32 別れと旅立ちとハンスの死?
ハンスさん、ちょっと出番多いのでカットしました。本当はハンスさんをカットしたいのですけど………
それと、クマゴローさん、お嬢様、生身の刃物を人に押し付けたり、刃物を持っている人を叩くのは危険ですよ。
反省してくださいね。
アマンダ
金貨と銀貨のくだりを追加しました。
「あれ? キンタローさん、まだ10歳ですよね?結婚出来ないですよ」
ハンスが、そう言うとフラムが驚く。
「えっ! 結婚!? な、何言ってんのよ、ハンス。私はただ、剣を……」
「いや、お嬢がそう言ったじゃないですか?結婚してくださいって」
ハンスに言われ、フラムは顔を自分の髪の色と同じくらいに赤く染める。
「い、い、い、いやああぁぁぁぁぁ!!!」
キンタローに持っていた剣を押し付け、フラムは家と凄い速さで逃げていく。
フラムは、半分目的を果たした。
剣を受け取って貰うという目的を。
◇◇◇
フラムはキンタローのことが好きである。
そして、キンタローの家族に対する想いも知っていたので、いずれは──とも考えた。
しかし、エルフの事もある、事実自分も襲われキンタローに助けられた。
フラムは、ここ数日考えて考え抜いた結果、今はキンタローを引き止めるのをやめ、自分の作った剣を渡し見送る決意をした、したのだが深呼吸をした途端に頭がキンタローへの想いで一杯になり、プロポーズを口走ってしまった。
◇◇◇
「いや、やめて、蹴らないで! ってちょっと、待って! それは不味い不味いっ──ぐえっ!」
ハンスは、ぼこぼこに蹴られている。
アマンダとアレンはもちろん、リベルやミネアにまで。
最後にトドメと言わんばかりに、ミネアに踏まれた、3m近い巨人に。
一方、キンタローは剣を抱え立ったまま、動かない。
クマゴローがそっと近づく。
『うわ! キンタロー、真っ赤じゃねえか! 大丈夫か!!』
キンタローの反応がないので、頬をおもいっきり叩いた。
「いってぇ、いきなり何するんだ!? オレは、ハンスじゃねえぞ!」
ハンスなら、いきなり叩いても良いらしい。
ハンスもいい迷惑だった。
『いや、キンタローが真っ赤で動かなくなったから、叩けば戻るかなって?』
『オレは古い電化製品か! ったく、だいたい何で真っ赤に──』
そこまで言って、再びフラムに言われた事を思いだし、耳まで赤くなる。
『あ、あーいや、クマゴローごめん。何か助かった』
キンタローは、そのまま近くにあった丸イスに座り持っていた剣を見る。
「はぁ~、どうするかなー」
キンタローは、大きなため息をついた。
◇
結局フラムはこの日部屋から出てこなかった。
キンタローは一睡も出来ず、次の日の早朝、部屋を一人出る。
カンッ カンッ カンッ
キンタローは音に導かれる様に工房へと向かう。
扉を静かに少しだけ開けて中を見ると、1人何かを作るフラムがいた。
カンッ カンッ カンッ
しばらく見ていたが、扉をゆっくり閉めて扉横の壁にもたれて、目を閉じる。
カンッ カンッ カンッ
心地よいリズム。
キンタローは、この音が好きになっていた。
◇◇◇
「き、キンタロー。居たの?」
何かを完成させ、工房から出てきたフラムはキンタローに気付き驚く。
キンタローは、壁から背を離しフラムに近づくと優しくフラムを抱きしめる。
「ふぇっ!? キンタロー!?」
「フラム、ありがとう。必ず戻って来るから……」
「!!──わかったわ絶対よ。約束して」
「……ああ、約束だ」
二人は、お互いに抱き合う力を込める。
会いに来るではなく、戻って来る──それは、自分が帰る場所だということ。
「ふわぁ~。って、二人とも何やってるんですか? こんなとこで!?」
ハンスが工房の前で抱き合う二人を見つけて、驚く。
「「は、ハンス~~~~っ!!」」
二人はそのままの状態で、首をギリッギリッギリッとハンスに向ける。
特にフラムの後ろには、般若すら見える。
「「ひいっ!」」
「ちょ、ちょっと──待」
「「いっぺん、死んでこい(なさい)!!」」
バチーーーン! ドカッ!!
金槌を簡単に持ち上げるフラムのビンタと、《足腰強化》でずっと鍛えてきたキンタローの蹴りで、ハンスは容易に吹っ飛んでいく。
息、ピッタリである。
「さようならハンス。ありがとうハンス。君のマヌケ面はすぐ忘れよう」
キンタローは敬礼すると、ガクッとハンスは気を失った。
フラムの般若を見て驚いたのは、ハンスだけではない。
しかし、フラムがその事に気付くことはなかった。
◇
その日の昼下がり、キンタローは荷物をまとめてると、リベルが、お礼だと言い金貨1枚と銀貨15枚を餞別に渡す。
それをリュックに入れ、旅立つ準備を終えると、ドワンゴ村の入り口移動する。
見送りには、リベルとミネア、アマンダとアレン、ハンスと村長が来ている。
しかし、そこにフラムの姿は無かった。
今フラムは、キンタローから剣を借り工房にいる。
しばらく、待っているとフラムが走って来た。
「はぁ……はぁ……待たせてごめんなさい……はい、キンタロー」
息を整えながら、キンタローに剣を手渡す。
その剣を見ると、無地だった革の鞘に装飾の金具が付いている。
そして、同じく何にもなかった柄にも、装飾が細かく施されていた。
キンタローは、嬉しそうな顔をしてクルッと見ていた柄の裏側を見ると、無表情になり元に戻す。
「フラム、何これ?」
フラムがニコッと笑顔を見せる。
「いや、だから……」
フラムは笑顔を崩さない。
しかも後ろに般若が「呼んだ?」と言わんばかりに顔が出てる───気がした。
(呼んでない、呼んでない!)
「あ、ありがとう、フラム。大切にする」
キンタローは、再び柄をひっくり返す。
そこには、でかでかと、“大好き”と彫られていた。
◇
キンタローは剣をベルトで固定すると、クマゴローに乗る。
ミカンも、クマゴローの頭から服の中へと移動する。
「じゃあ、また──」
「キンタロー!!」
キンタローの声をフラムが遮った。そして………
「いってらっしゃい」
フラムの笑顔とその言葉にキンタローは、ちょっと照れる。そして……
「……いってきます!」
そう返事をして、ドワンゴ村を後にした。
◇
キンタロー達がドワンゴ村を後にして村が見えなくなると、ミカンがキンタローの服を引っ張る。
『キンタロー、キンタロー、フラムの後ろにいた、怖い顔のひと誰なの~?』
クマゴローは、ミカンの言葉に首を傾げるがキンタローは違った。
『そうか、ミカンも見えたんだな………』
キンタローは、遠くを見ながらそう呟いた。
いつも読んでくださりありがとうございます
閑話とオマケを挟んで次は、第4章 豚と豚と少女 になります。
ブックマーク、黄色のままではありませんか?




