあえず、キンタローはシロサイの店主から布を一枚貰って、ミカンの顔を乱暴に拭く。
「ふぐっ、もうちょっと丁寧にお願いなの~」
「シロサイのおじさん、ミカン暫く預かっててくれるかな? ちょっと1人でこの辺り見てまわるから」
シロサイの店主は、意外と快く引き受けてくれた。
キンタローと入れ違いで、獣人の子供が店に入り会話が聞こえる。
「おじさん、この人形ください」
「うーん、ミカンは人形じゃなくてミカンなの~」
「わ! しゃべったぁ」
(くく……ミカンの値段、食べた木苺、銅貨4枚分とミカン本体合わせて、銅貨5枚かな)
などと、下らない事を考えながら、キンタローはクマゴローのお土産に、主に肉を探していた。
その時、脇道から手が出てきて、口を塞がれる。
咄嗟に剣を抜こうとしたが、急激に身体に痺れが走る。
(……感電!? バカな!)
薄れゆく意識の中で、そんなことを考えたが、すぐに気を失った。
◇◇◇
(あの時か。あれは、スタンガン? いや、この世界にあるのか? 電気も見たこと無いのに……)
考え事をしているキンタローを、下からジッと覗き込んでいる、魔人族の少女に気づく。
少女の瞳は、薄い空色をしており、肩まで伸びるその髪は、何よりも白い。
そして、白い髪を突き抜ける10cmほどの2本の角があった。
「えーっと、何かな?」
「あ────っぶえっくしょん!!」
「おっさんか!」
突然のクシャミで、唾まみれになってしまう。
「ったく、風邪か? おーい! 誰かいないかぁ? 毛布でも何でもいいから持って来てくれー!」
キンタローが牢の外へ向けて叫ぶと、ドタドタと誰かがやって来た。
「誰だい! ピーチク、パーチク、喧しいのは?」
キンタロー達の牢の前に現れたのは、立派なトサカ、そして、これまた立派な肉垂のある、ニワトリの獣人。
「いや! 鳥のあんたにピーチクパーチクとか言われたくねぇ!」
「あたしゃ、鳥じゃない! ニワトリだ!」
「見たらわかるわぁぁ!!」
獣人族は、大まかに2つに分かれる。
一つは、ジャンの耳や、キリンの門番の首など、種族の特徴が身体に現れる者。
もう一つはシロサイの店主や、このニワトリみたいに、人の身体にその種族寄りな顔になる者。
キンタローは、ニワトリの獣人の体を、急にマジマジと見る。
「な、なんだい。そんな、ジロジロ見て」
「……あんた、メスか?」
「メスって言うな! 女って言え!」
ニワトリの獣人の頭には立派なトサカ、そして顎にある立派な肉垂……
「立派な、オンドリじゃねえか!」
「違うって言ってんだろ、あたしゃ立派なメン──じゃない女だ!」
「今、メンドリって言いかけたよね!?」
はぁ……はぁ……と息を切らす、二人の攻防。
その横では、ケラケラと笑い転げている魔人族の少女がいた。
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