表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不運な少年は転生したら異世界初の人間でした  作者: 怪ジーン
第4章 ぶたとブタと少女
38/121

33 キタを目指して西へ

※前回の32話で金貨と銀貨のくだりを加筆しました。


第4章スタートです。


この章から、様々な獣人が出ます。




「ふんっ!」


 キンタローの目の前にある枝が落ちる。


『おぉ~』

「おぉ~なの~」

「凄い切れ味だな」


 キンタロー達は、ドワンゴ村を出て3日ほど経った早朝。

 西の果てにあるキタ村を目指しながら、度々森に入り剣の腕を磨いている。

 そして、今も剣の切れ味を試している最中である。


 キンタローに、剣の腕はほとんど無い。

 前生で、中学の授業で剣道をした程度だ。

 それが、わかっているからこそ質の高い武器が必要不可欠だった。


 キンタローの持っている剣は、もちろんリベルとミネア、そしてフラムが想いを全て込めた剣。

 その剣は、刃渡りが50cmほどの直刀で、斬る事を重視されて作られている。

 刃は、片方にしか無く、剣というより刀に近かった。


「さ、そろそろ出発するか」


 キンタローは、ミカンを懐に入れ街道に戻っていく。


 キタ村に向かうには、フラム達と出会った丁字路を西に街道を進めば着く。

 キタ村に向かう途中には、ナギという名前の宿場町のような役割を持つ村がある。

 キンタロー達は、今日中にもナギ村には着きたかった。


 早く着きたい理由、それは暖かい食事。

 特に肌寒い訳ではない。

 しかし、一度暖かい食事をしてしまうと、どうしても暖かい方が良くなってくる。

 ドワンゴ村を出てからは、そんな話ばっかりだ。


「スープ、焼き肉、焼きたてパン」

『焼いた肉、焼いた肉、焼いた肉』

「木苺、木苺、木苺、なの~」

「木苺は、暖かくねぇよ!」




◇◇◇

 昼を少しまわった頃、ナギ村が見えてくる。


「キンタロー、見えたの~」

「よし、行け。クマゴロー」

『まかせろ』


(あれ?何か忘れてる気が……)


 クマゴローが村に向かって、走り出す。


「止まれ! 止まれ!」


 ドワンゴ村と違い、しっかりとした木で出来た門の前に着くと門番2人に止められる。


「な、な、なんで、サイレントベアーなんかに乗ってる?」

「あ、これか!」


 クマゴローが、魔獣であることをすっかり忘れていた。


 キンタローは、一旦クマゴローから降り、門番の1人に近寄っていく。

 門番はよく見ると──どこからどう見てもキリンの獣人だった。

 首が異様に長く、まさしく門番が天職とも言える。


「門番さん。あのサイレントベアーは、僕の友達なんです。友達と離ればなれは嫌なんです。う……うぅ……お願いします! 村に入れてください!」

「ダメだ」

「チッ!首を長くして覚えてろ!」


 子供全開涙目上目遣いでアピールしたが、すぐ断られると、舌打ちして元に戻る。


(あの子供、惜しかったな……女の子だったらアイツも通したのに。まぁ、俺が通さないけど)


 ロリコンの門番に、哀れな視線を向けるタヌキ顔の門番だった。



「あー、キミキミ」


 タヌキ顔の門番に呼び止められ、子供モードで振り向くキンタロー。


「あー、それはもういいから。それより、魔獣は入れられないけど、キミだけなら大丈夫だよ。それ以外なら村を迂回してもらうしかないけど」


 タヌキの門番にそう言われて、キンタローは悩んだ。


(うーん、このまま迂回してもいいけど、村も見たいなぁ)


『キンタロー、中に入ったらいいぞ。オレは迂回する。その代わり、肉を……出来れば焼いてあるやつを』

『わかったよ』


 クマゴローも、すっかり肉は焼く派だ。


「タヌキのおじさん」

「た、タヌキのおじさん?俺は、まだ、にじゅ──」

「あー、それはもういいから。それより、クマゴローを出口まで案内お願いね。提案したのおじさんだろ」

「え!?」


 思わぬ、キンタローの言葉に後悔する門番だった。


 クマゴローに後押しされ、キンタローは、ミカンと二人で中に入る。



 その後、クマゴローはキンタローから離れた事を後悔する事になる。




◇◇◇

 キンタローとミカンは、ナギ村を見学していた。

 門を抜け、真ん中に大通りがある。その道を挟む様に色々な店が立ち並んでいる。

 宿場町としての役割もしているためなのか、人通りもかなり多い。


「おぉ~、人多いの~」

「獣人がほとんどだけど、ドワーフもチラホラいるな」


 キンタローは、赤色の髪を見つけては目で追いかける。


「む~~、キンタロー、フラムのこと考えてるの~」

「いたっ! 頬を引っ張るな。考えてない、考えてない」


 ミカンは、むくれながらキンタローの頬をつねる。


「ほんとなの~? ミカンといるときはミカンの事をか──」

「ん?」


 ミカンは、途中まで言いかけてどっかに飛んでいく。


「お、おい。勝手に行くと迷子に、迷子に……」


 ミカンの飛んでいった店先には、真っ赤な木苺がザルみたいな入れ物に山盛りで置かれている。


「喝!」

「いたいの!」


 ミカンは、木苺を見てヨダレを垂らしながらキンタローからチョップを食らう。


「お、おい。商品にヨダレ飛ばさないでくれよ」


 お店の店主に注意されてしまい、二人で謝る。


「すいません、サイのおじさん」

「む。違うぞ、坊主! 俺はシロサイだ!」

「わっかるかぁぁ!」


 逆にキレられる、シロサイの店主。


「お、おお。そうか、なんかすまん」


 いつの間にか立場があべこべになっていた。


 さすがに、ちょっとやり過ぎたかと思い、キンタローは銀貨1枚分の木苺を買ってあげる事にする。

 サイの店主は、ザルごと渡しくる上に、銅貨を95枚お釣りを返した。

 キンタローは、まだこの世界のお金の価値がわかっていないので、店主に聞いてみる。


「はぁ?お金がよくわからないって?うーん、坊主、少数種族みたいだしお金無かったのか?」

「そうなんだ。だから、銀貨の価値もあんまりわからないんだよ。教えてくれないか」


 キンタローは、話を合わせる。


「まぁ、買い物してくれたし、それくらいなら。まず一番小さいのが銅貨だ。銅貨が100枚で銀貨1枚と同じだ。銀貨が100枚だと──」

「金貨1枚か」

「え?いや、違う違う。小金貨1枚だよ。小金貨10枚で金貨1枚だ」


 キンタローは、ふと思う。そういえば、リベルから餞別で金貨を1枚貰ってる。


「おじさん、これ小金貨?」


 店主は目を丸くして驚くと慌てて、キンタローの手を隠す。


「ば、バカ! こんな往来で出すなよ。それは、金貨だよ」


 店主の話を聞いて、キンタローは慌ててしまい小声で呟く。


「……ラウザ工房、恐るべし」


  

いつも読んで頂きありがとうございます。


履歴閲覧よりもブックマークヽ(=゜ω゜)人(゜ω゜=)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ